M6 Panda
家の話 いしいしんじの町家
幻想的な味わいの作品を発表する作家、
いしいしんじ。
数年前から、京都の
古い町家に住んでいる。
彼にとって家は仕事場。
書いているとふとこう思うという。
家というよりも、「不思議なトンネル」
の中いるような感覚になる。
家の中でも、遠くにいける。
それは、町家の魔法かもしれない。
M6 Panda
家の話 いしいしんじの町家
幻想的な味わいの作品を発表する作家、
いしいしんじ。
数年前から、京都の
古い町家に住んでいる。
彼にとって家は仕事場。
書いているとふとこう思うという。
家というよりも、「不思議なトンネル」
の中いるような感覚になる。
家の中でも、遠くにいける。
それは、町家の魔法かもしれない。
Kemon01
家の話 ドリス・デュークのシャングリラ
ドリス・デューク。
1925年、12歳のときに父を亡くし、
膨大な遺産で、世界一裕福な女の子といわれた。
彼女の伝記にこんな一節がある。
日記を書くように、ドリスは家を建てた。
世界中に6つの家をたて、
自家用ジェットで世界中を飛び回った。
そんな彼女が一番手をかけた家がハワイにある。
イスラム美術を集め、50年かけて内装をしあげていった。
カハラ地区にある、その邸宅はシャングリラと呼ばれる。
2度の離婚に、子どもの死。
最後まで、家族をもたなかったドリスにとって、
家とは、生活の場ではなく、
夢を見る場所だったのかもしれない。
家のはなし 坂口恭平の家
図面も引けなければ、ろくな家を建てたこともない。
建築家、坂口恭平。
早稲田大学理工学部で建築家を志し、勉強に励む一方で
土地を買って所有し、莫大な金額を払って家を建てる
という日本の建築システムに疑問を感じていた。
そんな折、隅田川の河川敷で
鈴木さんという路上生活者との出会いを果たす。
鈴木さんの家をのぞかせてもらうと
ざっと3畳はありそうな部屋に
車のバッテリーを改造して電気を通し、
拾ってきた冷蔵庫や洗濯機を動かしている。
そこには大都会、東京の中で、確かに自分の手で建てた家が存在していた。
坂口は言う。
エコノミクスの語源は、「住まい」という意味の「オイコス」
と「あり方」という意味の「ノモス」である。
つまり、僕たちは経済をどうしていくか考えるときには必ず
家とはなにかを考えなくてはならない。
現代社会で考える、効率的な家とは何か。
坂口が考えたのは、予算3万円の移動できる家、モバイルハウス。
家づくりの常識を変えた男はいま、
生き方の常識も同時に変えようとしている。
ミルちょ
家のはなし 隈研吾の家
世界的な建築家、隈研吾のデビュー作は
伊豆の別荘だった。
太平洋が見渡せるすばらしいロケーションにありながら
竹とトタン板を組み合わせた外観に、段ボールでつくった茶室。
工業的なものを使うことで、別荘特有のメルヘンなイメージを変えた。
哲学のない建築は人の心を動かさない。
僕は図面を書くときは、
手紙だと思って書けと言ってるんです。
彼からの、家のかたちをしたメッセージに、
世界はこれからも、何度となく驚かされるのだろう。
家のはなし 伴美里の部屋の中
アーティストの伴美里(ばん みさと)が
自分の部屋を見渡した時、
そこは、彼女が年月をかけてつくりあげた
「世界の箱庭」になっていた。
「ミラーワーク」という刺繍がほどこされた
インドのキーホルダー。
バリ島で買った「バティック」という、
ろうけつ染めのスカーフ。
ベルギーはアントワープで見つけて
「文化遺産」という呼び名をつけた
大きめのカフェオレボウルに、
イギリス湖水地方、
ウィンダミアの山から持ちかえった石ころが
あったかと思えば、
プラグの周りは、いろんな国の電化製品が共存して
大変なことになっている。
自分の部屋にある思い入れの深いものをスケッチし、
それぞれにまつわるエピソードを添えた伴美里。
彼女のドローイングブック
『100 Things in My Room』の中には、
そんな「家あそび」の極意がぎっしりと詰まっている。
雨続きで、外に出られない。
そんな日は、お家の中を旅するチャンスかもしれません。
家のはなし 谷崎潤一郎の暗がり
外の光がまったく届かない建物の
暗がりの中にある、
金の襖や金屏風。
作家・谷崎潤一郎は、著書『陰翳礼讃』の中で
その微かな色彩の、照り返しをいつくしむ。
私は黄金と云うものが
あれほど沈痛な美しさを見せる時は
ないと思う。
明かりを消してしまえば、
何も見えなくなる訳ではない。
私たちの眼に、
闇が見せてくれるものもきっとある。
家のはなし ジョン・ミルトン
イギリスの詩人、
ジョン・ミルトンは言った。
心は己をその住まいとす
どんなにのぞんでも
自分の心は他人の肉体に
引っ越しすることはできない。
人が住まいにこだわり、
自分の家を自分流にしたがるのは
そんな理由からかもしれない。
calium
家のはなし 茨木のり子の家
「茨木のり子の家」という写真詩集がある。
使いこまれて皺がよった皮のソファ。
すりガラスにきざまれた楕円のパターン。
いま見てもモダンな自宅写真の合間に
彼女の詩が美しくレイアウトされる。
食卓に珈琲の匂い流れ
ふとつぶやいたひとりごと
あら
映画の台詞だったかしら
なにかの一行だったかしら
それとも私のからだの奥底から立ちのぼった溜息でしたか
曳きたてのキリマンジェロの香りは、
彼女の鼻腔を通ってことばとなり、
きっとこの部屋から
いくつもの詩が生まれたことだろう。
家は、そこに住む人の匂いを記憶する。
茨木のり子の家の写真からは
珈琲の香りが漂ってくる。
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