吾輩は余裕派である
ニュートンからはじまった自然科学の発展は
人の考え方に多くの影響を与えた。
社会学に科学的思考が加えられるようになり
文学の世界では、自然主義文学が生まれた。
自然主義文学を代表する作家、
フランスのエミール・ゾラは、
遺伝や環境を描写することで、
人間の行動を科学的に客観的に描こうとした。
20世紀初め、つまり、明治の終わり頃、
日本の文学界にも、自然主義が入ってきた。
島崎藤村、田山花袋、国木田独歩などが、
日本の自然主義文学の柱を支えた。
ヨーロッパのものはなんでもよいとされていた当時の日本では、
自然主義文学一色になるだろうと誰もが思っていた。
しかし、ある作品が、
自然主義文学に傾く日本文学界にくさびを打った。
この小説は、こうはじまる。
吾輩は猫である。
名前はまだない。
自然主義とは対照的に、
人生を楽しもうという余裕派。
その代表作家になっていく
夏目漱石が書いた最初の小説である。
2月21日は漱石の日