大友美有紀 15年7月5日放送
「作家の時間割」シラー
夜、突然、机の前の椅子にどすんと座る。
それから冬には午前4時か5時まで机についている。
夏は午前3時まで。
そのあとはベッドに入り、たいてい9時か10時まで寝る。
ドイツの詩人で歴史学者、哲学者、劇作家でもあった
フリードリヒ・シラー。
邪魔が入るのを嫌い、ほとんど夜にだけ仕事をした。
手元には濃いコーヒーかワイン入りのチョコレート。
年代物のライン産ワインかシャンパンということも多かった。
それらをときどき口にして疲れをとる。
そして、ひっきりなしにタバコを吸う。
嗅ぎタバコも欠かせなかった。
そのうえ、仕事部屋の引き出しのひとつに
腐ったリンゴをいっぱい入れていた。
リンゴが腐敗していくにおいが執筆を促す刺激として
必要だと考えていたのだ。
この習慣のせいでシラーは病気がちになっていった。
それでも深夜の創作をやめられなかった
我々は貴重な財産 -時間- を軽んじてきた。
時間の使い方を工夫することによって
我々は自分を素晴らしい存在に変えることがことができる
「歓喜に寄せて」。のちにベートーヴェンが「第九交響曲」を書いた詩も、
この邪魔の入らない時間に生まれたのかもしれない。