廣瀬大 15年7月12日放送
物語を愛した河合隼雄
心理学者・河合隼雄のいちばん最初の記憶は
弟が兵隊ごっこをしている姿だという。
「トッカーン、トッカーン!」と突撃の喊声を上げる弟。
弟の年齢はおそらく3歳ぐらい。
記憶が鮮明なのは、その弟がそのあと、すぐに亡くなったからだ。
「捨てたらあかん、捨てるな」、
そう言って泣きながら弟の出棺を止めた。
「その泣いている思い出を、
ほんとうは覚えていないのです。
しかし、母親がよくその話をしたから
なんかやっていたような気がするんですね。
それはぼくにとってすごく大事な思い出になっています」
と後年、彼は優しく語った。
その現実と想像の間にある思い出は
彼の人生を支える大切な物語である。