2015 年 7 月 25 日 のアーカイブ

伊藤健一郎 15年7月25日放送

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comedy_nose
背筋を凍らせる人 鈴木光司

「そのビデオを見た者は、一週間後に呪い殺される」

作家、鈴木光司を一躍有名にしたのは、
ホラー小説『リング』だった。

執筆を始めた当時、鈴木の家庭には生まれて間もない長女がいた。
家計は妻に頼むかわりに、家のことは自分が引き受ける。
慣れない育児に奔走する中、構想を練った。

ある日の執筆中、ふと一本のビデオテープに目が留まる。
幼い長女が何気なく差し出したものだった。
そこで鈴木は思いつく。身の毛もよだつ、呪いのビデオを。

鈴木は、自身の作品をこう論ずる。

リングシリーズはホラー小説でありながら、
人間を信じる、人類の明るい未来を信じる。
そんな願いが込められている。

まだ無名だったあの頃、鈴木は必死に信じたのかもしれない。
自分と家族の明るい未来を。

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伊藤健一郎 15年7月25日放送

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wwarby
背筋を凍らせる人 稲川淳二

ひたひたひたひた…

夏の風物詩、怪談。
その語り部といえば…ご存知、稲川淳二。

聞くまいとしても、つい誘われてしまう声。
しだいに目に浮かぶ怪しい景色。いつしか漂う何かの気配。

からんころん、からんころん…

人々の背筋を凍らせ続ける彼には、ひとつの持論がある。

怪談がどんなに怖くたって、
地獄を見た人間にとっては
怪談なんか怖くない。

来年も、再来年も、ずっと。
怪談を怖がり涼む、平和な夏が続いてほしい。

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伊藤健一郎 15年7月25日放送

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plancas67
背筋を凍らせる人 楳図かずお

 面白いものを作りたかったら、人間の本能を突けばいい。

これは、楳図かずおの言葉だ。
ホラー漫画の名手として知られる彼は、
あるときこんな胸中を打ち明けた。

僕はこれまで、誰も描かないような
おどろおどろしい作品をたくさん描いてきました。
でもそれは、怖い話をつくりたかったからではなく、
「恐怖」という最も本質的な感情を通して人間を描きたかったからです。
「美しい」という感情もそう。
それらを抜きに、人間を描くことはできません。

天才と称されることもあれば、狂人と揶揄されることもある楳図。
美しさに怖いほどの執着をみせる人間を描いた
『洗礼』という作品には、こんな問いかけがある。

狂った世界の中にただ一人狂わない者がいたとしたら
はたしてどちらが狂っていると思うだろう?

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伊藤健一郎 15年7月25日放送

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Adam Polselli
背筋を凍らせる人 スタンリー・キューブリック

世界を恐怖で震撼させた映画『シャイニング』。
作品を象徴するのは、ジャック・ニコルソンの狂気に満ち満ちた表情だ。

ジャケットにも採用されたそのシーンは、わずか2秒。
しかし、撮影は2週間におよび、190以上のテイクを重ねた。

監督を務めたのは、スタンリー・キューブリック。
完璧主義と言えば聞こえはいいが、彼の制作意欲こそ狂気そのものだった。

映画に狂った彼は言う。

 映画を作っているときは、ときたま幸せだ。
 映画を作っていないときは、間違いなく不幸せだ。

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