Benson Kua
日本語のはなし 想紫苑
日本の色を表す言葉は、その響きまでもが美しい。
10月の誕生色といわれる、想紫苑(おもわれしおん)。
秋の野に可憐に咲く明るい紫の花は、
風や嵐で倒れても、いち早く立ち直ることでも知られる。
紫苑の花には、こんな逸話もある。
昔、親を亡くした兄弟がいた。
兄は忘れ草といわれる萱草(かんぞう)を、
弟は思い草といわれる紫苑を、墓に植えたところ、
兄はやがて親を忘れるが、
弟はいつまでも思い続けたという。
しとやかな想紫苑の紫は、
どんな風にも想いを揺るがせない
ひたむきな美しさを秘めている。