茂木彩海 16年9月25日放送
dovima2010
服のはなし ディオールの「ニュールック」
第二次世界大戦の終焉から立ち上がり、
弱々しくも活気を見せはじめていたヨーロッパで
クリスチャン・ディオールはあるコレクションを発表した。
「カローラライン」
その名の通り女性を優雅な花の姿に見立てるもので
コルセットで腰を細く縛り、その下から
流れるように続く大輪の花のようなロングスカートが特徴だ。
機能的とは言えないこの服は
時代に逆行し、女性を美しいだけのオブジェにしてしまうと
フェミニズムの立場から批判されることも多かった。
ところが、ディオールのショーを目にした
世界初の女性ファッション誌である「ハーパーズバザー」の編集長
カーメル・スノーは、こんなコメントを残している。
Your dresses have such a new look.
なんて革命的なんでしょう。あなたのドレスは本当に新しいわ。
「カローラライン」が、「ニュールック」と呼ばれ、
ファッション誌にその歴史が刻まれた瞬間だった。
消費社会へ世の中が猛スピードで向かう中で、
ディオールはエレガントなオートクチュールを復興させた。
服は時代を映す鏡ではなく、なりたい自分の未来を映す鏡でもあると
ディオールは「ニュールック」で伝えて見せたのかもしれない。