伊藤健一郎 17年9月16日放送
臨終の話 魯迅
中国近代文学の父、魯迅。
彼はあるとき、自叙伝を書くことをすすめられると、こう答えた。
私の生涯には、とりたてるようなことは何もない。
私の伝記程度なら、中国では四億も集まり、図書館を満たすことだろう。
伝記として残ることを拒んだ魯迅だが、遺書をしたためたことはある。
そこには、こう記されている。
キリスト教徒は、臨終ですべてを許すそうだが、私には敵が多い。
恨むなら恨め。こちらも誰ひとり許しはせぬ。
一刻者だった魯迅の葬儀には、六千人の学生や労働者が参集したという。