Adria Richards
呼吸のはなし マヤ・アンジェロウと息の数
酸素を吸い、二酸化炭素を吐く「呼吸」。
ヒトが生きるために、呼吸は欠かせない。
しかしヒトは必ずしも、
呼吸のみによって生かされているのでは
無いのかもしれない。
アメリカの女性作家、マヤ・アンジェロウは
こんな言葉を残している。
人間の価値は息をした数ではなく、
心奪われ、息をするのも忘れる瞬間を
経験した数で決まる
Adria Richards
呼吸のはなし マヤ・アンジェロウと息の数
酸素を吸い、二酸化炭素を吐く「呼吸」。
ヒトが生きるために、呼吸は欠かせない。
しかしヒトは必ずしも、
呼吸のみによって生かされているのでは
無いのかもしれない。
アメリカの女性作家、マヤ・アンジェロウは
こんな言葉を残している。
人間の価値は息をした数ではなく、
心奪われ、息をするのも忘れる瞬間を
経験した数で決まる
呼吸のはなし アスリートと呼吸
アスリートの商売道具は、
言わずもがな、「身体(からだ)」。
どんな競技・種目であれ、
アスリートたちはみずからの身体の使い方を
1ミリでも向上させるべく、
日夜トレーニングを続けている。
そして、身体の可能性を
極限まで高めようとする彼らにとっては、
「呼吸」の使い方も、身体の使い方。
多くのプロゴルファーを育てた
名指導者・坂田信弘も、
みずからの著作の中で、こんな話をしている。
ゴルフというのは、球を叩く、
その球を叩くのは、空気で叩くんです。
呼吸で叩くんです。
呼吸のはなし 勝海舟と呼吸
勝海舟。
ご存知の通り、江戸無血開城の立役者のひとりだ。
官軍の江戸総攻撃が目前に迫るなかで
最後の将軍徳川慶喜に幕府の幕引きをまかされた。
様々なプレッシャーのもと、
時代の空気を読み、気迫を持って、
和平交渉を成立させた勝海舟の気苦労はいかばかりだったろうか。
勝海舟の晩年の談話を集めた
氷川清話(ひかわせいわ)には、
こんな言葉が収録されている。
ところで気合いとか呼吸とかいっても、
口ではいわれないが、
およそ世間の事には自ら(おのずから)
順潮(じゅんちょう)と逆潮(ぎゃくちょう)とがある。
しかしこの呼吸が、いわゆる活学問(いきがくもん)で、
とても書物や口先の理屈ではわからない
呼吸のはなし 岡本太郎の深呼吸
0年代、岡本太郎が、とある青年誌で
まことに岡本太郎らしい人生相談を
していたのはご存知だろうか。
健康について聞かれた回では、こんな言葉を残している。
健康法なんか考えないことがいちばんの健康法だと思っている
もちろん、逆説をとなえるだけでは終わらないのが、岡本太郎だ。
続きは、こう。
思いっきり新鮮な朝の空気を吸い込むと、
青空が体に染み込んで、
一日のエネルギーが沸いてくる喜びを感じる。
これが僕の生きがいだね。
呼吸のはなし サン=テグジュペリの愛の言葉
星の王子様の作者、サン=テグジュペリが
愛について残した言葉がある。
私たちは同じ目的によって隣人と結ばれるとき、
初めて呼吸することができる。
愛するとは、お互いに見つめあうことではなく、
ともに同じ方向を見ることだ。
大事なひとと喧嘩になったら、
思ってもいないひどい言葉を投げるより、ひと呼吸。
窓をあけて、ふたりで深呼吸しよう。
don2g
呼吸のはなし 長田弘の詩と呼吸
ふと気がつくと、
まともな呼吸ができないくらい
追われるように暮らしている。
そんな慌ただしい日々を
風のように吹き抜けることばがある。
詩人、長田弘の詩、「窓のある物語」
ことばが信じられない日は、
窓を開ける。それから、
外にむかって、静かに息をととのえ、
齢の数だけ、深呼吸をする。
ゆっくり、まじないをかけるように。
その詩のままに、そっと目を閉じ
ただただ呼吸をゆったり深める。
齢の数まで呼吸しなくとも、
ひと息ごとに胸のざわめきが
静かにやさしくなってゆく。
そうだ。
ことばが信じられない日こそ
ことばを、呼吸を、信じてみよう。
めまぐるしさを時代のせいにするのは
もうやめて。
呼吸のはなし 書道家の呼吸
吐く息がすーっと溶け込み、吸う息が自然に体に流れ込んできて、
溶け合うことを入我我入と言うんです。
自然に息を吸って、その息が自然に出て行くように毎日を過ごしていれば、
どこかに行き着くのだと信じているのです。
御年97歳の書家、関頑亭(せきがんてい)の言葉である。
生きることは呼吸をすること。
流れる筆のようなしなやかな呼吸が、健やかな心と体の糧となる。
呼吸のはなし ぜいたくな呼吸
いい役者には空気を変える力があるとはよく聞くが、
その場の空気を一緒につくりあげる、それが舞台役者なのかもしれない。
歌舞伎役者、中村勘九郎は「四谷怪談」でお岩さんを
演じたときのことを、こう振り返る。
舞台の上でお客さんの呼吸が聞こえるくらい集中してくれた。
私はぜいたくにも舞台と客席がいまひとつになった瞬間を感じ取った。
一緒に息をのんで、一緒にホっとため息をつく。
その一体感こそが舞台を楽しむ醍醐味なのだろう。
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