2018 年 6 月 16 日 のアーカイブ

得津有明 18年6月16日放送

180616-01
bjimmy934
地下鉄の切符売り

AIやロボットの登場で、将来多くの仕事がなくなると言われている。
時代に人は逆らえないのかもしれない。
だが、古きは無用の遺物になるのだろうか。

1958年にフランスを席巻した名曲がある。
Le Poinçonneur des Lilas (地下鉄の切符切り)。
セルジュ・ゲンスブールのデビュー作だった。

来る日も来る日も切符に小さな穴を開けている切符売り。
そんな姿を今、パリで目にすることはない。
しかし、その時代、確かに彼らはそこに生きていた。
その息づかいを、哀愁を、ゲンスブールは見事に切り取り、歌として遺した。

セルジュ・ゲンスブール。
この名は拡張されるパリ地下鉄11号線の新しい駅名となる。

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得津有明 18年6月16日放送

180616-02
blueskyfantasie
砂漠の井戸


オフィス街に立ち並ぶ近代的なビルの数々。
その夜景が美しいのは、光と闇のコントラストによるものだけではない。

フランス生まれの小説家であり、パイロットでもあった、サン・テグジュペリ。
代表作『星の王子さま』は、
不時着したサハラ砂漠を彷徨った体験をもとに書かれている。

作中で、月夜の砂漠を歩く王子が、ゆっくりと呟く。

 砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ。

都市の夜景が美しいのも、
光の中にひとりひとりのドラマが隠れているからではないだろうか。
働くわたしたちの喜怒哀楽が、この街をより美しくしている。

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森田隼司 18年6月16日放送

180616-03

親鸞のことば

鎌倉時代の僧で、浄土真宗の祖と言われる親鸞。
彼は仏門に入る際に、こんな詠を残している。

 明日ありと 思う心の 徒桜(あだざくら) 
 夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは

「咲いている桜だって、夜中に嵐が来て散ってしまうかもしれない。
だからこそ、今を精一杯大事に生きたいんだ。」

驚くべきは、この詠をよんだときの親鸞は7歳、
今で言えば小学1年生だったと伝えられていることだ。
人生100年時代。
いくつになっても、今を精一杯生きるという思いを
私たちも大事にしていきたい。
7歳児に負けるわけにはいかないじゃないか。

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森田隼司 18年6月16日放送

180616-04

チャーミング

アイルランド出身の作家、オスカーワイルド。
彼の作品の中に、こんなセリフがある。

 人間のことを善人か悪人かで区別するのは馬鹿げている。
 人間は、チャーミングか、退屈かだけだ。

ワイルドの作品と思想は世界中に影響を与えたと言われているが、
彼の常識にとらわれない見方が、
この言葉からも伝わってくるだろう。

職場では部下を気遣い上司の顔を伺い、息苦しい日々を過ごす私たち。
ひょっとすると、善人であろうとするがあまり、
私たちは退屈な人間になってはいないだろうか。
明日からの新しい1週間。
ちょっと気持ちを切り替えて、
チャーミングな人間を目指してみるのもいいかもしれない。

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用丸雅也 18年6月16日放送

180616-05
Tokyo Watcher
日本が遅れる

日本の近代工学並びに土木制度の礎を築いた古市公威(ふるいちこうい)。
フランスでの留学中、彼のあまりの猛勉強ぶりに
下宿先の女主人が身体を壊しはしないかと心配した際、
彼はこう、言い放った。

 自分が1日休むと、日本が1日遅れます

古市の言葉を聞くと、「働く」や「学ぶ」の前に
生きる目的について問いかけられている気がする。

彼の死後、東京大学には古市の銅像が置かれた。
時は2018年。その死後から100年近くたった今も
学生たちに問うているのだろう。
「君たちは、日本のために働けるか」と。

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