2018 年 6 月 のアーカイブ

大友美有紀 18年6月3日放送

180603-07

「安野光雅」 岸田衿子

画家・装幀家・絵本作家、安野光雅。
岸田衿子の詩集「風にいろをつけたひとだれ」の装幀を手がけた。
衿子は劇作家・岸田國士(くにお)の娘。
女優・岸田今日子の姉である。
安野が「キツネに野生が蘇った」と書いた文章を
衿子は「野生が戻った」にした方がいいと言った。

「モドッタ」という言いかたは、一見通俗ふうである。
そのむずかしくなく、やさしく書くことは、
その後の安野の文章に対する姿勢をあらためさせた。
岸田衿子の言葉どおり、「衿を正す」もととなっていった。

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大友美有紀 18年6月3日放送

180603-08
leosagnotti
「安野光雅」 千住真理子

「旅の絵本」などで知られる作家・安野光雅は、
テレビ番組で、バイオリニストの千住真理子と
ドイツからエルベ川をさかのぼる旅をした。
プラハに入ったとき、安野は千住と二人だけで
待機することになった。
ずいぶん待っても誰も戻って来ない。
日も落ちはじめた。現地のお金もない。
千住は、バイオリンを弾きましょうか、という。
彼女のバイオリンは、ストラディバリウスである。
それを弾けば投げ銭が集まるかもしれない。

安野がドキドキしていると、
たいへんお待たせしました、とディレクターが戻ってきた。
まったく気の利かない男だ。

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佐藤延夫 18年6月2日放送

180602-01

趣味に生きる 土井利位

「雪の殿様」とは、
下総古河藩第4代藩主、土井利位のことだ。
雪の結晶を顕微鏡で観察した最初の日本人と言われている。
わざわざオランダ製の顕微鏡を長崎から取り寄せ、
試行錯誤を繰り返しながら、
20年にわたり雪を観察した。
雪の結晶86種類を描いた本の出版は、
世界初の偉業とされる。
その鮮やかな文様は広く知れ渡るようになり、
浴衣にデザインされるほど流行したという。

ひとつの物事を極めると、
新たなビジネスが生まれるのかもしれない。

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佐藤延夫 18年6月2日放送

180602-02

趣味に生きる 榊原政岑

播磨姫路藩第3代藩主、榊原政岑は
遊芸を好み、放蕩三昧の暮らしを送った。
派手な出で立ちで江戸城を警備し、
まるで将軍吉宗の倹約令に逆らうように
贅の限りを尽くした。
また、当時、吉原一の美女と謳われた
高尾太夫を1800両で身請けし、
その際に開いた宴の費用は、
3000両をゆうに超えたとも言われている。
もちろんそのような振る舞いは将軍の怒りを買い、
越後高田への転封が命じられた。
新天地では必死に政務に励んだが、
翌年、31歳の若さで亡くなっている。

太く短く遊び抜くのも、また人生。

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佐藤延夫 18年6月2日放送

180602-03

趣味に生きる 前田綱紀

加賀藩第5代藩主、前田綱紀は
学問を好み、図書の収集に心血を注いだ。
藩内に書物奉行を任命し、
全国各地に家臣を派遣して本を集めさせた。
お金で買えない古文書は、
借用して丁寧に写し取ったという。
蔵書は数十万点に及び、
儒学者、新井白石は「加州は天下の書府なり」と讃えている。
そしてまた、全国の工芸に関する道具、材料など
あらゆる資料を分野別にまとめた「百工比照」を編纂した。
たとえて言うなら、
人間図書館。人間博物館。
堅苦しいお城の中よりも、
本や美術品に囲まれて暮らしたかったに違いない。

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佐藤延夫 18年6月2日放送

180602-04

趣味に生きる 増山正賢

伊勢長島藩第5代藩主、増山正賢は文人大名と呼ばれ、
山水画や花鳥画など文芸の世界で優れた才能を発揮した。
特に「虫豸帖」と呼ばれる
蝶や蝉、カブトムシ、クワガタなど
昆虫を精緻に捉えた作品は、
現代の図鑑に見劣りしないほどの出来栄えだ。
描く際には、生きている状態ではなく、
命をいただき、あらゆる角度から写しとった。

正賢は、虫の亡骸を小さな箱に入れ、
大切に保管していたという。
上野寛永寺の境内には、
彼が虫の霊を慰めるために建てた、
虫塚という慰霊碑が残っている。

一寸の虫にも五分の魂。
このことわざは、彼のためにあるのかもしれない。

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佐藤延夫 18年6月2日放送

180602-05
研究情報アーカイブズ
趣味に生きる 堀田正敦

下野佐野藩主、堀田正敦は
政治家として寛政の改革を推進する傍ら、
文芸活動にも力を発揮した。
和歌や紀行文なども書いたが、
代表的なものは、「禽譜」と呼ばれる鳥の図鑑だ。
自分で集めた鳥を絵師に描かせ、
他の大名が持つ図譜は複写して集めた。
鶴や孔雀など、日本でおなじみの鳥はもちろんのこと、
エトピリカ、ペンギンなども描かれている。

学問こそ、彼の最大の道楽だったのだろう。

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