宮田知明 11年9月18日放送
あるスポーツ選手の美学/三浦知良
日本では、引き際のいさぎよさを
よく「美しい」とされる。
その考え方の逆、
つまり「やめない」ことに美しさを見出す人、
キングカズこと、三浦和良。
余力を残して辞めていく選手は多い中で、
44歳になってもカズは全くそのそぶりを見せない。
4年前、テレビ番組で、
「いつまでやるのか」という質問に対して、
彼はこう答えている。
できたら還暦までやりたいんだけどね。
3月29日のチャリティーマッチでのゴールを見せられると、
あのときの言葉は、あながち冗談でもないかもしれない。
ある毒舌家の美学/有吉弘行
毒舌にも、美学がある。
平成の毒舌王、有吉弘行曰く、
「悪口はいいけど、陰口はダメ」。
その真意とは。
僕は絶対に本人のいないところで悪口は言いません。
陰口をたたけば周りの人から
「こいつは俺の事もどこかで悪く言ってる」と
思われて自分の評判が下がる。陰口は自分に返ってくる。
これは、毒舌キャラとして芸能界でやっていくための、
彼独特の美学なのかもしれない。
でも、
むしろ毒舌でも何でもない普通の人にとって、
この考え方に学ぶところは多い。
あるジャーナリストの美学/池上彰
いい質問ですね!でおなじみの
ジャーナリスト・池上彰。
分かりやすい説明に定評のある彼にも、
一つの美学がある。
それは、説明するときに、
「自分の個人的な意見は差し挟まない」ということ。
NHKを辞めてすぐの頃、民放の番組の
コメンテーターとして出演したとき、よく言われた言葉。
「あなたの意見を聞かせてください。」
視聴者からすると何でもない質問だが、
池上には違和感があった。
それは、32年間のジャーナリストとしての生活で、
「自分の意見は一切出すな」
「客観報道に徹しろ」と教えられてきたから。
誰かのバイアスのかかった意見よりも、
公平な視点での説明の方が人は納得しやすい。
そう思ってテレビを見ると、コメンテーターの
自分勝手な意見が、なんと多いことか。