厚焼玉子 12年9月16日放送



夢二の手紙 6 まあちゃん

竹久夢二の手紙

 まあちゃんは今頃起き出ているであろう。
 そして僕の手紙を読んでいるであろう。
 まあちゃん、本当に早く帰って逢いたいねえ。

 いま汽車は比叡の麓を通っている。
 青い麦の間を青色の日傘をさして近江の少女がゆく。
 湖は紫色をして、桃色の帆船を浮かべている。

夢二が「まあちゃん」と呼んだのは
離婚した妻、環(たまき)のことだった。

別れてもなお、夢二は年上の妻に甘える。

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