小野麻利江 13年6月30日放送
プレゼントのはなし 薩摩藩からの大硯
安政3年。徳川第13代将軍・家定のもとに
薩摩藩島津家から、篤姫が嫁いだ。
挙式の際、薩摩藩からの贈り物の中には
ひときわ目立つ大きな「硯(すずり)」が。
長さ1.5メートル、幅90センチで、重さは108キロ。
上甑島(かみこしきじま)で切り出された天然の硯石に彫刻し、
大人4人がかりで、江戸まで運んできたという。
なぜこのような硯を献上したか。
篤姫の養父、薩摩藩主・島津斉彬は、
こう語ったそうだ。
「婚礼の品に関しては、全国の大名が
金銀珠玉をちりばめ華美を競っているが、
どの品もそれほど大したものではない。
そのように絢爛豪華ではないが、
雅の心だけは非常に深く込められている
この大硯を献上することは、
後世まで一つの語り草になるのではないかと思う。」
何をどう贈るか。贈り物も、またひとつの政治。