小野麻利江 14年11月30日放送
Junya Ogura
美味のはなし 伊丹十三とスパゲッティ
俳優、デザイナー、エッセイストののち、
映画監督としても名を馳せた伊丹十三は、
食に関しても、ひと言もふた言もある人だった。
そんな伊丹が、エッセイ集『女たちよ!』の中で、
「スパゲッティ・ナポリタン」に憤慨している。
なにゆえに日本人はスパゲッティに
鶏やハムや海老やマシュルームを入れて
トマト・ケチャップで和えるようなことをするのか。
なんでも、トマトケチャップの味が
「甘ったるくて貧しい味」だというし、
一品だけ食べれば満足できるという
日本の洋食の考え方じたいも、「貧しい」という。
話はそこから、スパゲッティの理想の茹で加減へと進む。
いまはすっかりポピュラーな「アル・デンテ」を伝えるべく、
ページを割き、ひとつひとつ手順を説いていく。
最後にもう一度、「天敵」スパゲッティ・ナポリタンを
揶揄して終わる、このエッセイ。
低い次元にまで引きずりおろし、
歪曲するということをするべきではない。
根本精神をあやまたずに盗め!
日本人がつくるスパゲッティに苦言を呈しながら、
日本人の文化の取り入れ方を、嘆いていた。