石橋涼子 17年7月30日放送
青のはなし 山口誓子の七月の青
現代的な俳句を数多く残した昭和の俳人、山口誓子。
彼が北九州の八幡製鉄所を訊ねた際に残した、夏の一句がある。
七月の青嶺(あおね)まぢかく溶鉱炉
青嶺(あおね)とは、夏の青々とした木々に覆われた山のこと。
真っ赤に燃える溶鉱炉の熱気から逃れるように外へ出て、
製鉄所の周囲を包み込む夏の青さに心を奪われたのだという。
山口誓子は、自らの句の解説でこう語った。
その「青嶺」は、夏の真盛りの青嶺であったから、
私はそれを「七月の青嶺」と表現せずにはいられなかった。
「七月」は伊達(だて)ではない。
六月でもない、八月でもない「七月」である。