細田高広 10年01月17日放送
コーヒーに魅せられて ジャン=ジャック・ルソー
哲学者ジャン=ジャック・ルソーは、大の珈琲好きだった。
珈琲を切らしたときは窓を開けて
ご近所の家が珈琲豆を煎る香りを楽しんだという。
そんなルソーが、死ぬ間際に残した言葉。
あぁ、これで珈琲カップを手にすることができなくなった。
珈琲との別れ。それは一番大切な、
考える時間との別れを意味していた。
珈琲は、人間の思考を助ける「思考品」なのだ。
コーヒーに魅せられて 服部良一
大のビール党だった作曲家服部良一は、
ある日、大好きなビールを題材に曲をつくることを思い立つ。
タイトルは、「一杯のビールから」。
しかし、できあがった歌詞を手にして、服部は驚いた。
「一杯のコーヒーから」に、変わっていたからだ。
これは、作詞家の藤浦洸が、
ビールを飲まないコーヒー党だったことによる。
昭和14年。日本でコーヒーが曲のタイトルになった、
最初の事例と言われている。
一杯のコーヒーから、小鳥さえずる春も来る。
さぁ、熱いコーヒーを入れて、春を待ちましょう。
コーヒーに魅せられて T.S エリオット
わたしは、私の人生を、コーヒースプーンで測ってきた。
人の孤独を描きたかった詩人エリオットは、
単調で鬱屈した日々を、コーヒー豆を掬う動作の繰り返しに喩えた。
ひとりで飲み続けるコーヒーは、
ただ、苦いだけのものかもしれない。
「かもめ食堂」という映画は、私たちに
コーヒーを美味しく飲む秘訣をアドバイスしてくれる。
コーヒーは、他人に入れてもらった方が美味しいんだ
大切な人にコーヒーをいれてもらう幸福を知っていたら。
コーヒーを愛することが、
人と過ごす時間を愛することだと知っている人なら。
コーヒーは「孤独」の喩えにはなりえない。
コーヒースプーンで測る人生は、幸せだと思う。
コーヒーに魅せられて ジェームス・マッキントッシュ
今日、1月17日はセンター試験。
受験の本番がいよいよ始まりました。
眠い目をこすりながら勉強中の受験生のみなさんに、
『名誉革命史』を書いた
イギリスの下院議員、ジェームス・マッキントッシュ
の言葉を送りたいと思います。
人間の意思の力は、
その人が飲んだコーヒーの量に比例する。
努力とコーヒーは、きっと皆さんを裏切りません。
珈琲に魅せられて ジム・ラヴェル アポロ13号船長
「ヒューストン、問題が発生した。」
ジム・ラヴェル船長らを乗せたアポロ13号が、
トラブルに気付いたのは、
地球からおよそ321,860km離れた地点。
酸素タンクが突如、破裂したのだ。
少しでも電力を節約するために電気は切られ、
船内の気温は氷点下近くまで下がった。
恐怖と寒さに襲われた乗組員たちを、なんと言って励ますべきか。
ヒューストンは熱を込めて宇宙の仲間たちに伝えた。
君たちは今、熱いコーヒーへの道を歩いているのだ。
そのメッセージは、カフェインより強く
疲弊した乗組員たちの目を覚ました。
無事に地球に戻ってから、彼らはきっと珈琲を飲んだのだろう。
宇宙一、美味しい珈琲を。
コーヒーに魅せられて バルザック
死ぬまでアイデアが尽きることが無かったという、
文豪バルザック。
彼の創作活動は、珈琲に支えられていた。
夜中に50杯以上の珈琲を飲んでは、
原稿を書き、推敲を繰り返したというのだ。
コーヒーが腹中に入ると、即座に活気が出てくる。
ちょうど戦場における軍隊のように
いきいきとしたアイデアが生まれ、
記憶の中に眠っていたものが、
つぎからつぎへとその姿をあらわしてくる。
この世界には、
珈琲がなければ生まれなかった
アイデアが、きっと山のようにある。
コーヒーに魅せられて タレーラン
人は何故、珈琲を、
毎日飲んでも飽きないのだろうか。
皇帝ナポレオンに仕えた外交官、
タレーラン・ぺリゴールは、愛する珈琲をこう表現した。
悪魔のように黒く、地獄のように熱く、
天使のように純粋で、恋のように甘い。
悪魔と天使と地獄と恋が束になってかかれば
なるほど、飽きることはない。