五島のはなし(117)
子ども時代のことを友人と話していると、よく、
五島にはヘンな人がいたよなーって話になる。
が、うちの父は
「むかしはヘンな人がもっとたくさんいたんだけどな~」
と遠い目をして言う。少し残念そうに。
なんでも昭和40年代のいつごろか、
とってもエライ人が五島を来訪し、
その機会にヘンな人たちは少なくなった、というのである。
ホントだろうか・・・
「むかしはもっといた」という
ヘンな人の一例は「メヒクライ」だ。
「飯喰らい」っていう意味だと思う。
いつも茶碗を手にもって街を歩き、
腹が減ると、知らない人の玄関にズカズカと入り
「メヒッ!」
と大声で叫ぶのだそうだ。
手に持った茶碗を突き出しながら。
すると、その家の人は
(あ、メヒクライがうちに来たゾ・・・と思いながら)
その茶碗にご飯を入れてあげる習わしだった、という。
たきたての白米じゃないと嫌がった、
という話を聞いた気がする。
ホントだったらおもしろい。
おかずはどうしていたんだろう。
ふつうに考えれば、ご飯がおいしくて、
親切にしてくれる家ばかりを選ぶようになるはず。
でも、メヒクライは誰の家でもおかまいなしに入っていったというから、
実はきっと、島民の、他人への思いやりとか、コミュニティの連帯感とか、
そういうのを高めるために、ヘンな人のふりをしていたんじゃないか
(一風変わった民生委員ととらえることもできる)、
なんて想像をふくらましてみたけど、
たぶんそんなことはなくて、たんに、ヘンな人だったんだろう。
10円おじさん
小学校の帰り、『10円あげるから耳掃除させて』と言ってくるおじいさんがいたよな。
10円に魅力は感じたけど、実際にやってもらったという話しは聞いたことはなかったけど。