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伊藤健一郎 16年5月14日放送

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masa7
青春をかく人 あだち充

 何かを手に入れるためには
 何かを手離さなければならない。

青春漫画『タッチ』の生みの親、あだち充は言う。

 指先ひとつで飛び交う情報、省かれた手間、ヒマ。

 便利さはあっという間にただの日常となって、
 手離したモノを思い出すのはずっと後になってから…

あだち作品の主人公は、概して多くを語らない。
どちらかといえば、不器用に、ぶっきらぼうに想いを口にする。

でもなぜか、そのわずかな言葉を、
言葉にならない言葉たちを、読者は時間をかけて読むことになる。
子どもと大人のはざまで揺れていた、あの頃の自分を重ねながら。

あだち充は言う。

 手間、ヒマ、時間をかけることはムダなことですか?

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伊藤健一郎 16年5月14日放送

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青春をかく人 あだち充

 放課後は、麻雀やって、漫画描いて、ラジオの深夜放送を聞く。
 明け方まで聞くから、毎日遅刻。出席日数もギリギリだった。

あだち充の高校生活は、彼の漫画に出てくる
部活や恋愛とは無縁のものだったという。

 高校時代にやりたかったこと、
 こうすればよかったなってことが
 自分の中に溜まっていて、
 それを漫画に描けばいいから助かってますよ。

あだち充の原動力は、かつての自分に対する反省。
あだちは言う。

 私生活が楽しかった時代は、ロクな作品を残してない(笑)

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伊藤健一郎 16年5月14日放送

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aes256
青春をかく人 今日マチ子

 机の前に座っているよりも、
 むしろ日常生活の中で、ずっとストーリーを考えている。

漫画家、今日マチ子。
彼女は、連載を始めるとき、物語にルールを定める。

たとえば、青春群像劇『みかこさん』のルール。
それは、毎回、物語のモチーフとなるアイテムを使うこと。

髪の毛で隠したピアス。ローファーに入り込んだ砂利。
こんがらがったイヤホン。削れ過ぎてしまう鉛筆削り。

言葉よりも雄弁に語るいくつものアイテムは、
人を、暮らしを見つめる中で、必死に探し出した。

ルールは絶対。今日マチ子は言う。

 やめてしまうということは、その人には向いていなかったか、
 向いていないと言わないまでも、まだその時期ではなかっただけ。
 別に、続けられなかったことを悔やむ必要はないけど、
 一度続けられたことは大事にした方が良い。

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伊藤健一郎 16年5月14日放送

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さとっち
青春をかく人 伊坂幸太郎

 学生時代を思い出して懐かしがるのは構わないが、
 あの時はよかったな、オアシスだったなと
 逃げるようなことは考えるな。そういう人生を送るなよ。

作家、伊坂幸太郎。
彼の小説『砂漠』は、大学での4年間が舞台だ。
物語の主要人物、偏屈な学生、西島は言う。

 目の前の人間を救えない人が、
 もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。
 歴史なんて糞食らえですよ。目の前の危機を救えばいいじゃないですか。

生きていれば、不条理なことなんて山ほどある。
そのひとつひとつに真剣に向き合うことなどできない。

でも、西島が言う通り、確かなことがある。

 今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、
 明日、世界を救えるわけがないんですよ。

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伊藤健一郎 16年5月14日放送

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#Pomegranate
青春をかく人 井上雄彦

 天才ですからね。

漫画家、井上雄彦。
代表作『スラムダンク』は、
バスケットボールに青春を燃やす高校生の物語だ。

その名試合、山王戦。
主人公、花道は、ルーズボールに突っ込み背中を負傷する。

「選手生命に関わるかもしれない」
顧問の安西先生は、ベンチに下げようと本気で説得する。

でも花道を止められなかった。たった一言のせいで。

 オヤジの栄光時代はいつだよ…
全日本の時か?
 俺は…俺は今なんだよ!

ところで、あなたの栄光時代はいつですか?

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伊藤健一郎 16年4月23日放送

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ビールのお話 ルターの言葉

宗教改革の創始者、マルティン・ルターは、
無類のビール好きだった。

ルターは言った。

「うまいヴィッテンベルクのビールを飲む。
 すると、ひとりでに、神の国がやってくる。」

グラスを傾け、神の声に耳を傾け、
ルターは、プロテスタント教会の源流をつくった。

そんなルターの教えに忠実、というわけではなく、現代人もビールが大好き。
中には、麦芽王子と呼ばれる有名人もいるらしいが、それはまた、別のお話。

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伊藤健一郎 16年4月23日放送

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ビールのお話 岩沢厚治の称号

国民的フォークデュオ、ゆずの一人。
岩沢厚治は、こんな異名を持つ。

 「麦芽王子」

ビール好きが高じて、手に入れた称号。
麦芽王子・岩沢には、ひとつの自負がある。

 「人間としてダメなところは、標準装備している」

ラジオの公開放送で「酔っております」と告白してしまうほど、
絶妙なダメっぷり、赤裸々なスタンスが、心揺さぶる歌を育むのだろう。

ところで、酔い姿には、人それぞれの生き様がにじみ出るというもの。
チェイサーにビールを頼む、ハードボイルドな男もいるそうだが、
それはまた、別のお話。

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伊藤健一郎 16年4月23日放送

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Gruenewiese86
ビールのお話 フィリップ・マーロウの飲み方

レイモンド・チャンドラーの小説に登場する、探偵。
フィリップ・マーロウは、言い放つ。

 「タフでなければ生きてゆけない。優しくなれなければ生きている資格がない」

たとえ酒を飲むときでさえ、ハードボイルドを貫くマーロウ。
ウイスキーをストレートで、ちびりちびり。
酒に飲まれぬよう、チェイサーとして、ビールを頼む。

マーロウは言う。

 「飲むのなら自尊心を忘れないようにして飲みたまえ」

百戦錬磨のマーロウにとって、ビールは自尊心を保つための相棒だった。

ところで、4月23日の今日は、ビールの日。
乾杯のもと、素敵な出来事が次から次へと生まれているはずですが、
それはまた、別のお話。

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伊藤健一郎 15年11月21日放送

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それぞれの反戦旗 アルベルト・アインシュタイン

物理学の父、アルベルト・アインシュタイン。

相対性理論を導き出した彼は、
1930年、戦争を終結させるために、
こんな理論を導き出した。

 兵役を指名された人の
 2%が戦争拒否を声明すれば、
 政府は無力となります。
 なぜなら、どの国も、
 その2%を越える人を収容する
 刑務所のスペースがないからです。

戦争を撲滅する理論が生まれて
85年が経つというのに、
世界では紛争が後を絶たない。

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伊藤健一郎 15年11月21日放送

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それぞれの反戦旗 イマヌエル・カント

 あらゆる事物は価値を持っているが、人間は尊厳を有している。
 人間は、決して目的のための手段にされてはならない。

ドイツの政治哲学者、イマヌエル・カント。
彼は、その著書『永遠平和のために』の中で、
戦争を防止するための手段として、常備軍の全廃を説いた。

 常備軍は時を追って全廃されるべきである。
 なぜなら、常備軍は常に武器をとって立ち得る用意ができているから。
 他国をして常に戰争の危惧を感ぜしめ、
 このようにしてお互いに他を刺激して
 無際限に兵備の優秀を競うようにさせるのである。

カントは続ける。

 人を殺すため、或いは人に殺されるために雇われるというようなことは、
 人間を単なる機械や道具として
 他のものの手において使用することを含意すると思われる。
 これは、我々自身の人格における人間性の權利に合致し得ない。

戦後70年の今、平和について真剣に考えてみてはどうでしょう。

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