ヒゲと将軍
戦国の世において、
ヒゲは武士の強さの象徴だった。
ところが江戸幕府ができると
官僚化した武士にヒゲを剃る習慣が広がる。
荒っぽいヒゲは「傾奇者」と呼ばれる
アウトローたちのものとなり、取り締まりの対象に。
そして4代将軍・徳川家綱の代に
とうとう「大髭禁止令」が発令され、
ヒゲが一掃されるに至った。
確かにそれ以降の浮世絵を見ても
ヒゲを生やした者は見当たらない。
泰平の世ともに、ヒゲは居場所をなくしたのだ。
ただし、禁止令にも例外が。
長谷寺に残る家綱自身の肖像画には、
堂々たるヒゲが生えている。
武士のトップに許された特権だったのだろうか。