木簡が語る日本古代史
では、木簡の講義をはじめます。
木簡とは、木で作られた札、或いはカードです。
七世紀から八世紀にかけてさかんに使われたこのカードには
看板、メモ用紙、荷札、そして葉書など、多種多様な用途がありました。
では、そのほんの一部を読み上げてみましょう。
受領書
「出産した母犬のための栄養食を受け取りました。長麻呂」
キーホルダー
「東門の鍵」
下っ端役人高屋連家麻呂(たかやのむらじやかまろ)50歳の勤務評定
「評価はまあまあ」
勝手に欠勤した役人への呼び出し状 1
「正当な理由がないなら出勤するように」
欠勤届
「お腹が痛くて休んでしまいました。治りません。
治ったら残業もいといません。今回はお許しください」
休暇延長の申請
「どうか休暇の延長を願い上げます」
無断欠勤している役人への呼び出し状 2
「制服まで支給したのだから早々に出勤しなさい」
上司への連絡
「こんど宴会を開きます。先日の失敗はなかったことにしてね」
落書き
「人の顔」
落書き
「馬の顔」
かけ算の九九表
「三九、二十七。二九、十八。」
万葉仮名の国語ノート1
「浪速津に咲くやこの花」
万葉仮名の国語ノート2
「春草のはじめの年」
平城京ニュース
「天皇がお亡くなりになりました」
税金の納付書 1
「三河の国篠島の海部より鮫の干物を6斤納めます」
税金の納付書 2
「若狭の国遠敷(おにゅう)郡 中臣部平麻呂が塩を三斗納めます」
大伴家持が書いたと見られるラブレター
「春なれば 今しく悲し…云々」
契約書
「運送を請け負った魚は責任を持って運びます」
呪いの札
「原さんは鬼に食われてしまえ」
看板
「役人詰所」
命令書
「妻に餅米を届けるように」
送り状 1
「耳成山の農園から 芹二束、チシャ二把ほか、送ります」
送り状 2
「粕漬けの瓜と茄子、醤油漬けの瓜と茗荷を送ります」
冷蔵庫設計図
「深さ3メートルの穴を掘り、断熱材として500束の草を使用し
冬に池の氷を取って保存する」
表札
「長屋王の宮殿」
捜索願
「馬が逃げました。黒毛、片目と額の毛が白い牡馬。
逃げた日時は9月6日午後4時、場所は猿沢の池あたり。
見かけたらお知らせください」
日本国内の1000に余る遺跡から出土した木簡は341335枚。
日本の古代史はカードが語ります。
では今日の講義はここまで。
出席をとりますよ。
出席番号1番、大伴さん…