日本が輸出した介護型アンドロイドが
日本が輸出した介護型アンドロイドが
海外の、ことに英語圏で
次々と故障する原因がサラダにあるという事実について
発表いたします。
アンドロイドの注意書きとして
食べ物や飲み物を与えないことは
もちろん明記されています。
それなのになぜアンドロイドはサラダを食べてしまうのか。
それはアンドロイドの雇い主が
食べるようにすすめるからです。
アンドロイドは。ことに介護型のアンドロイドは
雇い主に逆らわないようプログラムされています。
しかし、アンドロイドの雇い主は
なぜアンドロイドに向かって
「サラダをどうぞ」と言ってしまうのでしょう。
そして、なぜサラダなのでしょうか。
まず、なぜサラダかを考えたいと思います。
たとえばひとり暮らしの老婦人が
夕食にオムレツとサラダを食べるとします。
オムレツはひとつがひとり分ですから
アンドロイドは、「どうぞ」と言われても丁重に断りつづけます。
雇い主の所有物を奪わないプログラムが
ストップをかけるからです。
しかしサラダは取り分けるのが基本ですから
奪うことにはならない。
ここにサラダの落とし穴があります。
次にアンドロイド自身の問題です。
ホスピタリティを必要とする医師や看護師は
「you・あなた」という主語のかわりに
「we・わたしたち」を使います。
介護型アンドロイドの言語も同じようにプログラムされています。
アンドロイドは老婦人の食卓にサラダをお出しするときに
「あなたはサラダを召し上がってください」ではなく
「私たちはサラダをいただきましょうね」と言います。
老婦人は思わずその言葉を繰り返します。
「私たちはサラダをいただきましょうね」
このひと言によってアンドロイドはサラダを食べ
故障してしまうのです。
対策としては
言語プログラムからホスピタリティを抜く、
または自己防衛を強化するなどのアイデアは出ていますが
いずれにしろ多少感じの悪いアンドロイドになることは否めず、
委員会としてもアタマの痛い問題をかかえております。
では発表を終わります。
出演者情報:大川泰樹(フリー) http://yasuki.seesaa.net/