福里真一 2016年1月24日

fukusato1601

サルの自慢の後輩

    ストーリー 福里真一
       出演 遠藤守哉

後輩がメキメキと力をつけ、
自分を追いぬいていこうとするとき、
それに激しく嫉妬するタイプと、
それを心から喜ぶタイプがいる。

サルは完全に後者だった。

人間という後輩が、
文明というものを生み出し、
それをすごい勢いで発展させはじめたとき、
サルは心の底から、感心した。

あの、人間ってやつらは、すごいなあ、と。

そして、人間が、文字を発明したと知っては、
キーキー喜び、
鉄道を発明したと知っては、
キーキー喜び、
スマホを発明したと知っては、
キーキー喜んだ。

まるで田舎のおじいさんが、
都会での孫の活躍に目を細めるように、
サルは、人間の活躍をいちいち喜んだ。

その間、サルの方が何をしていたかといえば、
木の実を食べたり、子孫を増やしたり、
時々、温泉に入ったりしていただけだった。

昨年、とある極東の国で行われた強行採決や、
それに反対する国会周辺でのデモなども、
サルから見ると、
ただただ、すごいなあ、ということになるのだった。

考え方、なんていう抽象的なことをめぐって、
真剣にぶつかりあえる人間ってやつらは、
やっぱりすごいなあ。
こっちは、せいぜい争いといえば、
メスの奪い合いと、バナナの奪い合いぐらいだというのに。
キーキー。

その時、サルの心に、一瞬、
自分たちも、
国というものをつくってみたらおもしろいんじゃないか、
という考えが浮かんだが、
メモをとる手帳もなかったので、
すぐに忘れてしまった。

出演者情報:遠藤守哉 青二プロダクション http://www.aoni.co.jp/

 


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