中山佐知子 2016年11月27日

1611nakayama

門のなぞなぞ

     ストーリー 中山佐知子
        出演 大川征義

風が吹いていた。
遮るものもないだだっ広い荒野に門が並んでいた。
門はざっと100くらいあった。

門には名前がついていた。
カンケイドーブツ門、センケイドーブツ門、ユーソードーブツ門…
カンケイドーやセンケイドーはわからなかったが
どの門もブツ門というからには仏の道なのだと思った。
そうか、本当に俺は死んじゃったんだ。
死ぬと誰でも仏になれるんだ、ラッキー、と思った。

ドーフンドーブツ門、セッソクドーブツ門、
ドーフンドーブツ門は泥の臭いがした。
門を入るとぬかるみの道かもしれない。
セッソクドーブツ門は花の匂いに海の匂いが入り混じっている。
こっちは気持ちよさそうだ。
わくわくしながら門の名前を見てまわった。
モーガクドーブツ門、ナイコードーブツ門
ナンタイドーブツ門…
ナンタイドー….ブツ…。ナンタイドーブツ…
待てよ、ナンタイドーはちょっと引っかかる。
ナンタイドーならいいが、
ナンタイドーブツに分類学の門がつくと
軟体動物門じゃないか。イカやタコだよ。
するとこれは仏門ではなく輪廻転生の門かもしれない。
正しい門を選べば
もういっぺん人間に生まれ変われるってことだ。
イカもタコもある意味では人に愛されていると言える。
節足動物門のエビやカニならもっと愛されると思う。
でも、どうせなら愛されるカニより愛する人間になりたい。
輪廻転生、生まれ変わるならもういっぺん人間になりたい。

俺は門を叩いてまわった。
門には門番がいて、
その門を代表する生き物の名前をいくつか教えてくれた。
軟体動物門の代表はイカ、タコ、貝。
節足動物門の代表はバッタなどの昆虫にエビやカニ。
緩歩(かんぽ)動物門はクマムシ。
クマムシは地球最強の不死身の生物だ。
絶対零度でも死なない。
150度のオーブンに放り込まれても死なない。
水がなくても死なない。放射能でも死なない。
宇宙に放り出されても10日は生きられる。
これには正直、心が揺れた。しっかりしろ、俺。
それから脊索動物門。
この門の代表はホヤにプレシオサウルスだった。
プレシオサウルスといえばジュラ紀の恐竜だけど、
生まれた途端に化石になってしまうってことか?

俺はどの門をくぐればいいのか悩んだ。
いま調べた門の中で
人間に転生できる可能性を秘めた門がひとつだけある。
そこでなぞなぞだ。
イカ、タコの門、バッタとカニの門。クマムシの門、
ホヤと恐竜の門、
この中で人になれる門はどれでしょう。
答を待ってるからね。

出演者情報:大川征義 https://www.facebook.com/masayoshi.okawa?fref=ts


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