「鬼は笑ったのか」 久世星佳

「鬼は笑ったのか」

      久世星佳 

年が明けた。

いや、これを認めている時は
まだ、正確には明けてはいない。

来年のことを言うと鬼が笑う・・

物心ついた時には
意味をちゃんと知ってか知らずか
口にしていた言葉の一つだ。
けれど近頃では
未来は自分で作るもの。
なりたい自分を思い描いて
どんどん言葉にするべし、
という考え方が増えているらしい。

有言実行、ということになるのか。
もし、鬼の目を盗むのなら
不言実行のほうが良さげである。
鬼とは人の心に棲みつくものなのか。
2月には出て行けと豆を投げられ、
鬼の居ぬ間に・・と
その場にいないことをありがたがられ、
昔話のヒール役をもさらりとこなす。

どこかでべそをかいていないか・・
鬼の目にも涙とも言うし、
ちょっと心配になる。

新しい年には
欲や怒りでまみれた赤や青に染まった体を
少し淡い色にしてみたらどうだろう。

そんなことを考えていたら
お前たちこそ・・
と言う声が
笑い声と共に聞こえてきた。

そんな気がした。

.
作・出演:久世星佳  ARTScompany https://earts.jp/artist/seika-kuze/


ページトップへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA