かんな2025 春
かんなは小学3年生である。
ジャンガリアンハムスターの
モノマネが得意な
どこにでもいる小学3年生だ。
将来は
チームラボをつくる人になリたい、
と言っている。
朝は「ZIP」をつけていて、
7時54分になると
「めざましテレビ」に変える。
で「きょうのわんこ」を見る。
犬が好きなのだ。
一番好きなのはブルドッグ。
理由は「人間みたいな顔をしてるから」
夏。
2024年の夏はパリオリンピックがあった。
もちろんパリには行っていないが、
毎日テレビでオリンピックを見ていた。
TOKYO2020の時は
まだオリンピックに
興味がなかったので
パリがオリンピックデビューになる。
スケボー、柔道、フェンシング、バレー、ブレイキン。
ルールはわからなくても
日本選手が勝つと大喜びしていた。
体操の鉄棒を見ていた時、
急に「ひらめいた!」という顔で
「ということは、橋本大輝は
空中逆上がりを何回もやってるってこと?」
と言っていた。
自分ができなかったことに
置き換えてみたら、
そのすごさが実感できた!
という瞬間の表情だった。
パリオリンピックの影響は
国語のテストにも出ていて、
「国」という漢字の部首を書く問題で
「くにがまえ」と書かなければ
いけないところで、
「がいせんもん」と書いていた。
間違いではあるのだが、
部首名「がいせんもん」はかっこいいので、
いつか採用していただきたい。
そのテストでは、
「百円玉」と書くところで
「百点玉」と書いていたり、
「近所の行事に出る」を
「近所のいくじに出る」と読んでいたり、
漢字の画数を書く問題で
「九画」を「丸画」と
漢数字を書き間違えて
バツになったりしていた。
ケアレスミスの多い人生に
なりそうである。
近所の市民プールに行った時、
併設されているバイキング形式の食堂で
昼ごはんを食べたのだが、
「わたしクルトンが好きなの」
と言って、
サラダのトッピングのクルトンを
茶碗一杯に入れて食べていた。
安上がりでよろしい。
食費には困らなさそうである。
一緒にとうもろこしの皮を
むいていた時は、唐突に
「つちのこみたい」
と言うので、
なかなかいい感性だぞ、と思い
「いいね」
と言ったら
「まちがえた。たけのこだ」
と言っていた。
つちのこの方が良かった。
秋。
「かんなキンモクセイのにおい
あんまり好きじゃない。
ちょっとくさいにおいする」
と言うので、
キンモクセイの匂いが嫌いな人も
いるんだなあ、と思っていたら、
「あ、キンモクセイじゃなくて
ギンナンだったかも」
と言い直していた。
多分ギンナンだろうと父は思った。
玄関の前にショウリョウバッタがいて
そのシュッと尖った外見に驚き、
「かんなバッタってもっと
トノサマバッタみたいな
ぶっといオクラみたいなのだと思ってた」
と言っていた。
トノサマバッタは
ぶっといオクラ。
とてもよい。
「今日学校でバレー見たの。体育館で」
と学校であったことを教えてくれた時、
「どうだった?」
と尋ねると
「パイプ椅子に座ったよ」
と教えてくれた。
詳細に説明するポイントが
ややずれているが、
楽しそうだからよかった。
学校公開で授業参観にいった時、
壁に貼ってあった絵のタイトルが
他の生徒は
「くさもち」とか「トゲトゲの花」
だったのだが、
かんなだけ
「朝と夜、くもりと風のお友だち」
という、妙にポエムなものだった。
意味はよくわからなかったが、
父はなんだか誇らしかった。
そろばん教室で川柳を募集していて、
「みとりざん なんどやっても にじゅってん」
というのを書いて出したら、
佳作に選ばれていた。
経験から生まれたメッセージは強い。
そろばんの他には
テニスも3年ほど習っているのだが、
その日の感想や反省を書く
テニスノートに
「しりもちはいたい。きをつける」
と書いていた。
3年目に気づくことではない気がする。
また、テニスがあった日に
「来週、野生のコーチなの」
と教えてくれたので、
「野生のコーチ?」
と聞いたら
「野生のコーチ」ではなく、
「学生のコーチ」だった。
野生のコーチを見たかったので残念である。
冬。
「年末っていつ?」
と聞くので
「年末は一年の最後」
教えてあげた。
「一週間の最後は週末って言うでしょ」
と付け加えると、
「なるほど」と納得したような顔をしていたので、
「じゃあ月末はいつ?」
と逆に質問してみたら、
「月曜日の最後!」
と言っていた。
全く理解していなかったようだ。
正月の朝。
「かんな初夢すごくいい夢を見たの!」
と興奮した顔で起きてきたので、
どんな夢か聞くと
「5円玉が2枚出てくる夢」
と言っていた。
お金が好きなのだ。
お年玉をあげた時は
「かんなちゃんペラペラのお金だーいすき」
とうれしそうにお札をひらひらさせていた。
箱根駅伝を見ながら、
「これは夜も休まずに走ってるの?」
と聞くので、
「昼だけだよ」
と教えてあげたら、
「じゃあ自分がここまで走ったって
ところを覚えているの?」
と不思議そうな顔で聞いてきた。
日没になると、今日はここまで、
という仕組みではない、
ということを丁寧に教えてあげた。
カードゲームをやっていて、
どうしてもぼくが勝ってしまうので、
かんなに有利な条件を提示したら
「そんなことしたらずるずるしくなっちゃう」
と言っていた。
「ずるずるしくなる」は
新語としてぜひ辞書に載せて欲しい。
スーパーで売ってる焼き芋が好きすぎて、
芸人の紅しょうがを見て
「なんだっけこの人たち、べにはるかだっけ?」
というくらいにさつまいもを愛している。
ある時は唐突に
「ものごころがつくって何?」
と聞かれた。
「世の中のいろんなことがわかってくるってことかな」
「じゃあ、かんなはものごころついてる?」
「そうだね」
とぼくは言いながら、
もうものごころついちゃったんだな、
と感慨深かった。
とはいえ、
風呂上がりに
第九のメロディで
「おーばか かんなが ララララ ラーララー」
と歌いながら出てきたり、
素っ裸の兄を見て、
「お兄ちゃん、おちんちんの後ろに
2個ポケットがあるよ」
と言っていたり、
まだまだものごころがついたわりには
幼いので安心している。
また、春が来る。
かんなは四年生になる。
集団登校の副班長をやるらしい。
最後尾を歩く係だ。
遅れないように歩いて欲しいと思う。
出演者情報:齋藤陽介 03-5456-3388 ヘリンボーン所属
かんな 2024夏:https://www.01-radio.com/tcs/archives/33031
かんな 2023冬:https://www.01-radio.com/tcs/archives/32901
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