奥入瀬ライトアップ

「奥入瀬ライトアップ」

     ストーリー 伊藤恵
        出演 清水理沙

今年の夏休みは、奥入瀬渓流のライトアップをご覧になりませんか?

それは早朝、日が昇ると同時にスタートします。
日本一のブナ林と清流が織りなす朝日のライトアップです。

まわりの木々を従えるひときわ大きなブナは、
樹齢400年、幹回りが6メートルの巨木。
三本に分れた木には神が宿るという言い伝えによって
「森の神」と呼ばれています。

その「森の神」が見守るブナ林は、
川の流れが緑に染まり、そこに朝日が降り注ぐと、
渓流がライトアップされているようにキラキラと輝きだすのです。

見どころは、つぎつぎと移り変わる輝きの色。
陽が昇るにつれて青みがかった緑だった輝きは、
どんどん鮮やかになっていきます。
朝日が昇り切るころには、渓流全体が
まばゆいエメラルドグリーンの輝きに満ち溢れるでしょう。

夏休み、たまには早起きもいいものです。
川の水で顔を洗えば、毛穴が引き締まるほどの冷たさで、
眠気もきっと吹き飛びます。

皆様のお越しをお待ちしております。

東北にいこう。


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未来をのぞくなら、南三陸へ

「未来をのぞくなら、南三陸へ」

     ストーリー 丸原孝紀
        出演 地曵豪

目がついたモアイは、世界にたった二つしかない。

ひとつは、チリのイースター島。
もうひとつの居場所は、なんと日本の南三陸。

貴重なモアイが日本に渡るきっかけになったのは、
1960年に南三陸を襲った、チリ地震津波だった。

41人の命と、
1000戸近くの住まいを奪った、大きな津波。

その被害から立ち直った人々を讃えるべく、
30年後の1990年、チリ人の彫刻家の手によるモアイ像が、
イースター島から南三陸に贈られた。

そして2011年。
南三陸は、再び大きな津波に襲われる。
その被害は、かつてのチリ地震津波をはるかに上回る
被害をもたらした。モアイも壊され、流された。

その知らせを聞いて、
93歳の老彫刻家は言った。
「海に破壊された日本の町に、人々が再びそこで
生きたいと思えるようなマナを与えるモアイを彫ろう」。

マナとは、イースター島の言葉で「霊力」を意味するもの。

命を削るように彫られたモアイは南三陸に贈られ、
老彫刻家の手で、目が入れられた。
目を入れると、モアイにはマナが宿るのだ。

イースター島の言葉で「未来に生きる」という意味を
あらわすモアイ。

時を超え、距離を超え、
南三陸に渡ってきたモアイと目を合わせて、
あなたも、未来をのぞいてみませんか。

東北へ行こう。


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秋田美人

「秋田美人」

       ストーリー 福井徹
          出演 齋藤陽介

あなたは、ご存知だろうか。
秋田の山奥に、絶世の美女がいることを。

県のほぼ中央に位置する太平山自然公園。
その中を流れる馬場目川の上流域、
手つかずの自然が残る渓流で、
その美女はひっそりと静かに暮らしている。

彼女の名前は、ヤマメ。
漢字では「山」の「女」と書く。
木の葉模様を持ったスレンダーな体が、僕たち釣り人を虜にする。

渓流の、ジェットコースターのような流れに
生まれた時から鍛えられている彼女は、
体長30cmそこそことは思えない力で糸を引っ張る。
急いで強く引きすぎるのは禁物。
相手が疲れて、根を上げるのを待つんだ。
大切なのはタイミング。焦らずじっくり。
まるで、恋の駆け引きだ。

ジリジリ近づく彼女の姿を、ついに肉眼でとらえる。
「いける。」
そう思った、次の瞬間だった。
彼女は水面から飛び出して、激しいしぶきと共に体をひねった。

詰めが甘いのが、昔からの悪い癖。
竿の先の重みは、すっと消えていた。

なかなか釣れない、山奥に住む秋田美人。
また来年も、この場所で。
東北へ行こう


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秋田県のイワナとヤマメが釣れる渓流:
http://touhokutarou.dee.cc/3-iwana-akita.htm

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ゲンジボタル

「ゲンジボタル」

        ストーリー 田村友洋(ともひろ)
           出演 地曵豪
       
ぼくは宮城県の天然記念物、ゲンジボタル。
生まれは岩手県との県境にある登米市(とめし)。
市の中心を流れる鱒渕川の浅瀬が僕らの町。

梅雨が明ける6月の終わり。
まだ蒸し暑さが残る夕暮れどきから、仕事に出かけます。
人生をかけた仕事、フィアンセ探し。
意中の相手に振り向いてもらえるよう、光で精一杯話しかけます。

実はこの光、地域によって光る周期が変わるのです。
光の方言とでもいいましょうか。
ぼくのいる東日本では4秒に1回、西日本では2秒に1回光ります。
西日本の方がおしゃべりな蛍が多いのかもしれませんね。

川辺に人が集まってきました。
天然記念物になっている僕たちにはサポーターがいて
僕たちが生きやすい環境を守ってくれています。
観光客がイタズラをしないようにパトロールをするのも
サポーターの皆さんです。
毎晩のように僕たちの数をかぞえ、全国に発信してくれます。
そして僕らにとってはプロポーズを見守ってくれる証人でもあります。

百数十匹の仲間たちが一斉に飛び始めました。
川面や茂みの上をふわりと光の曲線を描いています。
ぼくもゆっくりしていられません。
期限はおよそ1週間。
好みの蛍に出会えますように。

東北へ行こう。


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村は消えても

「村は消えても」
 
           ストーリー 矢谷暁
              出演 遠藤守哉

その日、村長は一夜にして市長になった。

岩手県 岩手郡 滝沢村。
盛岡市の北西にへばりつくように隣接し、
新幹線の停まる盛岡駅からわずか5キロの村だった。
2014年1月1日。
それまで「人口日本一の村」だったこの村は
地図上からその名を消す。
滝沢村から、滝沢市に昇格したためだ。

「ご注意ください。道路標識の変更は1万か所を超えています」
「お間違えなく。郵便番号は5種類から139種類に増えました」
しかし、そんな呼びかけも馬耳東風、
馬の耳に念仏とばかり聞き流す市民もいる。
いや、正しくは市民ではない。馬だ。

代々、馬と人々がともに生活してきた滝沢。
なにもかもが変わったが、変わらず続く行事もある。
「チャグチャグ馬コ(うまっこ)」という祭りだ。

毎年6月の第2土曜日、蒼前(そうぜん)神社から盛岡八幡宮まで、
100頭を超える馬が、13キロの道のりを4時間かけて行進する。
馬たちは色とりどりの装束とたくさんの鈴で飾り付けられ、
歩くたびにその鈴が「チャグ、チャグ、チャグ」と音を立てる。

今年のチャグチャグ馬コは、6月14日。
練り歩く道路では、標識がいたる所で変更されている。
人々にとっては大きな変化だったが、
馬たちの目にはちょっと新しい景色に映るぐらいで、
いつものようにのんびり道を行くことだろう。

晴れれば祭り見物には半袖が気持ちいい。
村から市へその名を変えても
人と馬が変わらず寄り添い続けるこの地に、
もうすぐ夏がやってくる。

東北へ行こう。

 

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盛岡タウン情報http://www.morioka.ne.jp/index.htm

盛岡観光情報http://www.odette.or.jp/

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光る塩辛

光る塩辛

       ストーリー 沢辺香(さわべかおり)
          出演 平間美貴

近所のスーパーに
めっぽう美味しいイカの塩辛がありまして、
見かけるたびに買っていました。

小さめのビンに「いかの塩辛 無添加」という
名前と材料をそっけなく記しただけのラベルが巻いてあり、
プラスチックの蓋をぽん、と開けると
口一杯までワタの肌色です。
新鮮な半透明の身が甘苦いワタにからんで
くたりとしているところをつまみ出しては、
冷酒のあてやお茶漬けにして
いつも幸せな気持ちで食べました。

東日本有数の、三陸の漁港には、
トロール漁法で揚がったスルメイカがあふれ、
太った胴体が朝日でぴかぴか光るそうです。
売り場にいつもあるわけではないのは、
「いいイカが獲れた時に百本だけ作るから」
とのことでした。

その塩辛を、あの日から見なくなりました。

ですが先日、
台所の奥からあのビンが出てきて、
以前は見過ごしていた文字が目に入ったのです。
「石巻漁港 謹製」。
そうです、あの塩辛は
石巻の心意気から生まれた塩辛でした。

石巻はいま、
地元のひとの努力で、港にも活気が戻りつつあるとききます。
私は久しぶりにぴかぴかの塩辛が食べたくなりました。

だから近く、石巻へ行ってこようと思うのです。

東北へ行こう。


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