猫の墓
ストーリーと絵 ポンヌフ関
出演 遠藤守哉
散歩の途中夕立にあって急いで帰宅したとき
引き出しがあいて、妙な物が出てきた
お、おまえは?
「吾輩は 猫 型ロボットである
名前はまだない」
猫が、、、しゃべった!
私はその頃大学の教師をしていたが
教師というものがほとほといやになっていた
「気晴らしに
小説なんか書いてみたら どうかな?」
いや私もね、
英国に留学して英文学を研究したんだが
いざ自分で書こうとすると全然ダメなんじゃ
猫は腹にカンガルーのような袋を持っていて
そこから何かを取りだした
「なりきり文豪ペン!
これを使えば100年後にも残るような素敵な文章が書けるんだ」
私はその晩一気に書き上げた
この不思議な猫を主人公にした話を
友人の正岡子規に褒められて 世に問うと 大喝采を受けた
このペン最高だね
かくして彼は流行作家となった
小説の最後ではビールにおぼれさせて猫を殺してしまったが
その後も猫とペンと私は快進撃
しかし、三四郎を書いているときであった
「諸般の事情でもう帰らなきゃいけなくなったんだ
このペンも返してもらうよ」
それは困る
バキッ
な、なんということを
「大丈夫、これはただのおもちゃのペン
あんたは最初から自分で書いたんだよ
もう一人でやっていけるさ」
待ってくれ ね、ねこー!猫型ロボットー
名前を
付けておけばよかった
私は偽の猫の死亡通知を知り合いに送り
庭に墓を作った
この下に
稲妻起こる
宵あらん
夏目漱石が猫の死に添えた句といわれている
散歩の途中夕立にあうと あやつ どうしておるかと 思い出す
夏目漱石享年49歳
猫との出会いが無かりせば
名もなき英語教師で終わっていたであろう
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出演者情報:遠藤守哉(フリー)
動画制作:庄司輝秋