シチリア島は一年365日
シチリア島は一年365日のうち360日が晴天の島だが
オリーブの木はこんな乾いた気候と仲良しで
ところによっては千年も長生きをする。
千年も昔といえば、島はイスラムの領土だった。
当時のイスラムは世界の先進国で
新しい農業技術が持ち込まれ、ヨーロッパにない果物が実った。
政治はシンプルで、税金は公平だった。
いい時代に生まれたとオリーブの木は思っただろう。
それからバイキングの末裔がやってきてシチリア王国を築いた。
彼らは少なくとも文化や言語、宗教に関しては寛容だった。
彼らはフランス語をしゃべっていたが
ギリシャ語もアラビア語も国の言葉と認めた。
しかし100年もするとお家騒動が起こり
ドイツの皇帝がシチリア王になった。
13世紀にはフランスとスペイン、イタリアが
シチリアをめぐって争った。
問題は、たぶんここから先だ。
シチリアは、ピンボールのように争いのなかで転がりつづけ、
搾取された。
オリーブの木にとってご領主さまが誰でも関係なかったが
それはオリーブの世話をする村人にとっても同じことだった。
どのご領主さまも年貢には厳しかったし、
過酷な取り立て人がやってきては
払えないと木を伐られたり家畜を殺されたりもした。
しかし、その取り立て人が年貢のピンハネで財を蓄え、
村のボスにのし上がると、
こんどはご領主さまに逆らって実質的な権力を握った。
これがシチリアのマフィアのはじまりだそうだ。
19世紀の終わり頃、
シチリアはイタリアに併合されたが
貧しくて学校へ行けない子供らは
イタリア語をしゃべれず、読み書きもできず、
手っ取り早い出世を夢見てマフィアに身を投じた。
ゴッドファーザーⅡには
主人公が両親と兄を殺したシチリアのマフィアに
復讐をするシーンがあるが、
そのとき主人公の表向きの商売はオリーブオイルの輸入業者だった。
出演者情報:大川泰樹(フリー) http://yasuki.seesaa.net/