冬の会津から 3 酒屋

冬の会津から3  酒屋

          ストーリー 小室市太郎
             出演 大川泰樹

ここにまずい酒はないよ。
酒屋のおやじが無愛想に言った。

きっと、どれもお薦めということなのだろう。
ここは造り酒屋ではなく、ごく普通の、町の酒屋だ。

この無愛想、慣れない人は、気後れしてしまいそうなものだが
自分の目利きに間違いない、というおやじの自信
会津人特有の頑(かたくな)で、シャイな気質を読み取れば
どうってことはない。

店には会津の地酒がずらりと並ぶ。
奈良萬、会津娘、國権、飛露喜、会津中将、
宮泉、名倉山、まだある・・・。
都会ではお目にかかれない逸品もそろっている。
この酒屋、日本酒以外の酒をいっさい扱っていないところにも
おやじのこだわりが伺える。

選びかねている僕に、おやじが助け舟を出す。
これ、いいよ・・・。
無愛想が、一升瓶を突き出している。
それは、今年の新酒だった。冬は新酒の季節なのだ。

今年の一番を試してみる。たしかに、うまい。
振り返ると、だろ、というように、おやじが無言で頷いていた。

会津にはいい酒がある。
そして、会津の酒は、会津で飲む方がうまいと思う。

福島県酒造協同組合http://www.sake-fukushima.jp/

Save the 東北の酒http://save-sake.com/

植木屋酒店http://www.uekiya.net/
 *動画の写真を拝借しました。ありがとうございます


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藤本宗将 2011年11月20日

リセット

         ストーリー 藤本宗将
            出演 大川泰樹

気がつくと5人は後ろ手に縛り上げられ、
膝をついて座らされていた。
暗いために彼らの表情までは読み取れないが、
長く伸びた頭髪はひどく乱れており
激しく抵抗したことを示していた。
しかし今はみな声を発することもできず、
ただ恨めしそうに襲撃者たちを見上げている。
自分たちがなにをしたというのだ。
深くくぼんだ眼窩の奥で、眼がそう訴えていた。
森の中から眩しい光とともに
突如現れた異形の集団は
見たこともない銀色の服を身にまとい、
見たこともない武器を肩からさげていた。
どうやって捕えられたのか、まさに一瞬の出来事だった。
「悪く思わないでくれ。
君たちに罪はないが仕方ないんだ」
銀色の連中のうち、
リーダー格とおぼしき1人がそう話しかけた。
しかしあくまでもその口調は、
相手との会話を望んでいるようには思えない
きわめて一方的なものだった。
判決理由を言い渡す裁判官のように、男は淡々と続ける。
「それのせいさ」
男は傍らの焚火のほうに視線を向けた。
表情は冷ややかなままだが、
瞳に映ったオレンジ色の炎がぎらりと光った。
「君たちが火を手に入れたことで、
人類は文明を飛躍的に発達させた。
しかしそれは人類自身を狂わせもした。
われわれとしては、
破滅を回避する必要があったんだ。
そのために、この時代へと送り込まれたんだよ。
もういちど進化をやり直せば、
違う道を歩むことができるかもしれないからね」
いったいなんなのだ?こいつはなにを言っている?
5人に理解することはできなかったが、
動物的本能が身の危険を告げていた。
縛られたまま必死で叫んだものの、
それは言葉にならない。
やがて5発の銃声がひびきわたると、
森はふたたび深い闇と静寂に包まれた。
そのままにされた焚火の残り火が、
あたりを弱々しく照らしていた。
1929 年に北京市房山区
ぼうさんく
周口店
しゅうこうてん
で発掘された
約78 万年前の人類は、考古学者によって
「ホモ・エレクトス・ペキネンシス」と名付けられ、
その周辺からは、ほぼ完全な頭蓋骨5個と
彼らが火を利用していたことを示す跡が発見された。
しかしその化石骨のすべては、
第二次世界大戦の混乱の中で忽然と消えてしまう。
まるで、もとより存在しなかったかのように。

出演者情報:大川泰樹 http://yasuki.seesaa.net/  03-3478-3780 MMP

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八戸みろく横丁

八戸 みろく横丁
          ストーリー 葛西洋介
             出演 大川泰樹

イカが透き通っています。

朝穫れのイカ、夕穫れのイカ、
地元の漁師さんは
イカは少し時間を置いた方が甘くなるといって
朝撮れのイカを夕方に食べるのが好きだそうです。
醤油には肝を混ぜます。
新鮮でないとこんな食べかたはできません。

八戸市内の屋台村、みろく横丁は
細い路地を挟んで左右に20を超える屋台が並びます。
カウンターのみ、7席しかない店のメニューには
これでもかと魚の名前が並んでいます。
ホワイトボードに八戸が凝縮しているようです。

押し合いへし合いの狭い店で
量の多いひと皿を出されると
つい隣の人にどうぞとすすめてしまいます。
この狭さが、お客同士を仲良くさせるシステムに
なっているのでした。

今日、地元民に人気だったのは「どんこ」と呼ばれる
エゾイソアイナメの刺身。
これにもとびきり新鮮な肝がついていました。

青森はおいしい。

みろく横丁http://www.36yokocho.com/

八戸ど〜楽http://www.ukipal.jp/asayokosen/index.html


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ふるさとにチカラを/ふるさとに元気を

声:大川泰樹

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小松洋支 2011年9月11日


スノーホワイト

          ストーリー  小松洋支
             出演 大川泰樹

容疑者が入ってきた。
ひどく小柄な男で、耳までかくれる帽子をかぶり、
季節はずれのマントにブーツをはいている。
革製の大きな袋を肩にかついでいる。
よじ登るように椅子にすわると、上目遣いに刑事を見た。

「まず住所、氏名、年齢を聞こうか」
男は黙っている。

「黙秘かね。まあいい、続けよう。
きみの容疑は、こうだ。
家出少女をマンションの一室に誘いこみ、数週間にわたって監禁した」
男は黙っている。

「しかるのち、ブラックアップルと呼ばれる薬物を大量に服用させ、
少女を昏睡状態に陥らせた。
眠った状態のままバイヤーに売り渡される少年少女はあとを絶たない。
バイヤーは闇ルートで彼らの体を金に替える。
おそらくは臓器を抜き取って外国の薬品会社にでも売るんだろう。
その金目当てできみは少女を眠らせた」

「・・・違う」
ひとりごとのように男がつぶやいた。

「ほう。口をきいたな。
どこがどう違うというんだ?」
刑事は数センチの距離まで顔を近づけて、男の目をのぞきこんだ。

「たしかにオレは、スノーホワイトにブラックアップルを飲ませた。」
喉から絞り出すような低い声で男は話し始めた。
「女友達を使ってダイエットに効く薬だと信じ込ませたんだ。
だが、金のためなんかじゃない。
やつらから彼女を守って、オレだけのものにするためだ」

「やつらとは誰のことだ?」
刑事は苛立たしげに眉をひそめた。

男は真っ青な顔で立ち上がると、革袋の紐をほどき、
手をつっこんで首をひとつ取り出した。
「こいつは卑怯なやつだった」
床に転がし、次の首を取り出す。
「こいつは冷酷なやつだった」
「こいつは嘘つき」 「こいつは金の亡者」
「こいつは淫乱」 「こいつはサディスト」
首は全部で6つあった。

「オレは、こいつらからスノーホワイトを守って、
このオレだけのものにするために、彼女を眠りの中に封印した」

壁際まで後ずさりした刑事は、怯えた表情で男を見ていた。
男はゆっくり刑事に歩み寄ると、足元からその目を睨みあげた。
「いいか。スノーホワイトはオレだけのものだ」

ゴトンと音がしてその手から革の袋が床に落ち、
袋の口から血のついた金髪の王子の首がのぞいた。

出演者情報:大川泰樹 http://yasuki.seesaa.net/  03-3478-3780 MMP

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山元町の大工さん



山元町の大工さん

            ストーリー 星 智城(東北芸術工科大学)
               出演 大川泰樹

宮城県・山元町
私の実家のある宮城県仙台市から海沿いを南に車を走らせると
山元町はあります。

山元町は緑豊かな水田に囲まれた海の町です。
冬にはホッキ祭が行われ、県内外から多くの人が 訪れます。
私の父の友人の大工さんが住んでいたため、
父に連れられ私は幼少期からしば しば山元町を訪れていました。
海岸に座り家族で食べたお弁当の味は今も忘れません。

今年の 3 月、東日本大震災で山元町は大きな被害を受けました。
2 方向からの津波を受け住宅は壊滅し、多くの死者が出ました。
父の友人の大工さんの家も跡形もなく流されたそうです。

私はその話を聞き、父と共に数年ぶりに山元町を訪れました。
そこには町はありませんでした。
まるで爆撃を受けたかのようなそんな印象でした。
その後大工さんに会いに 行きましたが
実際に被災し家を失った人を前にして、
私は何の話をすればいいのか、
どんな言葉をかければいいのか分からなくなりました。
しかし大工さんは笑っていました。
「家は無くなったが命は助かった。何とかなる。」
そう 言って笑っていました。

山元町は笑顔の素敵な人の住む海の綺麗な町です。

亘理山元商工会http://www.watayama.miyagi-fsci.or.jp/kanko.html




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東北の旅館復興プロジェクト「種」http://save-ryokan.net/

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