花言葉に誘われて
ストーリー 一倉宏
出演 松永玲子
ほんとうかどうかはしらないけれど
花屋の店員さんたちは こっそりと 花言葉で話しているらしい
たとえば こんなぐあいだ
「うちの店長って<ヤマブキ>すぎると思わない?
<アマリリス>があるのはいいんだけど もうちょっと
<赤いフリージア>だったら <ツユクサ>なんだけどなあ」
これを解読すると こうなる
「うちの店長って<ヤマブキ>=気品が高、すぎると思わない?
<アマリリス>=誇り、があるのはいいんだけど もうちょっと
<赤いフリージア>=愛想のよい、だったら
<ツユクサ>=尊敬、なんだけどなあ」
ということは
酒屋の店員さんたちは こっそり 酒言葉で話しているだろうか
「うちのおやじさん <シングルモルト>だからね
それも なんちゅうの かなり<アイレイ>入ってるし
それにくらべると おかみさんは<チリワイン>だよなあ」
でも これは解読しやすい
「うちのおやじさん <シングルモルト>=生一本、だからね
かなり<アイレイ>=癖の強さ、入ってる
おかみさんは<チリワイン>=気さくで庶民的、だよなあ」
魚屋の店員さんたちの話す 魚言葉は どうだろう
「うちの若旦那 <イナダ>でしょ 養殖の
おやじさんみたいな<マグロ>は もう<トラフグ>でね
いくら<イクラ>だって <ウニ>だよ」
「若旦那は <イナダ>=出世魚のまだ2番目 養殖のボンボン
おやじさんは<マグロ>=まっすぐにしか進まないひとで
もう<トラフグ>=すぐ怒る
いくら<イクラ>=大事な卵だって <ウニ>=痛い目にあう」
そして 文房具屋の店員さんたちの話す 文房具言葉
「このあいだ 合コンで会った<三角定規>
もうかなり<36色の色鉛筆>でさ おまけに<コンパス>
結局は<消しゴム> しょせんは<カートリッジ>だった」
八百屋の店員さんたちの話す 野菜言葉
「<ダイコン><ダイコン> そんなに<タマネギ>だって
<ピーマン>でしょ もっと<長ネギ>で<ナス>」
これも わかる気がする なんとなく
だから やっぱり いちばんむずかしいのは 謎なのは
花屋の店員さんたちの話すという あの 花言葉だ
どうぞ あなたの<アイリス>が
<ラッパスイセン>でありますように
出演:松永玲子 03-3359-2561オフィスPSC
動画制作:庄司輝秋・浜野隆幸