清水理沙から「ひと言」

みなさま、こんにちは。
清水理沙です。
ご無沙汰をしております。
ほぼ一年ぶりに、出演させていただきました!

今回、岩崎亜矢さんの『経験』、
東北へ行こうでは、細田佳宏さんの『時速320kmのはらこ飯』、
鈴木萌水さんの『冬のあたたかい思い出』を読ませていただきました。
ぜひ聞いてください。

久しぶりの収録だったので、
わくわくと緊張感でいっぱいの収録でした。

中山さんとは、小学校5年生のときに
初めてのラジオCMの収録でお会いして、
それからお世話になっています。
(14年程経ちました。あっという間です…)

今も声の仕事を続けていますが、
子供の頃からコンスタントに呼んで下さった方って、
中山さんだけなのではないか…と、ふと思ったりもしました。
いろいろと見守って下さっていて、ありがたいです。

写真は、このあいだ何気なく撮った、渋谷の空です。
歩きながら撮ったのでブレブレです…。
夏に逆戻りしたような、暑い日でした。
暑いのは苦手ですが、夏が終わると、
やっぱりさみしい気持ちになります。

清水理沙:http://ashley-r-senzatempo.seesaa.net/

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岩崎亜矢 2013年10月13日

経験

      ストーリー 岩崎亜矢
         出演 清水理沙

私は少女である。
世の中は私に要求する。
無垢で、純粋で、まっさらであることを。
私は少女である。
私は確かに、無垢で、純粋で、まっさらである。
弾力のある頬。
スカートからのびる、生白いふたつの脚。
脱色もパーマも経験はなく、
重みのある黒髪は風にさらさらとなびく。
不安と無知とを抱えて、私は世界へと飛び出す。

教えてあげよう。
あなたは自信たっぷりの表情で、私に話しかけてくる。
ナイフとフォークの使い方も。
タクシーの止め方も。
逃げ方や避け方、隠れ方も。
世界のなりたちを、教えてあげよう。
男を愛する男がいて、女を憎む女がいる。
声を出さずに泣く人がいて、嘘から流れる涙がある。
見えているものも、見えていないものも、
ぜんぶ教えてあげよう。

私は気付く。
私は大きな画用紙。絵筆を持って彼らは待っている。
私は私に要求をする。
食べ尽くそう。飲み込もう。
私がこれから知るもののすべてを。
私がこれからおぼえることのすべてを。
何も知らないという武器を手放すかわりに、
私は私に要求する。
私は世界に要求する。
両手をめいっぱい広げたら、私から待ち伏せをする。

出演者情報:清水理沙 アクセント所属:http://aksent.co.jp/blog/

 

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西島知宏 2012年11月23日

「9枚と1枚の写真」

        ストーリー 西島知宏
           出演 清水理沙

12月24日クリスマスイブ、私のハタチの誕生日は残業で終わった。

なんで誕生日に残業しないといけないんですかぁ」

  SE:ピロリロリン(携帯のメール着信音)

誰?」
LINEで画像が届いていた。

な、何これ・・」

10年前病気で他界した母のヒツギに入れた、
母が写った10枚の写真の1枚目だった。
写真嫌いだった母の、珍しく笑った写真。

どうして?」
使い捨てカメラで撮った写真。ネガもデータもなかったのに・・
プロフィールを確認した。私と同じ名前「優子」と書いてあった。

私?
 
   SE 携帯操作音
「どうしてこれを持ってるんですか?」
メッセージを送ることにした。

  SE:ピロリロリン(携帯のメール着信音)

届いたのは私が「内緒だよ」と言わんばかりに
カメラに向かって鼻に人差し指を添えてる写真だった。
棺に入れた10枚の大好きな写真の2枚目だった。

何これ・・。写真を持ってるか内緒、そういう意味?

  SE メールの操作音
「あなたは一体誰?」
送信…

返信はなかった。時計の針は24時を回り、翌日になっていた。

× × ×
その不思議な誕生日以降何度も、
写真の差出人にメッセージを送ったが、返事は来なかった。
不可解だとは思いながらも、
私は次第に仕事の忙しさに紛らわされ、
「妹のイタズラだろう」くらいに、その日を忘れるようになっていた。
次の誕生日を迎えるまでは・・。

× × ×

翌年の誕生日、高校の同級生と居酒屋で飲んでいる時だった。
  SE:ピロリロリン(携帯のメール着信音)
まただ
母のヒツギに入れた大好きな10枚の中の3枚目、
1歳の誕生日に
私がバースデーケーキのろうそくを吹き消しているものだった。」

友達と別れて妹に電話した。妹のイタズラかどうか確かめたかった。

 SE:プルルルル「留守番電話サービスに接続致します」

妹じゃないのだろうか。

  SE メール操作確認音とともに):
「あなたは一体誰?」
送信・・

返信はなかった。時計の針は、また24時を回っていた。

× × ×

つぎの誕生日も、そのつぎの誕生日も、
毎年1枚づつ、母の棺に入れた大好きな10枚の写真が
重ねた順番に届くようになった。
私は、1年に1枚のその写真を楽しみにするようになっていた。
イタズラかもしれない。だけど・・。
毎年誕生日にくる一枚の、メッセージのない写真。
その素っ気なさがシャイだった母の行動にも思えた。

× × ×
29回目の夏、母が他界した年に付き合い始めた彼氏が去っていった。
涙で目の前が見えなかった。
母の変わりに私のそばにいてくれた彼。
かけがえのない存在がまた、私の前から消えた。
気がついたら私は、
毎年誕生日に、順番に送られて来た9枚の大好きな写真を眺めていた。
そして・・誕生日じゃない、帰ってこないのはわかってるけれど、
辛くて、あの差出人にメッセージを送った。

「ママ、死にたいよ、ママの所に行っていい?」

  SE:ピロリロリン(携帯のメール着信音)

10枚目に重ねた写真だった。
最後の写真。それは大好きな写真じゃなく、大っ嫌いな写真だった。

裏山の用水路で遊んでいた私を母が叱りつけている写真。
父が隠し撮りしたものだった。
大っ嫌いで持っていたくなかったから、最後に入れた写真だった。

SE:ピロリロリン(携帯のメール着信音)
SE:ピロリロリン(携帯のメール着信音)
SE:ピロリロリン(携帯のメール着信音)
SE:ピロリロリン(携帯のメール着信音)

何枚も、何枚も、同じ写真が届いた。
何枚も、何枚も、何枚も、私が怒られていた。

わかったよ、死んじゃだめなんでしょ、わかったよママ。」

9年前届いた一枚の写真。
それは、この日が来る事を知っていた母の、
計画の始まりだったのかも知れない。

出演者情報:清水理沙 アクセント所属:http://aksent.co.jp/blog/

 

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清水理沙から「ひと言」

こんにちは、清水理沙です。

今回は、西島知宏さん作「9枚と1枚の写真」を読みました。
家で初めて読んだ時、うるっときて涙がでました…。
素敵なお話なので、ぜひ聞いてください。

この間、といっても半年前になりますが、
中山さんが収録記で書いてくださったように
ランダムハウスと私の事務所は近いんです。
マネージャーさんと飲みにくれば、と誘って頂き半年…。
ようやく実現しそうです。
中山さん、ありがとうございます!

3年程前にTokyo Copywriters’ Street のライブ
出演させて頂いた時ランダムハウスへ初めて行ったのですが、
私は方向音痴なので、
この場所がどこの駅に近いとか把握していなかったのです…!

今年初め私の事務所が移転し、
地図を見ながら向かっていたら、
ランダムハウスの看板を見つけて興奮したのを覚えています。
ここだー!ここにあったんだー!と心の中で叫びましたが
喜びも束の間、事務所へ行くのに長い時間迷ってしまいました。
方向音痴は悲しいものです…

ですが、もう場所はバッチリです。
きちんと覚えました。
近々、遊びに行ける日を楽しみにしています!

清水 理沙
http://ashley-r-senzatempo.seesaa.net/

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冬の朝

冬の朝                            

        ストーリー 有我奈々子 (東北芸術工科大学)
           出演 清水理沙

静かな冬の朝、私は目を覚ました。
布団から出ると空気はしんと冷えていた。
太陽はまだ出ていない。障子は青く染まっている。

祖母は早起きだ。
蛍光灯が一つだけついた、まだ暗い台所に立っている。
冷たい水でお米を研ぎながら
「外見てみ」と言って白い息を吐く。
急いで玄関を開ける。鋭い寒さを感じた。
見渡す限りの青く白い雪。何の音も聞こえない。
人生6回目の雪だった。

冷えた体に祖母は大きなちゃんちゃんこを着せてくれた。
そして甘酒を私の湯飲みに注いでくれるのだ。
この甘酒が私は大好きだ。
冬になると必ずストーブの上にたっぷりの甘酒が入った大鍋が鎮座する。
「あんたが好きだからねえ」と祖母が作るのは
特別甘い甘い、甘酒。
それを飲んでるうちに私はうとうとと眠くなって、
こたつにすっぽりと包まれて寝てしまう。
お昼には兄と雪遊びをしなくちゃ、そう思いながら。

厳しく寒い冬を、積もる雪を毎年嬉しく思うのは、
祖母のおかげだと、今思う。

東北へ行こう


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雪の降る日

雪の降る日

     ストーリー 赤井澤美穂(東北芸術工科大学)
              出演 清水理沙

真っ白なぼたん雪が人も町も山も関係なく
深々と染め上げていくさまが好きだ。
私の背丈を越えて積もる雪の壁に手を這わせ
転ばないように、ゆっくり、ゆっくり
踏みしめて歩く感覚が大好きだ。

雪道の中、凍った真っ赤な指先が
暖を求めて隣の手とくっつく。
まだ誰もあるいていない、真っ白な雪の原っぱに
内緒でこっそり足跡をつける。
じんじんと寒さにしびれた頬に
そっと手のひらを当てる。

二人で手を繋いで雪のベッドに寝っ転がるのが好きだ。
目の前が見えなくなるくらい降る、わた雪のカーテンが大好きだ。
積もり積もった雪を、
家族総出で汗をかきながら雪かきするのが好きだ。
外から帰って家に入った瞬間の
なんとも言えない安心感がたまらない。

雪に湿ったコートを脱いで、温かなストーブに手をかざす、
寒さも心もとろかすあの瞬間は、涙が出そうなほど、大好きだ。

他のどこにもない、東北にしかない雪の色、
他のどこにもない、東北の雪の名前、
他のどこにもない、東北の冬の温かさ。

東北へ行こう


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