下駄屋のパン屋さん

下駄屋のパン屋さん

          ストーリー 吉田菜津子(東北芸術工科大学)
             出演 いせゆみこ

山形県の北にある真室川町は
地図を見ると町の9割近くが森林で占められている。

じゃあ、町はどこにあるの?
そんな真室川町に初めてパン屋ができた。

祖母に案内されて行って見ると
看板には、「佐藤はきもの店」
でも、様子がどこかおかしい。
履物屋なんて、今さら流行らないのに、
店の前には県外ナンバーの車が止まっていて、
若い女性も出入りしている。
そして、祖母は私のことなんてお構いなしに、
得意気に店のドアを開けたのだ。

すると、下駄やサンダルと一緒に、美味しそうなパンが並んでいた。
しかも、「セグール」とか、「オット」とか、
田舎ではなかなか買えないお洒落な名前のパンばかりだった。

実は、「佐藤はきもの店」の娘夫婦は、
東京でパンづくりの修業をしてきて、
実家である真室川町の「佐藤はきもの店」の中に、
このパン屋をオープンしたそうだ。
垢ぬけたパンばかりではなく、
真室川町で獲れた山菜やハチミツを使った
オリジナルなパンも焼いていて
県外からのお客さんも呼んでいる。

9割の森と1割の町
そして、その1割の町のなかに
点のように存在する人気のパン屋さん。
下駄とサンダルとパンが並ぶパン屋さん。

これが私の真室川町です。

東北へ行こう

山形県最上郡真室川町http://www.yume-net.org/

真室川ゆめねっとhttp://www.town.mamurogawa.yamagata.jp/

もがみ地域観光http://kanko-mogami.jp/

やまがたへの旅http://yamagatakanko.com/

ぱん処げたや Nethttp://d.hatena.ne.jp/getayanet/


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ほろ酔いの街

ほろ酔いの街                  

             ストーリー 加藤愛花里(東北芸術工科大学)
                出演 いせゆみこ

仙台の街は休日になると陽気になる。
いたるところで音楽が演奏されている。

近くの公園では朝からブルース、
街のアーケードでは
毎週のようにジャズ演奏があり
コーラスグループが歌を唄っている。

そしてお客さんはビール片手に街を散歩し、
好きな音楽があれば立ち止まり、
夕方になるころにはすっかりほろよいになっているのだ。

 そんな仙台では9月に、今年で22回目の
「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」、
通称ジャズフェスが開催される。
道路やケヤキ並木、公園、商店街、
あちこちに設置された100ヶ所のステージでは、
朝から晩まで音楽が鳴っている。

去年はたしかソーラン節をジャズ調に歌いあげる
ファンキーなおじいさんのバンドでしめたなぁ。

みんなが心待ちにしているこの日、
今年はどんな音楽でビールを飲もう。

ほろよいの街、仙台。

東北へ行こう

定禅寺ストリートジャズフェスティバルhttp://www.j-streetjazz.com/

仙台タウンhttp://www.sendaishi-town.com/

せんだい旅日和http://www.sentabi.jp/mp0000v.php


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国井美果 2012年8月12日

「帽子のっけ」

              ストーリー 国井美果
                 出演 いせゆみこ
                      
私の父は、作った料理に、かなりの確立で目玉焼きをのっけた。
そのメニューは「帽子のっけ」という名で呼ばれた。

ハンバーグの帽子のっけ。
ナポリタンの帽子のっけ。
鶏そぼろごはんの帽子のっけ。
焼きうどんの帽子のっけ。
炊きたてごはんの帽子のっけ。

卵チャーハンに帽子をのっけたり、
あろうことかオムライスに帽子をのっけた時は、
かぶっているじゃないか・・・!と思ったけれど。

帽子ののった一品の他には、決まって豆腐と葱のお味噌汁と、
商店街で買ってきた、煮物やポテトサラダやアジフライなどのお惣菜が並んだ。
私が小学生の頃、病気がちな母に代わってキッチンに立った父の食卓は、
大雑把で、カロリー高めで、ワンパターン。

でも、そんな食卓のあれこれを弟と私と父で分け合って食べたあの光景は、
夕方の透明な光とともに、いまも私の大切な部分を照らしている。

時折テレビで、皇族の方が公の場に帽子をちょこんと被って現れる姿を観ると、
「お父さんの帽子のっけだ」と思ってしまう。

あれから時が過ぎ、私も自分の家族ができて、
今は毎日、子どもたちにごはんを作る日々だ。

とりたてて料理が上手いわけでもなく、器用でもない者が
仕事をしながら家族にごはんをつくるには、
ある程度の割り切りと、鷹揚さがなければ続かないことがわかってきた。
時間がなくて、準備もできていなくて、
みるみる機嫌が悪くなる私が作るごはんは、さぞ美味しくないに違いない。

それよりは、いつかの風景のように
恐るべきワンパターンでもいいから淡々と、
なんだか笑ったりしながら囲む食卓が、
どれだけその人をつくっていくものだろう。と、思う。

あいにく卵アレルギーの子どもなので、
今のところ帽子をのっけられないのが残念だけれど。

出演者情報:いせゆみこ 03-3460-5858 ダックスープ所属

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いせゆみこから「ひと言」

>

こんにちはー!
いせゆみこです。

トーキョーコピーライターズストリートは、
今回久々に参加させて頂いたんですが、
私は第一回目のライブに参加させて頂いていて、
郷愁に近い気持ちが湧いてくる番組です。

今回の収録では「東北へいこう」のストーリーも読ませて頂いて、
生粋の東北娘(岩手)として地元冥利につきる光栄、
いろんな意味で郷愁とともに、
充実した時間を過ごさせて頂きました。

収録先のランダムハウスへは8年ぶりくらいに(!)お邪魔しました。
キャー懐かしいっ!
ってそれだけで既にテンション↑なのでしたが、たしか壁一面を覆ってた
大きな木製の本棚(たしかテープの類がびっしり収納されてた記憶)が
変化、否、進化しておりました。

本棚はやはりそこにあったのですが、
センター部分にはセンスのいいグラスや陶器などが、
「私の定位置ですけど、何か。」って顔できちんと整列して、
ちょんとリネンかぶって、その下にサイズぴったりの籐の籠。
隣の段にウイスキーや焼酎の類がたくさん。
だけどやっぱり整然と、すっきりと並んでいて、それに平行に置かれて
いたのは、なんとなんと、一枚板のすぅーっとした木製カウンターでは
ありませんか。その空間の、その配置の、なんて居心地のいいこと。

わーなんだここ!すごい!Barみたい!
って惹きつけられる様に、カウンターの背の高めの椅子に座って
勝手にくつろいでお菓子食べて、
出番終わってるってのに次の方のそのまた次の方の収録まで居座るという、
相変わらずのずうずうしさ(あ、無邪気と捉えてください。)を発揮してしまう
なんだろう、「ほっこり」という言葉がぴったりな空間が出現していたのでした。

私最近、思うんですよね。
ゆとりってのは、一日の〆を迎える、お気に入りの定位置があること。
よく働いたがんばった日に、もちろんのんびりした一日、落ち込んだ日も、
愉快な日も、どんな一日にも、居心地のいい、お気に入りの居場所で
お酒飲んだりして〆。ってのが何ともグー!
それが仕事場に出現するってのがグーグー!!

仕事を楽しんでる方たちって見ていて気持ちがいいし、
職場にも遊び心があるんですね。
私も徐々にそういう場所を作り
積み重ねた毎日の「しわ」を形成したいものでございます。

そんなトーキョーコピーライターズBar「ランダムハウス」
あ、もちろん日の上がるうちは、お酒の提供はございませんのよ。(笑)

さてさて、
本日はどんなナレーターさんやライターさんが集うのでしょうね。うふふ。

いせゆみこ
http://ducksoup.jp/prof/woman/a/ise.htm

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広島から7時間

広島から7時間 
 
          ストーリー 古川翔子(東北芸術工科大学)
             出演 いせゆみこ

広島から、新幹線で7 時間かかる。
東京で一度乗り換えて、山形まで7 時間。
地図を広げて
ものさしで長さをはかって笑った

「うわぁ、ばり遠い」「嘘じゃろ」
「でも新幹線とおっとる」「ほんまじゃ」

「山形はさあ、夏はきっと涼しいんじゃろうね」
「だって東北じゃもんね」
「ええなあ、クーラーなんかいらんじゃろ」
「ほうじゃね」

山形の夏は日本で一番暑かった記録があるって知ったのは
こっちに来て最初の夏
タクシーのおじさんに教えてもらった

その年の夏は、本当に毎日暑かった
知っとるかな
さくらんぼとかラフランスとか、ばりおいしいんよ
お店で買わんくても大家さんとか店長さんがくれるんよ
みんなやさしいの
山形すごいじゃろう
夏はじりじり暑いけん、トマトやキュウリが美味しく育つよ
とうもろこしがすっごい甘いん
一緒に食べようね

7 時間かけて会いに来てくれるあなたには
ありがとうとかお疲れさまじゃ足りんけん
とびっきりをいくつも用意せにゃいけんね
見たことないくらい空いっぱいの星とか
金色になびく稲穂とか
うちの見つけたとびっきりでおもてなししよう
新幹線の7 時間ずっと楽しみにしておいで

また会える日までどうぞお元気で
広島のあなたへ
山形のわたしより

東北へ行こう

やまがたへの旅http://yamagatakanko.com/

庄内を遊ぼうhttp://www.4071.net/

庄内映画村http://www.s-eigamura.jp/

温泉王国やまがたhttp://yamagata-onsen.org/

おいしい山形http://www.yamagata.nmai.org/


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一倉宏 2007年7月6日



 
不公平な贈りもの

                       
ストーリー 一倉宏
出演  いせゆみこ

私の姉のことを 
「間違いなく<世界の4大美女>のうちのひとりだ」
といったひとがいる 
そのうち3人はすでに歴史上の人物だから つまり
<世界でいちばんの美女>と いいたかったらしい
そういったのは 
私がひそかに憧れていた 近所の大学生のお兄さんだった

なにしろ 姉ときたら 生まれたときから
ベテランの産科の先生に「こんな美人は見たことがない」といわれ
病院中の看護婦さんたちが のぞきにきては喚声をあげたほど
歩きはじめた姉のかわいらしさに比べたら 
どんなお人形さんもただの人形に過ぎなかったし
幼稚園に入る以前に 親戚のテレビ局のプロデューサーから
「絶対に芸能界には入れない方がいい」と忠告を受けていた

小学中学では 学芸会や運動会のたびに 全校の父兄が
姉の姿を カメラやビデオに収めようと夢中になる始末で
高校では 独身の男性教師を担任にしないよう学校側が配慮し
それでも 化学(ばけがく)と体育の教師が高熱を出したという噂
クルマの運転をはじめたら スピード違反で捕まった白バイの
おまわりさんに 免許証を返されると同時にプロポーズされた・・・
その頃はすでに<世界の4大美女>入りを果たしていた姉に
こんな神話は 日めくりカレンダーのようにあった

ひとにはよく聞かれる 
「あんなに美人のお姉さんをもつのは どんな気持ち?」と
この質問には曖昧に微笑むしかない 単純には答えられないから
たずねるひとは すでに無意識のうちに姉を神格化していて
そして無意識のうちに 私に同情している
「もう慣れましたから」と 私は答える
「あ そうね そういうものかも」と 相手は妙に納得する

いま思えば 父も母も とても心配していてくれたのだ
こんな特別な姉がいて そして 特別ではない妹の私がいて
両親はとにかく 「お姉ちゃんは ほかのひとよりも 妹よりも
ただちょっときれいなだけだから」と 繰り返し教えさとしていた
それは「ほかのひとより背が高いとか 鼻が低いということと
なにも変わらない」 個性のひとつに過ぎないということ
姉は 素直にそれを受け止めて育ったが 妹の私はひそかに
そして時々 泣きじゃくりながら猛烈に 反発した
個性のひとつひとつがすべて 神様の贈りものだとしても
それは なんて不公平な贈りものだろう と

けれど 私にもようやくわかったのだ
姉より早く 結婚して こどもを産んで はじめて

産科の先生が お義理で「美人、美人」と呼んだ
鼻の低い この私の娘だけれど・・・ 
間違いなく「世界でいちばんかわいい」と 夫にも私にも思えること
なんだ こういうことだったのか・・・
両親がいっていたのはこのことで それはまったく正しかったのだ
いつかこの子が 自分の 小さな丸い鼻について
夫か 神様を  恨む日がくるとしても

「お姉ちゃんも早く結婚しなよ 
 あんまり美人だと苦労するね」 というと

「ほんとにそうね」と ぬかしやがった姉だった

*出演者情報:いせゆみこ  03-3460-5858 ダックスープ

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