さらだぎらい
ストーリー 直川隆久
出演 原金太郎
ほら。特にオシャレでも下品でもないイタリアンの店の
パスタランチなんかで、
ちまっとしたサラダが出るでしょう。
レタスが何枚か、ひらひらっとのせてあって、
出来合いのドレッシングがかけてある。
あと、喫茶店のモーニングなんかでも、
キャベツの千切りと
トマト一切れの上にピンク色のドレッシングがかけてあるやつが、
ちまっと小皿ででてくる。
だいたい冷蔵庫に入れすぎてて、野菜がぐたっとしてて。
ああいうサラダをもさもさ食いながらね、
毎度釈然としない思いをするんですよ。
ほんとにこれ要るのかしらん?ってさ。
「あのちまっとしたサラダがないと飯食った気がしないんだ!」って人
いるかい。いないと思うよ。
別にうまいわけでもなし、別に腹がふくれるわけでもなし、
別に栄養も豊富なわけじゃなし。
ね?店のほうだって、「このサラダで客を呼ぼう」って意気込みが
別にあるわけじゃなしね。もう「別に」だけでできてる食い物ですよ。
近いのはあれだな。
まったく手書きの文字のない年賀状、みたいな感じだよね。
送る方も義務感だけで送ってて、もらう方も嬉しくない、みたいな。
要するに、店の言い訳に−−−−「品数だしてますから」って言い訳に
つきあわされてんだ。数合わせですよ。
客を馬鹿にしてるよ。
誰かがいつかどこかではっきり言わなきゃいけないと思うよ。
サラダ撲滅運動を起こしてくれるNPOがあったら、寄付してもいいよ。
1000円くらい。
まあでもね、俺も大人ですから。
たとえそんなサラダであっても、それでいくばくか経済が回るわけだから、
まぁよしとしようかと。
で考えたわけ。結局形式なんだからさ、
ほんとのサラダである必要ないんじゃないのと。
たとえばさ、サラダの絵を描いた紙をさ、
いや、なんなら「サラダ」って字だけでもいいよ。
ウェイターは持ってきてさ。客はそれ見てさ、
こう、んーーって睨んで、はい、ごちそうさま、つって食べたことにしとくと。で、まあ、お代はいつも通りに払うと。
もう、そういうことでいいんじゃないかね、サラダについてはね。
そっちのがエコでしょ。エコ。
ていうね、こういう話をいつも楽屋で若い連中にするんですけどね。
きょとんとされて終わりだね。
どうでもいいことでウダウダ言いやがって爺ぃ、って顔してるね。
あんたらもわからないでしょ。…どこの中学の新聞部だって?
ああ〜…いや、知らない。
こんな話で記事になるかい。
なんねえよね。はははは。
おや、出囃子が鳴っちゃったよ。
この話になるとつい夢中になっちまうんだよな。
おい、ちょいと。ネタ帳見しておくれ…ん。
ま、いいや。どうせ客は俺の後の真打目当てなんだから。
数合わせ、数合わせ。
はい、じゃ、行ってまいります。
出演者情報:原金太郎 03-3460-5858 ダックスープ所属