愛について
NHK Eテレの特集で それを見た
釜ヶ崎 ドヤ街の おっちゃんたちが
詩を書き 絵を描いている
家族と生き別れてしまった おっちゃんが
とうに 大人になっているだろう
娘たちの 幼い頃の思い出を
そこにあったはずの幸せを 書いている
それは 回想なのか それとも 幻想なのか
いずれにしても 書いている
思えば 詩を書くことも
ラインやメール 電話をすることも
嫁さんをもらうことも 離婚することも
喧嘩することも 焼酎を飲むことも
みんな 同じかもしれない
笑うことも 泣くことも 怒ることも
同じこと だったかもしれない
それらはぜんぶ 愛について
おっちゃんのノートには
こんな言葉も 書いてある
テレビのニュースを見た
5才の女の子のノートが流れた
ママ もうパパとママにいわれなくても
しっかりとじぶんから きょうよりかもっと
あしたはもっとできるようにするから
もうおねがいゆるして ゆるしてください
おねがいします
おっちゃんのノートに
書き写された 女の子のノート それは
なんて哀しい ラブレターだろう
なんて胸えぐる ラブソングだろう
おっちゃんはいう
だって僕みたいな しょうもない人間
なんで この子は こんな
誰も助けて あげること
できひんかったやろかなあ・・・ と
そういって おっちゃんは泣いた
なんていうか ごく 自然に
僕はテレビを消して 自分の部屋に行く
いつものように 眠くなるまで
お酒を飲んで 音楽を聴く
その音楽は すてきな歌で
あまいメロディに わるくない歌詞
一人称が 二人称を どれほど愛しているか
一人称が どれほどいま 幸せを感じているか
その歌は その歌詞は なかなかいいと
感じていたのだけれど いつもは
でも そんなことなど
どうでもいいじゃないかと
思えてしかたなかったのだ その夜は
そして 亡くなった母の夢を
ひさしぶりに見た
夢の中の 母と話した
母もまた 泣いていた
そうだよね 泣くよね
誰だって
出演者情報:大川泰樹(フリー) http://yasuki.seesaa.net/