目をあけるとそこには夏が



目をあけるとそこには夏が

         ストーリー 加藤晶(東北芸術工科大学)
            出演 大川泰樹

目をあけると、そこには夏がありました。
私はそれを電車の窓から見つけました。

太陽は田んぼに張られた水や山々の木々、
そこにある様々なものを輝かせています。
緑も白も黄色もすべて、
平等にきらきらとしています。
吹く風には明るい色がついているようです。

まだ小さい私はうとうとと眠ってしまったようでした。
隣には父と母がいて、ふたりは小さな声で会話をしています。
懐かしさなんてまだ覚えるはずのない私でも
懐かしいと感じてしまうような、
暖かくて良いにおいのするふたりの姿です。

私は電車でこれから運ばれてゆく場所を、想像します。
私が生まれるずっと前からある美しい風景や自然、
季節、動物たちが浮かびます。
それは、たくさんの人が生活を営みながら、
ずっと守ってきたものです。ゆるやかにつづいてきたものたち。
そこは今日のように夏はからりと暑く、
冬は雪がたっぷりと積もるのでしょう。
春は新しい生きものたちがざわめき、
秋にはたっぷりとした実りがあるのでしょう。

尊いということがどういうものなのか、
私にはまだよくわかりません。
でも美しいものがそこにあり、
生きつづけているというのは
きっと尊いことなのでしょう。
そこをこれから私がたずねるのも、
きっと一つの奇跡のかたちなのです。

まだ少し眠く、私は目を閉じます。
電車のゆっくりとした心地よい揺れを感じながら、
私はこれから見る景色を想い、夢に見ます。

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