夢も見ずに
平成元年の頃、
私は学校の寮に住んでいた。
その寮では、
夜遅めの時間に食堂に行くと、
夕食の時間に食べられなかった学生用に、
ごはんと味噌汁が、
食べ放題状態で残されていた。
私はそこで、
味の薄ーい味噌汁で、
大量のごはんをかきこみながら、
平成という年号に決まったことやら、
消費税が導入されたことやら、
リクルート事件やらを報じる、
ニュース番組を見た。
自分の部屋にはテレビがなかった。
その寮は4人部屋で、
私の寝る場所は、2段ベッドの上段だった。
あおむけに寝ると、手を完全には伸ばしきれないぐらいの近さに、
天井があった。
そのせまさは、
なんだか妙に寝心地がよく、
私は毎晩、夢も見ずに眠った。(おわり)