誰もいない
ストーリー 富樫美帆(東北芸術工科大学)
出演 山田キヌヲ
学校から家までの距離は7キロ。
車で15分。自転車で60分。
冬の時期は、ずっと続く真っ白な道を
2時間ひたすら歩いて帰らなきゃいけない。
日が沈んでくると、あたりは急に暗くなり、
街灯と、家の灯りがぽつぽつと浮かび上がる。
山形はただでさえ人口が少ないのに、
冬の夜はみんな冬眠したのではないかと思うほど、
ほんとうに人っ子ひとりみあたらないのだ。
鼻からすいこむ空気も冷たくて、すべてが澄んでいる。
ほおにあたる冷たく厳しい風がなんだか寂しい気持ちにさせる。
早く家に帰ってこたつに入りたい。
急ぎ足で帰ると、
母が寒鱈汁を用意してくれていた。
真冬の厳しい海を耐え抜く鱈は
まるまると太っていて、脂がのっている。
蓋をあけると湯気があがって、いい匂いがした。
食べ終わるころには体もあったかくなっていた。
そうか、誰もいないのはこういうことだったんだ。
雪の積もった屋根の下で
人が寄り添い、あたため合っている。
人が人をあたためている。
山形の冬はとってもあったかい。
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