ふるさと
ストーリー 佐藤寛人(東北芸術工科大学)
出演 井上加奈子
ふと故郷を思い出した。
東北を出てもう何年経ったのだろう、
私は新幹線に乗って北をめざした。
窓から眺めた景色は何色だったろう。
途中で灰色だった世界が
徐々に色味を帯びて色鮮やかな世界になったとき、
「そうか、帰ってきたんだ」と思った。
東北へ行こう
東北風景写真家協会:http://www.tohoku-fukei.com/
ふるさと
ストーリー 佐藤寛人(東北芸術工科大学)
出演 井上加奈子
ふと故郷を思い出した。
東北を出てもう何年経ったのだろう、
私は新幹線に乗って北をめざした。
窓から眺めた景色は何色だったろう。
途中で灰色だった世界が
徐々に色味を帯びて色鮮やかな世界になったとき、
「そうか、帰ってきたんだ」と思った。
東北へ行こう
東北風景写真家協会:http://www.tohoku-fukei.com/
「冬のあたたかい思い出」
ストーリー 鈴木萌水(東北芸術工科大学)
出演 清水理沙
雪がしんしん積もる中、
お父さんの大きくて暖かい手を握りながら、
ざくざく音を立てて、寒くて暗い道をかきわけて歩いた。
次第にざわざわ声が聞こえて来て、
オレンジ色のやわらかい光が見えて来る。
鳥居をくぐるとおばちゃんたちから甘酒を貰った。
ぎゅっと握りしめて持つと、
冷えていた手がじんじんとあたたまってくる。
匂いのする水蒸気を吸い込んで、甘酒を、ごくり。
つぶつぶとした食感を感じながら、
少しやけどしてしまった舌をもごもごさせる。
小さい頃は大人の飲み物であるお酒を飲めるのが嬉しかった。
身体が胃の中からぽかぽかしてきて、
おばちゃんたちから貰ったみかんを食べる。
冬の空気でひんやりしているみかんは、
甘酒でほてった私にちょうどいい。
食べ終わった頃に、持ってきたお正月のお札を
ごうごうと燃えている火の中へ投げ入れる。
どさっと落ちる音がしてしばらく見ていると
端の方からじわじわ燃えていった。
燃えている火をずっと見ていると顔だけがほてってくる。
ぼおっとしてるとお父さんが言った
「お賽銭をしたら帰ろう。」
私はお賽銭をするのが好きだった。
まるで縁日の輪投げみたいにちょっと遠くから、
ずんとくすんだ5円玉を狙って投げ入れるのだ。
ちゃりん、ごとん、がらんがらん。
あの頃の私は願い事をするためではなく、
年に数回しかないちょっとしたアトラクションみたいに楽しんでいた。
「帰ろうか。」お父さんの大きな手を握って、
ざくざく道を進んでいった。
雪はまだ降っていたけど、もう寒くなかった。
次のお正月には帰れるから、
また、一緒に手を繋いでどんと祭にいこう。お父さん。
「東北へ行こう」
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「特別な冬」
ストーリー 平栗仙子(東北芸術工科大学)
出演 山田キヌヲ
宮城県から山形市へと移り住んだのは学校へ通う為だった。
毎日、朝の5時には起床して登校。帰宅するのは夜中の11時半。
そんな、くたくたな生活を1年半続けていた私に、母親が一言。
「一人暮らしする?」
こうして、私の一人暮らしが始まった。
自炊と洗濯を除けば、ずっと楽になった私の学校生活。
そして、一人暮らしを始めてから、最初に訪れた、初めての、冬。
不運なのか、幸運なのか、
その年は30年に一度と言われる豪雪の季節だった。
高速バスもストップ、学校も、午後から休講になった。
私はというと、結局、降り続ける雪を教室から見て、課題に追われ、
遅い時間まで残ってしまっていた。時刻は、夜の9時過ぎ。
もう誰も居ない。教室を出た。
イヤホンを耳につけて、iPodのスイッチを入れる。
外は、本当に、一面の雪景色。
世界が真っ白だ。降っていた雪は止んで、乾いた空には満天の星。
学校から、長い坂を下る。一歩一歩、踏みして歩く。
歩く度に、ぎゅむ、ぎゅむ、と、足下から雪の感触。
道路の脇には雪の壁。私のお腹位までの高さはある。
すべりだいが半分くらい雪で埋まってしまっている公園。
雪見大福のように、ふんわりと、
真っ白になってしまった住宅街の自動車たち。
ありとあらゆるものが真っ白。
思いつきで、私はいつもは通らない道を通って帰ることにした。
住宅街へ迷い込む。
厚く積まれた雪はないが、道路の表面は真っ白な雪のカーペットだ。
知らない家々。そして、道。方向は合ってるはずなんだけどな。
ちらちらと舞い始めた雪に、急ぎ始める私の足。
角を左に曲がった。曲がった瞬間、思わず目を見開いた。
行き止まりになっているその場所。
街灯の明かりを反射させた雪の上に、
降り始めた雪の影が大きく、小さく、
模様となって揺れていたのだ。
その美しいこと。そして、なんて幻想的なんだろう。
街灯の明かり、そして角度と、雪の結晶。
そのお陰なのか、白い雪の上は、
あちらこちら、七色に輝いてもいる。
私は、思わずイヤホンを外し、暫くその場に立ち尽くしていた。
キーンと冷えた空気。風はなく、音もない。
静寂の中、銀色に、
ぼんやりと輝く小さな舞台が、そこにはあった。
私は、ゆっくりと引き返し、
見覚えのある道に沿って歩き、大通りに出た。
空は深い紺色。その下に、ぼんやりと輝く銀世界。
もう、小さな舞台があった場所への行き方は覚えていないけれど、
もしかしたら、あちらこちらで、
一回限りの冬の舞台は、あるのかもしれない。
その冬だけの、特別な舞台。
東北には、そんな舞台が、きっとある。
東北へ行こう
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山形県観光協会:http://yamagatakanko.com/
山形市観光協会:http://www.kankou.yamagata.yamagata.jp/db/
「ほしのふるまち」
ストーリー 村上正平(東北芸術工科大学)
出演 岡田優
僕の住んでいるまちは、ほしがふる。
テレビとかでよく、「星が降ってるようです」なんていってるけど
そんなもんじゃない。
ほんとにほしがふっている。
ただただほしがふっている。
僕の住んでいるまちは、周りにはコンビニも街灯もなんにもない。
カエルがゲロゲロないている声しか聞こえない。
都会のネオン街や喧騒と比べたら、
田舎の夜は真っ暗闇で不便でどうしようもないけれど、
それがほしをふらせている。
ただただほしをふらせている。
みんな空はつながっているというけれど、
でもここにしかない空もある。
東北へ行こう。
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「ぼくは、やま。」
ストーリー 鍬崎純也(東北芸術工科大学)
出演 岡田優
ぼくは、やま。ずっとまえからここにいる。
ひとが東へやってきた、ずっとまえからここにいる。
ぼくは、やま。ずっとまえからここにいる。
傾く月に昇る月、ずっとまえからここにいる。
ぼくは、やま。ずっとまえからここにいる。
神が生まれて仏が訪れ、ずっとまえからここにいる。
ぼくは、やま。ずっとまえからここにいる。
冬が始まり夏が始まり、ずっとまえからここにいる。
ぼくは、やま。ずっとまえからここにいる。
ヒトが生まれて土へと還り、ずっとまえからここにいる。
ぼくは、やま。ずっとまえからここにいる。
生きているもの、そうでないもの、めぐりめぐってここにいる。
ぼくは、やま。ずっとまえからここにいる。
ぼくは、やま。
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東北の山100選:http://sakuramaya.fc2web.com/east/touhoku/
東北の山遊び:http://yama-sone.at.webry.info/
東北・山の温泉ガイド:http://www.mountaintrad.co.jp/tohoku/arealist.html
「仙山線」
ストーリー 佐藤麻衣
出演 高田聖子
山形から仙台までをおよそ1時間半で走る仙山線。
私の家から山形駅までは20分だけど
電車の本数は1時間に1本しかない。
そんな仙山線に、通学とバイトでほぼ毎日乗っている。
落ち葉で止まる。強風で止まる。冬場の遅れは当たり前。
みんなから「最弱」と言われながらも、めげずに今日も走る。
めげずに今日も乗る。
最近は、お天気を見れば列車の遅れも判断できるようになってきた。
慣れって怖い。
でも悪いとこばっかじゃない。
春、霞城公園(かじょうこうえん)の桜が満開になると
わざわざ速度を落としてくれる。
夏の田んぼの水面に映る空はキレイだし、
遅れる原因の落ち葉や雪だって、景色として見ればうっとりする。
見送りをしている家族、乗り遅れる高校生、
遠くから手を振ってくれる子ども。
私が乗るたった20分間の間に、窓の外では
いろんな景色、いろんなドラマが起こっている。
散々だけど、結構好きだよ。また明日もよろしく。
東北へ行こう。
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仙山線の車窓から:http://www.hi-ho.ne.jp/h-ohta/senzan/sz01.htm