武田義史のカンヌの誘惑-⑥

半日でもコートダジュールを満喫できるお城巡りのご案内

久しぶりにカンヌのWebサイトを覗いてみたら、
アワードへのエントリーが締め切られ、セミナーの詳細も発表されていました。

目立ったところでは、恒例となったセレブリティゲストですが、
今年はサラ・ジェシカ・パーカーが6/16に登壇するようです。
個人的には6/18に開催される、あのボルボのジャン・クロード・ヴァンダムの
股割りCMを制作したエージェンシー、
Forsman & Bodenforsの『THE EPIC LECTURE』に興味があります。
1か月後に迫った今年のカンヌ、今から楽しみですね。

早くも今年の受賞予想をされている方もいらっしゃいます。
http://www.pinterest.com/mrcreativerebel/cannes-lions-2014-prediction/

今回のコラムですが、
今まではカンヌライオンズを有意義に過ごすためのTIPSを紹介しましたが、
とある方から「せっかく南仏に行ったのに観光しないんですか?」
という鋭い?質問があったのでお答えしようと思います。

カンヌをものにしようと会場に籠ってしまうと、
展示鑑賞やスクリーニング、セミナーの予定が矢継ぎ早に入ってきて、
観光に時間を割くことが難しいのですが、
会期半ばくらいにはさすがに集中力が持たなくなります。
そんな時に、一日をかけて人気の観光地であるモナコ、鷹の巣村のエズ、
マティスのロザリオ礼拝堂があるヴァンスなどに行かなくとも、
”半日”でコートダジュールを満喫できる場所がありますので、ご紹介いたします。

海を満喫したい方へは、アンティーブ(Antibes)

カンヌ駅から各駅停車に乗り、4つ目の駅、約10分で到着するのがアンティーブ。
昨年の勝浦さんのコラムでも紹介されていたピカソのアトリエがあった
グリマルディ城(現ピカソ美術館)がある街です。
駅から南西へ徒歩15分くらいで海岸沿いの旧市街に到着できます。
おすすめはやはりピカソ美術館で、ここのテラスから眼下に広がる海は、正に”紺碧”。
お城の北に広がる白砂の砂浜から豪華なヨットが停泊する港を散策すれば、
ちょっとしたモナコ気分を味わうことができて、心地良いです。

旧市街に目を向けるとプロバンス市場という、いかにも地元っぽいマルシェ、
迷路のような小道沿いに並ぶお土産物屋、
街の中心となる広場にはオープンテラスがあるレストランが立ち並んでいます。
小さな街なので、散策してランチを食べても
カンヌには午後早めに戻ることができるでしょう。

エズに行かなくても鷹の巣村を満喫できる、カーニュ・シュル・メー
(Cagnes-sur-Mer)

コートダジュール名物、
山頂に点在する城郭に囲まれた中世の街”鷹の巣村”といえば、エズ村が有名ですが、
タクシーをチャーターする以外でエズに辿り着くには、ニースまで国鉄で行き、
さらに駅から遠いバスターミナルから1時間に1本しかない路線バスで30分という
一日がかりの観光となってしまいます。
そこでお勧めなのがアンティーブからニース方面へ約5分、3つ目の駅、
カーニュ・シュル・メール。
ここには南仏のモンマルトルといわれる鷹の巣村オー・ド・カーニュという
グリマルディ城を中心とした中世の村が存在します。
殺風景な駅前から大通りを北東方面に歩くと急坂に出合うので、
その坂を20分程上るとお城直下の頂上広場に辿り着きます。
広場には3軒のレストランがあるのでランチができます。

お城の中は地中海近現代美術館に改装されて一般公開されているのですが、
お勧めポイントは階段を上りつめた先にある最上階の展望台。
眼下に広がる旧市街の先に広がる地中海は間近で
眺める海とは異なる表情で空と海の境界が融けるほどのターコイズブルー。
また、美術館の展示の方は近くにルノアール終焉の家があることから、
ルノアールの晩年の作品やアトリエが再現されていました。
エズと比べると観光地化されていない分、
静かで日本人観光客もほとんどいないので個人的にはこちらの方が好みですね。

灯台下暗し?カンヌの穴場的展望スポット“カンヌ城”

カンヌ城とは通称で、正式にはノートル・ダム・ド・レスペランス教会と
ラ・カストル博物館。中世の修道士から作った城塞で、
カンヌライオンズ会場から西方面、
カンヌ旧港から旧市街シュケの丘の坂道をそれとなく登っていくと
5分くらいで到着する、カンヌ市街や地中海を一望できる展望スポットです。
会場から目立つ場所にあるので、誰もが目にするはずですが、
実際に登って行った人は少なく、観光客も欧米人が多かったです。

会期中、集中力がなくなった時やエアコンで身体が冷えた時には、
幾度となくここを訪れて遠くの青い海を見ることで鋭気を養い会場に戻ったものです。朝、昼、夕方と異なる表情をみせてくれるところがいいですね。
ラ・カストル博物館の開館時間内であれば、塔に登ることができて、
そこからは地中海を間近に感じられる360°ビューを満喫できるでしょう。
なお、朝夕の人通りが少ないときは、怪しい雰囲気が漂っているので、
強盗にはくれぐれも気をつけてください。

その他としては、私は行ったことがないのですが、
カンヌから電車で35分くらい内陸に入ったところにある香水の都グラースで、
香水博物館やフラゴナールの工場を見学するのも南仏らしいのではないでしょうか。
詳しくはこちらからどうぞ。http://www.mycotedazurtours.com/?p=1540

私自身が初めてカンヌに行ったときに、ネットやガイドブックを見ながら、
“観光する時間くらいあるでしょ”と高をくくっていたのですが、
いざ現地に行ってフェスティバルのスケジュールに沿って日々を過ごしてしまうと
周りの空気に飲み込まれて、
観光に一日を割くというのは結構大きな決断を要しました。
カンヌを吸収しようと意気込んで自費でやってきた場合なら、
”もったいない“と思われるかもしれません。
しかし、せっかくのコートダジュール、
半日ではあれば、目玉セミナーが開催される昼過ぎまでには戻れるので、
ランチを口実に少し足を延ばすことをおススメします。

尚、電車を利用する際は、お国柄ストが多いので
事前にネットや駅で確認するなど気をつけください!


カンヌ公式サイトhttp://www.canneslions.com/home/
日本語の案内サイト:http://www.canneslionsjapan.com/about/

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武田義史のカンヌの誘惑-⑤

Shortlistはアイデアの宝庫!朝イチ観賞のすすめ

2014年第一弾のコラムは、会場でしか観ることのできないShortlistの魅力と、
その中から実際に企画する際の参考となる“お気入り”を見つけ出すための
エキシビション観賞のTIPSをご紹介したいと思います。

念のため、Shortlsitを説明しますと、
金銀銅グランプリを決定する一歩手前の最終候補リストであり、
その数は全エントリーのおおよそ10%くらいです。
選ばれると認定証がもらえたり、
エージェンシー・オブ・ザイヤーのポイントが加点されることから
「入賞」扱いされることがあります。

エキシビションとはグラフィック系とキャンペーン系の
Shortlistのプレゼンボードの展示や
デジタル系のエントリーをPCで観賞する場です。
その数、プレゼンボードだけでも推定2,300枚!
時間とお金を費やしてカンヌを訪れる理由の一つは、
この膨大な数のアイデアにどっぷり浸かれるところだと思っています。

確かに年々、情報の充実度が半端なく増していくカンヌ公式Webサイトですが、
ボードやビデオを視聴できるのはブロンズ以上です。
その裏で惜しくもメダルには届かなかったShortlistでも、
実務上では大変勉強になるものが膨大に存在しています。
制約の多い日本では、むしろ実現性という意味では
Shortlistの方が実務の参考になるかもしれません。
まずは、実際に会場で見つけたキャンペーン系のShortlistの中から
いくつかご紹介したいと思います。

Coca Cola 「The Gift Bottle」

コカ・コーラのPETボトルの帯ラベルを引っ張ると、
ラッピングリボンに変形し、
クリスマスギフトとしての体裁に早変わりという極めてシンプルでありながら、
まさに“Open Happiness”を体現した仕掛けです。
グアテマラのキャンペーンとして始まったものがその評判から、
その後、中南米、南米に広がり、ヨーロッパまで拡大したという、
グローバルな拡販に繋がった素晴らしいアイデア。

なのに、カンヌではPromo, Direct, Branded Content でのShortlist止まり。
精算する前にいきなりラベルを引っ張ったビデオが
やらせっぽく見えてしまったのか?
または、他のコカ・コーラのエントリー、
例えば、“Small World Machine”といったものと比べると
スケールが小さくみえてしまったのか?
メダリストにおいて、商品の実売に直接繋がったエントリーは意外に数少ないので、これはブロンズ以上を獲って欲しいと思っていました。

Norte「WIDE THUMB」

アルゼンチンのビールNorteが、飲み口の広い新ボトルのローンチとして、
ボトルを振って“ビールかけ”するときに綺麗な噴射を可能にする
『大きな親指サック』をベタ付けしたというもの。

実際にビールかけに使うかどうかは別にして、
店頭でのインパクトや“なぜ?”“試してみたい”といった認知/理解/行動を促す
素晴らしいアイデアですね。

Clouds 9「Frozen in the clouds」

オーストラリアの新フローズンヨーグルトブランド「Cloud9」が、
若者に向けたローンチとして
凍る前の状態のヨーグルトを気球で気温の低い高所まで飛ばして、
凍るかどうか?をライブ中継したという実験プロモーション。
無事に凍って地上に帰還した商品をブロガーに食べてもらい、
2次的なバズも広げたみたいです。
日本でも以前、SAMSUNG・GALAXYが宇宙にスマホを飛ばして、
ライブ中継しましたが、その事例に似てしまったのが
メダルに届かなかった理由でしょうか。
ヨーグルトを空で凍らせることでフローズンであること伝えるバカバカしさを
上手く商品へ興味のモチベーションとして変換しているアイデアはいいですね。

Shortlistはメダリストになったものと比べると、
全般的に商品の広告やプロモーションとしての側面が強いものが多く、
評価のプラスアルファとなる、社会的な意義、カンヌの歴史上の意義、
スケール感の面が弱いのかもしれません。
しかし、日頃のクライアントから求められる
課題解決“商品の購買につなげるアイデア”という意味では、
眼ウロコなアイデアの宝庫と言えるのではないでしょうか。

では、そのShortlistエキシビションを効率的に観賞するために
私が実践した方法を紹介します。

①MEDIA LIONやPROMO & ACTIVATION LIONからチェックする。
理由としては、カンヌのキャンペーン系部門はエントリー重複が多いので、
まずはリアルもデジタルも、マスメディアもアンビエントメディアも
何でもアリの異種格闘技戦の様相をみせ、
かつエントリー数が多い上記2部門のどちらかをチェックしてから、
他部門をチェックするとダブリを省けることとなり、
各段にスピードアップします。

②カンヌアプリを有効活用する。
一昨年から展示ボードの脇にQRコードのラベルがあります。

これはカンヌ公式アプリの機能“GOODY BAG”というもので、
アプリのQRコードスキャナーを起動させて読み取ると、
カンヌWebサイトの“MY CANNES”の中で、
ボードの画像をダウンロードできるというサービスです。
これを使って、お気に入りの作品はもちろん、
難解な作品はキープして後日ゆっくりと解読できるという意味で
大変便利なサービスです。
利用するにあたっては
・アプリ内の“My Settings”からMY CANNESのIDと紐づけしないと保存されない
・ボード画像をダウンロードできるのがカンヌ最終日から1週間後
・今日現在(2/3)、カンヌアプリの中にこの機能が搭載されていない
という点に注意してください。

③Youtube、Vimeoを活用する
カンヌのShortlistに残るくらいの作品は
動画共有サイトにプレゼンビデオをアップしているのがほとんどです。
会場にはWifiが飛んでいるので、スマホやタブレットを使って動画を探して、
その場で視聴すると理解の助けとなります。
最近は、画像の左下のようにボードにQRコードを印刷し、
動画視聴を促すものもあります。

④観賞時間は朝イチが狙い目
カンヌウィークは皆さん夜遅くまで交流するためなのか、
朝イチのエキシビション会場は人もまばらです。
私は混雑してくると想定している順序通りに観賞できないため、
毎朝9時を目安に会場に出向いていました。
また、前述のカンヌ公式アプリのGOODY BAG機能や動画サイトを使うためには
Wifiが必要なのですが、
会場で飛んでいるカンヌ公式Wifiは午前中の方が繋がりやすいです。
デジタル系の場合もキオスクPCの台数が限定されているので、
空いている確率が高いです。
余談ですが、朝イチはカンヌ公式サイトクルーの取材を受けたり、
ヤングカンヌに出場のオーストラリアコンビからは
“作品にエキストラとして出てくれ”と演技させられたりと面白い出会いもあります。

⑤解説ツアーに参加する
会場にいると集団で観賞している解説ツアーらしきグループに
遭遇することがあります。

指南役の人がiPadを片手にこれぞというボードの前で動画をみせつつ、
解説するというものです。
たまたまなのですが、某グローバルエージェンシーのとあるグループの傍らで
聴いていたら、「どうぞ」と誘われて、参加させていただきました。
内容は単なる解説だけでなく、
“何がアイデアで、どう評価されたのか”というところまで踏み込んで
話をされていたのが印象的でした。

以上、キャンペーン系のShortlistやエキシビション観賞の話が中心となりましたが、
グラフィック系も同様です。

ショーアップされたセミナーに比べるとエキシビション会場は静かなのですが、
自分のお気に入りを発見するワクワク感、
“これはやられた”というアイデアと出会った時の悔しさ、
清々しさ、想定外の国際交流?など、
感情が高ぶる時間を過ごせることができるのではないでしょうか。

皆さんも世界から選りすぐられたアイデアに囲まれた熱い空気の中で、
テンション高くなる出会いを味わい、
アイデア発想のスキルアップをしてください!

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武田義史のカンヌの誘惑-④

第4話 あなたはエキシビション派?スクリーニング派?セミナー派?
実務につなげるカンヌの過ごし方

2013年も年の瀬となり、残りわずかとなりました。
早いことにカンヌから半年が経ち、
日々の生活の中でカンヌのことを考える時間は減りつつありますが、
その時に出会った数多くの刺激的な作品の記憶は色褪せることなく、
思い出すたびに感動が胸に込み上げてきます。

そのような一生の糧となる作品や体験と出会い、
その経験を実践に活かすことを前提に会場での過ごし方について
お話したいと思います。

カンヌのフェスティバルプログラムを大別すると
「エキシビション」「スクリーンニング」「セミナー」
「ワークショップ」の4つに分けることができます。
そのうち「ワークショップ」は
最近のカンヌ運営が力を入れている“熱い”プログラムなのですが、
何せ英語の壁があるため、私は参加したことがないことから、
「エキシビション」「スクリーニング」「セミナー」に
フォーカスします。

「エキシビション」とは、
主にグラフィック系(Print, Print craft, Outdoor, Design)や
キャンペーン系(Promo, Direct, Media, PR)の
Shortlist以上のエントリーボードが
地下ホールに一堂に展示されることを指します。加えて、
複数台のPCが設置されたINTERACTIVE KIOSKコーナーでは
CyberやMobileといったデジタル系部門のエントリーを
チェックすることができます。

言葉にするとボリュームが伝わりにくいので、
カンヌサイトから今年のエントリー数のデータをお借りして
説明します。
Shortlistに選ばれる数は大凡、エントリー数の10%前後くらいで
あることから計算するとPromoで約300枚のボード、
Cyberなら約250のWebサイトや動画を観賞することになります。
しかも全て英語です。全てを網羅するとなると、
相当なエネルギーを消費することが想像できますよね。

「スクリーニング」とは、映像系(Film, Film Craft)及び
新ジャンル系(Titanium & Integrated, Branded content & Entertainment)のCMやエントリービデオの上映です。
会場の上層階に点在する“AUDI”と呼ばれる小シアターや
大シアター“DEBUSSY”で観賞することができます。
カンヌ運営が発行したプログラムのスキャン画像を
ご覧いただくと分かると思いますが、
全てのエントリー作品を観ることが可能ですが、
その数はFilmだけでも3,125本!
全部を朝の8時半から夜の8時まで観るとなると、
座っているだけで腰が痛くなりそうな数字ですね。
「そこまでは…」という方、安心してください、
フェスティバル後半の木、金曜日にはShortlistのみを上映しますので
こちらをおススメします。

上記2つはいわゆる“アワード”の範疇に入るものですが、
近年、カンヌ運営が最も力を入れているのが「セミナー」です。
セミナーとは、世界の名立たるエージェンシー、グローバル広告主、
最近目立つところではGoogle, facebook, Twitterといった
プラットフォーマー、MicrosoftやAdobeといったITサプライヤーが
主催するプレゼンテーションやトークセッションです。
今年は7日間合計で60コマが開催されました。
会場は主にパレ・デ・フェスティバルを代表する2つのシアター「GRAN AUDITORIUM」「DEBUSSY」。
人気のセミナーは開始時間の1時間前から行列ができるほどです。
こちらから2013年のハイライトが見ることができます↓
http://www.canneslions.com/attend/the_festival/programme_highlights/

ここからがポイントです。
これだけのプログラム満載のカンヌの全部を観ようとすると
身体がいくつあっても足りないことから、
「エキシビション」「スクリーニング」「セミナー」の
どれを軸足に据えるのか?が結構大切になってきます。
3つの全てを総花的に観て回って、カンヌ全体の雰囲気を味わい、
刺激を受けてモチベーションを高めることも有益ですが、
現業の企画やアイデアに活かすことを望むのであれば、
1つ軸を決めて徹底的に深堀りすることをおススメします。

「エキシビション」「スクリーニング」といったアワードに関して、
GP金銀銅、いわゆるメダリスト作品は
当然賞賛されるべき素晴らしい挑戦の痕跡であり、
今後の指針となるのは間違いないので、
それらを押さえるのは必須です。
しかし、自分の日常業務と照らし合わせると、フィルムなら
”表現が過激でクライアントや社会が受け入れてくれない”、
キャンペーン系であれば
”クライアントは商品の売りにつながる企画を求めているのに、
ゴールが売りではない”という作品が多く見受けられます。

そこで、一段下がってメダリストの数倍以上あるShortlistを見渡すと、
企画の”突き抜け度”はややメダリストには劣るものの、
自分の現業と同じような課題をもち、
見事なアイデアで結果を残した素晴らしい作品に
多く出会うことができます。
また、数多くの作品を観ることで、
万国共通の普遍的な”気持ちの動かすツボ””行動を促すツボ”が
いくつも見えてきます。Shortlistはまさに宝の山ですね。

では私の場合はどうだったのか?
時間配分で表すと、エキシビション6:スクリーニング2:セミナー2。
私の現業がデジタルキャンペーンや
プロモーションが中心ということもあり、
カンヌに渡航する前から「エキシビション」「スクリーニング」の
観賞に最も多くの時間を割くことを予定していたので
・会期中、毎日午前にPromo,Direct,Media,PR,Outodoorの
 全てのプレ ゼンボード=Shortlistと、MobileのShortlist全てを
 KIYOSK端末でチェック。
・木曜日、金曜日の終日、Titanium & Integrated,とBranded content &
 EntertainmentのShortlistを集中してスクリーニングし、 
 Filmは帰国後Webで確認するということで現地では断念。
・「セミナー」は1日2コマを目安にトークセッションではなく、
 スライドを使ったプレゼンテーションが中心のセミナーを選択し、
 残りはセミナーを中心に参加している英語堪能な友人から
 ヒアリング。

以上の作戦で、
自分が最も重視したいキャンペーン事例収集活動に注力しながらも、
セミナーから得られる業界の動向、潮流、予兆も掴むことも
友人の協力を得て概ねカバーすることができました。
(もちろん、私の得た事例情報もギブアンドテイクで仲間に共有しています。)

キャンペーン業務に従事している方や
ニュートラルなアイデアで課題解決を目指す方は
私と同じ道筋を辿っていただくのも良いですし、
CMを極めたい方は全エントリー作品を4,5日間、
試写室に終日籠って観るのも良いですし、
これからの広告ビジネスの新たな戦略やアイデアを練りたい方は
セミナー漬けになるのも良いでしょう。

現地に参加するからこそ可能な“大局から俯瞰すること”と”
トコトン深堀して本質を追究すること”のバランスを上手く図って、
カンヌを皆さんの血肉としていただければと思います。

次回は皆さんにぜひ紹介したいShortlist作品と
エキシビション観賞のコツをお話します!

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武田義史のカンヌの誘惑-③

第3話「予習をして、言葉の壁を突破しよう!」

前回のコラムでは旅行手配やフェスティバルのエントリーについて
詳細を述べましたが、もう一つの壁があります。
それは“言葉”です。

カンヌはもちろんフランスですが、
フェスティバル自体の公用語は英語です。

英語堪能な人であれば問題ないですが、
英語をあまり得意としていない方が展示、
スクリーニング、セミナー、ワークショップと
膨大な情報量(お宝?)を限られた時間の中で、
実りある知識として多くも持ちかえるためには
事前の予習が不可欠だと思います。

自分の中に予め“広告業界の最新文脈”を持つことで、
例え英語が苦手であっても理解度とそのスピードが
格段に向上するのは間違いないです。

実際、私自身の英語力は中学生レベルですが、
今年は3年前に行ったときと比べて、
展示されているプレゼンテーションボードやスクリーニングで観た
プレゼンビデオを理解するスピードが、
実感値で3倍以上?にあがったと思いました。

今回は私なりのカンヌ予習方法をご紹介したいと思います。

最も大切なのは“英語”で理解すること。

幸いなことにWeb上には海外の広告関連サイトが豊富にあり、
公開されています。
まずは地味な作業ですが、
カンヌより前に開催された広告賞のWebサイトのWinnerに公開されている
プレゼンビデオやボード、セミナーレポートを読み込むことをおススメします。

内容を把握することはもちろん、
いくつも見ていると独特の言い回しや流行りの単語、
作品であれば何通りかのフォーマットが見えてくるので、
カンヌを読み解く文脈や勘所が頭の中にできてくるはずです。

私自身が参考にしているのは以下の通りです。

カンヌと同じ運営会社が主催しており、ほぼ同じフォーマットの
SpikesAsia(9月:アジア)
http://www.spikes.asia/

EuroBest(12月:ヨーロッパ)
http://www.eurobest.com/

各リージョンの最大規模の広告祭である
Golden Drum festival(10月:ヨーロッパ)
http://www.goldendrum.com/

Adfest(3月:アジア)
http://www.adfest.com/

New York Festivals(5月:国際広告祭だが、アメリカが多い)
http://www.newyorkfestivals.com/

カンヌと並ぶ、世界三大広告祭の
・OneShow(5月)
http://www.oneclub.org/

・Clio(5月)
http://www.clioawards.com/

これらサイトは各フェスティバル開催と同タイミングで
その受賞作品を公開するため、
その都度チェックすることで、定期的に英語に触れる良い機会となっています。
当然、同じ作品が異なる広告祭で受賞しているケースが多々ありますが、
それはカンヌでの有力候補です。
また、アジア系の広告祭でも
オーストラリアやニュージーランドといった統合系に強い国も含まれているので
侮れません。
今年のカンヌを席巻した「Dumb ways to die」が事前のAdfestで
グランプリを受賞していることからも証明しています。

もうひとつはカンヌ常連の有力エージェンシーのサイトです。
特にセミナーの場合は登壇するスピーカーの方が
自社や自グループの事例を題材に話す場合が多いので、
事前に調べておくとセミナーで何について語っているのか?を
把握するのに大いに役に立ちます。

Wieden + Kennedy:http://www.wk.com/

Crispin Porter + Bogusky:www.cpbgroup.com/

Droga5:http://www.droga5.com/

R/GA:http://www.rga.com/

AKQA:http://www.akqa.com/

といった超常連はもちろん
Dove Real Beauty sketches など勢いのある、
ブラジルの世界No1クリエイティブエージェンシー
Ogilvy Brasil:http://www.ogilvy.com.br/

Bridge of life など、プレゼンビデオのクオリティも高い韓国の
Cheil worldwide:http://www.cheil.com/

ビール会社の“アリバイ電話BOX”、エアコンのCM“ブリーフおじさん”など
コミカルなクリエイティブで毎回大爆笑の、
個人的に好きなエージェンシーである
Del Campo Saatchi & Saatchi :http://www.delcamposaatchi.com/
も注目です。

各サイトともにアップされている事例数は少ないですが、
“Work”“Case”というページを設けてケースビデオを公開しています。

また、時間がないので手っ取り早く調べたいという方には、
Leo BurnettがPinterest上で毎年直前に
“Cannes Predictions”という予想まとめをアップしておりますので、
こちらを参考にすると良いでしょう。
http://www.pinterest.com/lbcannespredict/

今回のコラムは現地情報から少々離れてしまい、
リンク集のような様相となってしまいましたが
英語対策のみならず日常業務のヒントとしても活用できますし、
これらの作品が一堂に会するカンヌを想像するとワクワクしてきて、
ますます現地に行きたくなりませんか?
次回からは展示やセミナーの観賞についてご紹介したいと思います。

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武田義史のカンヌの誘惑-②

第2話「若者にやさしいカンヌ ~ 費用と旅行手配の話」

前回のコラムで「若いうちにカンヌに行こう!」と書きましたが、
現実は簡単ではないですよね。
ヤングカンヌ代表や会社の視察団に選ばれることがベストですが、
皆がそういかない訳ですし。
”中古車1台買える”と言われる費用や遠い異国の地方都市で開催される
イベントの旅行手配を考えると躊躇してしまうものです。

では実際はどうなのでしょうか?

□ツアーに参加する
手配の手間と安心感を考えれば、
ケイライントラベルさんや近畿日本ツーリストさんの主催するツアーに
参加するのが確実だと思います。
(私も1回目はケイライントラベルさんにお世話になりました。)
主なメリットとしては、「入場登録を代行してくれる」
「飛行機の乗り継ぎやニース空港からカンヌ市内までの移動がスムーズ」
「ホテルが会場に近い3つ星から4つ星クラス」
「何度もカンヌに来ている添乗員数名が現地でアテンド」
ということでストレス少なく、フェスティバルに集中できるところにあります。
初めてのカンヌの場合は、心おきなくカンヌを堪能できることは大切ですよね。

肝心の費用ですが、今年の某ツアーの全日フルデイパス付で大人が約90 万円、
ヤング(28歳以下)は入場料が半額なので推定70万円強。
少々値は張りますが、その半分近くが入場料と考えれば、妥当ではないでしょうか。
とはいえ、会社勤めの身として若者でなくとも、この金額は辛いです。

□自力で手配する
ツアーに頼らないとなると、英語サイトで「入場登録」し、
激混みかつハイシーズン料金の中からベストを探す「ホテル予約」、
どの都市を経由してニース空港にたどり着くのか悩ましい「飛行機予約」と
旅計画好きにとっては楽しいプロセスですが、
そうでない人には結構な手間が待っています。
(ホテルと旅行会社に手配してもらうという手もありますが、、、)

・入場登録 会場への入場期間、アワードセレモニーへの参加、
      オープニング/クロージングパーティへの参加などを条件に
      いくつかのパッケージになっています。
      現地の会場でも登録できますが、英語が得意でない方は
      カンヌライオンズサイトからオンラインで予約することを
      おススメします。
      顔写真の画像もアップロードしておけば会場での手続きも、
      よりスムーズです。
      肝心なのは、どのパッケージで申し込むのか?ですが、
      カンヌライオンズのサイト、
      The Festival→Delegate package から入ると
      以下の料金表が現れます。

 

仮にレートを1ユーロ=133円で2013年料金を換算すると、
FULL: 7日間通しパス。2,550ユーロ(税込3049.8ユーロ)≒40.3万円
4DAY: 日曜日から水曜日までのパス。2,200ユーロ(税込2631.2ユーロ)≒34.8万円
3DAY: 日曜日から火曜日までのパス。1,950ユーロ(税込2332.2ユーロ)≒30.8万円

以下は28歳未満(フェスティバル開催時点で)を対象としたヤング料金は
FULL: 7日間通しパス。1,295ユーロ(税込1548.82ユーロ)≒20.5万円
4DAY: 日曜日から水曜日までのパス。725ユーロ(税込867.1ユーロ)≒11.5万円

      決め手となるのは最終日のFilm/Titaniumなどの目玉部門の
      アワードセレモニーやその後のクロージングパーティに
      参加したいかどうかではないでしょうか。

      ヤング料金の4DAYの場合であっても、
      Promo/Direct/PR/Media/Mobile/Cyber/Design/Pressの
      アワードセレモニーとヤング限定オープンニングパーティに参加できて
      11万円強と大人料金と比較してかなりおトクなことが分かります。
      作品観賞重視のキャンペーン系、
      デジタル系のクリエーターやプランナー志向の若者であれば、
      この選択はアリですね。若さが羨ましい。。。

・ホテル予約 “エクスペディア”“Booking.com”といった
       海外旅行予約サイトを活用する他に
        カンヌライオンズのサイトからも紹介してもらえます。
        いずれにせよ、初めての カンヌの場合に優先すべきは
        “会場との距離”ではないでしょうか。
        徒歩で10分以内、立地としてはカンヌ駅と
       クロワセット通りの間のエリアが理想です。
        この辺りの3つ星、2つ星ホテルを探したいところですが、
       今年は1.5カ月前で既に満室だらけ。
       なんとか見つけたところは、カンヌ駅の目の前、
       会場まで5分もかからずの便利な立地の3つ星で
       1泊230ユーロ。もう少し早く予約していたら
       1泊150ユーロ前後の三つ星、100ユーロ前後の二つ星が
       取れたのかもしれません。

        3、4名のグループであれば、スタジオやアパートメントを
        シェアする方法があります。
        私が探していたときも
        会場から近い良さそうな物件が残っていました。
        1名1泊100ユーロ前後で宿泊できるみたいです。
        旅慣れた人にはカンヌ市内ではなく、
        電車で10分ほどの隣町アンティーブに宿泊するという手もあります。
        アンティーブは海沿いにピカソが一時期住んでいた城がある、
        城壁に囲まれた海沿いの旧市街です。華やかなカンヌに対し、
        アンティーブは素朴な雰囲気で落ち着けるみたいですよ。
        カンヌのへの移動は路線バスか電車となりますが、
        電車はたまにストで止まる時があるのと、
        夜遅くまで飲んでいると
        タクシーで宿に戻らなれければならないことを補足しておきます。

・飛行機予約  カンヌの最寄り空港はニース・コートダジュール空港です。
        日本からの直行便はないので
        ヨーロッパ主要都市の空港から乗り継ぎとなります。
        目安としてサーチャージ込で往復13、4万円前後だと
        おトクな方だと思われます。
        航空会社はそれぞれのお好みや貯めているマイルの問題が
        あることからココがおススメと言い難いのですが、
        私のカンヌ仲間はエールフランス、KLM、アリタリア、
        スイスエアー、ルフトハンザ、エミレーツ、
        JAL等を利用したそうです。
        私自身、今年は各航空会社サイトでシミュレーションした挙句、
        エールフランスを利用しました。
        「エアバスA380が就航している」
        「追加料金70ユーロで非常口前座席の予約可能」
        「予約サイトが使いやすい」が主な理由です。
        特に足を伸ばせる席を確実に予約できるのは嬉しかったのですが、
        結果として行きは別な心配事が発生したため、
        ヒヤヒヤして落ち着かなかったです。(詳細は次回以降に)
        エールフランスを予約する際はニース便への乗り継ぎが
        オルリー空港のケースがあるので要注意です。
        大荷物を持って電車もしくはバスで移動するのは
        できれば避けたいですよね。
        フランクフルト経由の場合も税関申告が厳しいと聞いていますので、
        事前に調べた方が良いと思います。

・その他    ニース空港とカンヌ市内を往復するエアポートバスですが、
        こちらサイトから時刻の確認と予約可能です。
        http://www.niceairportxpress.com/
        カンヌ市内までは20ユーロ。事前予約なしでも、
        空いていればバス乗車時にその場の現金払いで乗れます。

 
(2013カンヌのイメージビデオ ↑ )

最後のまとめとして、
28歳以下の若者が自費でカンヌに行く場合の費用を低く見積もると

・入場料:4DAY Young Lions 867.1ユーロ 11.5万円 ※2013年料金
・宿泊費:2つ星ホテルもしくはアパートシェアで5泊 500ユーロ  6.6万円
・飛行機:航空会社こだわらず。最低価格より少し高め 15万円 
・ニース空港往復:エアポートバス 40ユーロ 0.5万円
合計で33.6万円。

実際は宿泊費と飛行機代を少し高く見込んでも
40万弱とちょっとした海外旅行に行くくらいの費用と
言えるのではないでしょうか。

今回は費用の話が中心となり、少々生々しくなってしまいましたが、
1番伝えたかったのは海外旅行1回分の自己投資で、
人生を変える刺激や出会いを手に入れられるということです。
若者だけの特権ですので、ぜひ活用して参加してください!

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武田義史のカンヌの誘惑-①

第1話「カンヌは若いうちに行け」

カンヌラインオンズ2013が閉会してから、1カ月半。
カンヌライオンズ公式サイトのWinners & Shortlistsページも
先日閉ざさされましたが、
広告関係各社での社内報告会や関係者による
公開のカンヌセミナーが各地で開催され、
未だ”カンヌ熱”覚めやらぬ空気が漂っています。

はじめまして。武田義史と申します。
簡単に自己紹介しますと、約18年間、広告制作会社で
プロモーション領域を起点とした
コミュニケーションプランニング&プロデュースに携わり、
今年7月に広告会社に転職。
現在はインタラクティブ領域を中心に、
これからの広告コミュニケーションのあり方を模索、
実践する日々を過ごしています。

このコラムの主旨は、一度もカンヌに現地参加したことがないかた、
特に20代の若い人達に向けた“誘い”です。
というのも、私が初めてカンヌに参加したのは
2010年、38歳のとき。
初めてのカンヌに感激した一方で、
もっと早くこの世界を知っていたら人生変わっていた、と
後悔の念に駆られたことを覚えています。
英語が得意でなくても、素晴らしいエントリーは言葉だけでなく、
社会背景、文化も越えて、心を動かすものです。
それらは一見すると「日本の社会では無理」
「クライアントに採用されない」と思えるものも多数ありますが、
その根底にある“”人の心を動かし、行動を引き起こす”アイデアは、
生活者が情報にセレクティブになった日本で
コミュニケーションを用いて課題解決を行おうとしている私たちに
普遍的なヒントを与えてくれます。

これらの普遍的なアイデアの引き出しを
若い時から多くストックしていたら、
もっと質の高いアウトプットを企画プロデュースできたのでは?
ビッグアイデアが思い浮かんだのでは?と
思うことがしばしば…

また、時差ボケが解消しない中、
朝9時からキャンペーン系部門の展示や
映像系部門のスクリーニングを観賞、
セミナーやアワードセレモニーに参加、
その後夜中まで仲間と飲みながら語らうことが1週間続くとなると、
好きなこととは言え、歳をとるとフィジカル面で辛くなってくるのが
正直なところです。
気力と体力に満ち溢れ、これから自分のワークスタイルを
確立しようしているヤング層のみなさんであれば、
カンヌが与えるくれるものを100%吸収できるのでは
ないでしょうか。
これから数回に分けて、カンヌの魅力や参加方法や
現地で役立つ情報について紹介していきますが、
私の2回の経験のみでは当然狭い…ですよね。

そこで、カンヌ現地や日本で出会い、
現在も交流が続く“カンヌ仲間”から得た情報も交えて
“カンヌを愛する者たちの集合知”をもって、
みなさんをカンヌに誘いたいと思います!

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