熊埜御堂由香 14年8月10日放送
mumchancegaloot
5.香りのはなし ある調香師の仕事論
世界的に有名な調香師、
ジャン=クロード・エレナ氏は、自らの仕事を
こう定義している。
調香師とは、香りの文筆家のようなものだ。
そして、香水とは、匂いの書いた物語だ。
彼の代表作として知られる、エルメスの庭シリーズ。
『ナイルの庭』『地中海の庭』『屋根の上の庭』。
まさに小説のタイトルになりそうな名をもつ。
彼の調香スタイルは、愛用のモレスキンの手帳を携え、
南仏のグラースに構えたラボラトリーから、旅に出ること。
『地中海の庭』の調香をはじめた時のことだ。
チュニジアにある友人の家でパーティをしていると、
庭にでて、微笑みながら、いちじくの葉をちぎって、
香りをたしかめている女性を見かけた。
その瞬間、香りのイメージが、浮かんだ。
急いで、ラボラトリーに戻り、香りを組み立てていった。
こうした瞬間が重なって、
エルメスの香水の売上を三倍に跳ね上げたとまで
いわれる香水群は世に生まれた。
彼は自分の仕事について、こうも語っている。
もらった自由は、仕事の成功でしか、返せない。