佐藤理人

佐藤理人 15年7月26日放送

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idovermani
あの人の歌詞 曽我部恵一

NEW YORKと書かれたTシャツは着ても、
東京と書かれたTシャツを着る日本人は少ない。

もっと自分の国の言葉で自分のことを歌いたい。
曽我部恵一が歌詞を書くとき最も大切にするもの。
それはリアリティ。

何も起こらない日々のふとした感情を、
目の前の誰かに語りかけるように歌いたい。
まるで喫茶店における一対一の会話のように。

四六時中、歌と言葉のことを考え続け、彼は悟る。

 理想は小学生の作文だ

ついうまいことを言いたくなる心を抑えて、
そのままの真実をそのままガーンと歌えばいい。

 絵空事って全然気持ちよく歌えない

テクニックをあえて排除するという、
優れたテクニックがそこにはある。

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佐藤理人 15年6月27日放送

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ドラえもんの作り方①「ポロンちゃん」

 破滅だ! 
 
1969年のある日、漫画家藤子・F・不二雄は、
そう叫びながら自宅の階段を駆け下りた。

新連載のアイデアが何ひとつ思い浮かばない。
焦燥感に駆られて廊下に足を踏み出した瞬間、
何か丸いものに躓いた。 

 ポロン♪

それは娘の起き上がりこぼし。人形が奏でる音に合わせて、
頭の中に散らばったパズルのピースが次々とハマっていく。
 
近所のどら猫。未来のロボット。
ポケットの中の秘密道具。タイムマシン。

 パパ、ポロンちゃんを蹴飛ばしちゃダメッ!

娘の声で我に返ると、そこにはもうドラえもんがいた。

それから半世紀近くに渡り、
自分の発明が世界中の子供達を虜にすることなど、
彼はまだ知る由もなかった。

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佐藤理人 15年6月27日放送

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panDx1
ドラえもんの作り方②「少年の心」

子どものリアルな姿を描く。
それは漫画家にとって最も難しいことのひとつ。

目線の高さに気づかず、
つい子どもの姿をした大人を描いてしまう。

しかし「ドラえもん」の作者、
藤子・F・不二雄はそんな悩みとは無縁だった。

彼は執筆の合間を縫って、
三人の子どもたちにたくさんの本を読んであげた。
トムソーヤの冒険。ファーブル昆虫記。
子どもの目線で共に驚き、ワクワクすることで、
自分もまた一人の子どもに還ることができた。

彼のタイムマシンは引き出しの中ではなく、
本棚にあった。

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佐藤理人 15年6月27日放送

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ドラえもんの作り方③「感動の味」

大長編ドラえもんのシリーズ第一作、
「のび太の恐竜」は「野生のエルザ」から生まれた。

親を失った子ライオンのエルザを育てたのち、
野生を取り戻すためサバンナに帰す感動の実話。

「ドラえもん」の作者、藤子・F・不二雄は、
愛する者を愛するが故に突き放す、
その自己犠牲の心に感銘を受けた。

「のび太の恐竜」のラストシーンは、
目の肥えた大人も唸る辛口のハッピーエンド。

子ども向けの漫画だからこそ、
メッセージはお子様ランチにしない。

それもまた、
映画を観てくれる子どもたちへの愛だった。

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佐藤理人 15年6月27日放送

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ドラえもんの作り方④「SF」

 ありそうもない話をありそうに描きたい

それが「ドラえもん」の作者、藤子・F・不二雄の夢。

日常のありふれた出来事ほど、
視点を変えればワクワクする冒険になる。

彼は言う。

 僕にとってのSFは、
 サイエンスフィクションではなく、
 「少し不思議」のこと

民話や伝承など、この世の言い伝えの多くは不思議な話。
昔々、おじいさんがおばあさんと若い娘と三角関係に落ちて…
といったリアルな話はひとつもない。

想像力。それは神様が人間にくれた、
現実を生き抜く力なのだろうか。

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佐藤理人 15年5月9日放送

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Chris.L.Dodds
白昼夢を見る方法①「デヴィッド・リンチ」

 映画は説明できない
 美しい言語のようだ

幻想的な映像と奇想天外なストーリーで

 カルトの帝王

と呼ばれる映画監督デヴィッド・リンチ。

その独特すぎる世界観は、
40年以上続けている
一日2回の瞑想から生まれる。

心の奥底で見た景色は
一体何を意味するのか。

その謎を解くために彼は映画を作る。
あえて脚本は完成させず、
直感の赴くままに撮っていく。

意味不明と評されることも多いリンチの映画。
しかし考えてみれば人生に意味など存在しない。

答えはいつも自分の心の中にある。

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佐藤理人 15年5月9日放送

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nicoleleec
白昼夢を見る方法②「スティーブン・キング」

 人間は起きているときでも
 創造的に眠ることができる

ホラー小説の巨匠スティーブン・キング。
まるで夜、眠りにつくように
彼は毎日欠かさず執筆した。

誕生日もクリスマスも休まず、
一日2千語というノルマを達成するまでは
決してペンを置かなかった。

目覚めながら見た鮮やかな白昼夢が、
文字になり紙やデータに記録されていく。

心ゆくまで眠るための完全なプライベート空間。
彼にとって書斎はもうひとつの寝室だった。

ただしそこで見る夢は
世にも恐ろしい悪夢に違いない。

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佐藤理人 15年5月9日放送

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Alain Picard
白昼夢を見る方法③「チャールズ・シュルツ」

スヌーピーのモデルは、
13歳のときに飼った雑種犬だった。

漫画家チャールズ・シュルツは
この世界一有名な犬が出てくる漫画「ピーナッツ」を
新聞に毎日、半世紀に渡って連載し続けた。

その数、約18,000話。
それだけの物語をどうやって考えついたのか。
方法はあっけないほどシンプルだ。

 ただ座って過去のことを考える

スヌーピーの飼い主チャーリー・ブラウンは言う。

 人生という本は
 最後の方を見たって
 答えなんか書いてないのさ

未来のヒントはいつも過去に隠れている。

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佐藤理人 15年5月9日放送

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m kasahara
白昼夢を見る方法④「モートン・フェルドマン」

ヨーロッパ人に牛耳られたクラシック界を
ニューヨークから変えてやる。

そんな想いで音楽界に飛び込んだ、
アメリカの作曲家モートン・フェルドマン。
そこには常に伝統の壁が立ちはだかった。

そんなある日、実験音楽家ジョン・ケージが
アドバイスをくれた。

 作曲したものを書き写してごらん

書き写している間はその曲にだけ集中できる。
余計な雑念をシャットアウトすることで、
彼の頭には次々と新しいアイデアがひらめいた。

そうして生まれたのが、
世界で初めて絵と記号で描かれた楽譜、

 図形楽譜

絵の解釈によって演奏が異なる
結果の見えない音楽。

そんな彼の曲には意外にも、
日本人のファンが多いそうだ。

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佐藤理人 15年4月5日放送

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作家たちの副業① 「エリオット」

詩人T.S.エリオットの副業は銀行員だった。

通勤する大勢のサラリーマンを見て、

 白アリの群れ

と笑い、自分の職場について

 死ぬまでここにいると思うとゾッとする

と嘆いたが、
内心では定職があることに感謝していた。
文学仲間が独立資金の提供を申し入れたときも、
仕事がもたらす安定を選んだ。

1948年。定年を迎えた年に、
彼はノーベル文学賞を受賞する。

金のために書くのではない。

仕事柄、お金の価値を知り尽くしていたからこそ、
彼は決して自分を安売りしなかった。

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