作家たちの副業② 「メルヴィル」
作家ハーマン・メルヴィルの副業は農家だった。
広大な畑に面した書斎の窓から見える景色は、
まるで大西洋を進む船から
外を眺めているようだった
代表作「白鯨」はこの部屋で生まれた。
冬の夜、風のうなり声を聞きながら
畑に降り積もる雪を見ていると、
白くて巨大な何かに
世界が吸い込まれていく気がした。
それはエイハブ船長ら乗組員が、
物語の最後で鯨のモビーディックに倒され、
海に飲み込まれていく様に少し似ていた。
作家たちの副業② 「メルヴィル」
作家ハーマン・メルヴィルの副業は農家だった。
広大な畑に面した書斎の窓から見える景色は、
まるで大西洋を進む船から
外を眺めているようだった
代表作「白鯨」はこの部屋で生まれた。
冬の夜、風のうなり声を聞きながら
畑に降り積もる雪を見ていると、
白くて巨大な何かに
世界が吸い込まれていく気がした。
それはエイハブ船長ら乗組員が、
物語の最後で鯨のモビーディックに倒され、
海に飲み込まれていく様に少し似ていた。
作家たちの副業③ 「アシモフ」
SF作家アイザック・アシモフの副業は
お菓子屋さんだった。
父親が経営する何軒もの店を
彼は大人になるまで手伝った。
営業時間は朝の6時から夜中の1時まで。
休みはない。
私は今も、これからも、
ずっとあの菓子屋にいる
幼い頃、体に刷り込まれた一生懸命働く歓びが、
作家になった後も彼を突き動かし続けた。
なぜ休むより働く方が好きなのか。
それはサイエンスでは解けない謎だった。
作家たちの副業④「ダーウィン」
生物学者チャールズ・ダーウィンの副業は
地質学者だった。
ヒトはサルから進化した。
そんな話が19世紀のイギリスで
受け入れられるはずがない。
学会から追放されるだけでなく、
教会から断罪されるかもしれない。
だから彼は身分を偽った。
地質学に関する本を何冊も書き、
科学界で信用を高めることに努めた。
1859年、ついに「種の起原」を出版。
最も強い者が生き延びるのではなく、
最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残るのは、変化できる者である。
「進化論」は、初めは激しく批判されたが、
次第に受け入れられ始めた。
世の中が進化するまでに、
彼は30年近く待たなければならなかった。
作家たちの副業⑤ 「フォークナー」
作家ウィリアム・フォークナーの副業は
発電所の管理人だった。
昼起きてから夜勤に向かうまでの数時間を、
若きフォークナーは有効に使った。
そうして生まれたのが出世作「響きと怒り」。
1949年、ノーベル文学賞をもらってからも、
彼の創作意欲はいささかも衰えることはなかった。
私は魂に動かされたときに書く。
そして魂は毎日、私を動かす。
書かずにはいられない。その性こそが才能。
作家たちの副業⑥ 「カフカ」
作家フランツ・カフカの副業は公務員だった。
仕事はラクで短く、
実家暮らしで身の回りの心配もない。
しかし彼は不満だった。
時間は足らず、職場は不快で、
アパートはうるさい。
貴重な執筆時間であるはずの夜も、
明日彼女から手紙が来るだろうか、
来るとしたら何時だろうか、
そんなことばかり考えていた。
不眠症のせいで常に不安だったカフカ。
職場にある大きな台車が、彼には、
自分のために作られた棺桶に思えた。
どこへも行けない。何にもなれない。
傑作「変身」は、そんな絶望が生んだ、
やぶれかぶれの願望だったのだろうか。
作家たちの副業⑦ 「クリスティ」
ミステリ作家アガサ・クリスティの副業は主婦だった。
いや、作家こそが副業だったと言うべきか。
書類の職業欄に彼女はいつも「主婦」と書いた。
作家としての自覚どころか、自分の机さえなかった。
だから、取材があるといつも困った。
記者は必ず机の前で写真を撮りたがるからだ。
一体いつどこで書いているのか。
それが彼女の最大のミステリ。
作作家たちの副業⑧ 「トロロープ」
作家アンソニー・トロロープの副業は官僚だった。
郵政省で働くかたわら、
19世紀のイギリスで最も成功した作家となった。
執筆に適した時間は一日3時間
集中力を高めるために
15分できっかり250語書く訓練をした彼は、
自分より時間に厳しい下男が
毎朝5時半に淹れるコーヒーを飲みながら、
出勤前にその日のノルマを書き終えた。
この並外れた勤勉さは
人気作家だった母親の影響である。
彼の母、フランシス・トロロープが
小説を書きはじめたのは53歳。
6人の子供と病気の夫を養うために
お金が必要だったというのがその理由。
彼女は毎朝4時に机の前に座り、
執筆を終えてから朝食の支度をしたという。
創造のジンクス①「ウルフの裸」
トマス・ウルフは焦っていた。
初の長編小説「天使よ故郷を見よ」を
書いた情熱がどうしても取り戻せない。
その夜もまた彼は
インスピレーションを得られぬまま
服を脱ぎベッドへ向かった。
しかし裸で窓の前に立った瞬間、
書くことへの情熱がみるみる溢れてきた。
以来、創作で行き詰まるたび、
彼はこの方法で執筆意欲を高めた。
背が2mあり、冷蔵庫を机代わりにするほど
身体的に発達していたウルフ。
自らの肉体美を愛でることで、
内なる野生を呼び覚ましていたのだろうか。
創造のジンクス②「ベートーヴェンの手洗い」
ベートーヴェンは一日に何度も手を洗った。
洗面台の前に立ち、大声で音階を唱え、
鼻歌を歌いながら水差しで手に水をかけた。
それから目をギョロギョロさせて部屋中を歩き回り、
何かメモしたかと思うと再び洗面台の前へ。
手洗いは彼に取って大切な瞑想の時間だった。
しかし大量の水漏れに怒った大家が
しょっちゅう怒鳴り込んで来た。
二人が罵り合う間に一体どれだけの名曲が
床に吸い込まれてしまったことだろう。
創造のジンクス③「ハイスミスのカタツムリ」
「太陽がいっぱい」の作者
パトリシア・ハイスミスの家は、
カタツムリでいっぱいだった。
カタツムリを見るとなぜか落ち着くの
彼女はカタツムリを300匹も飼い、
100匹を巨大なハンドバッグに入れて
パーティのお供に連れて来た。
その後フランスに引っ越したときは、
カタツムリの持ち込みが禁止されていたため、
胸の下に10匹ずつ隠して国境を何往復もしたと言う。
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