TANAKA Juuyoh
レンジの流儀④「弔辞」
原田芳雄に向かって自分が弔辞を言う、
こんな馬鹿げた悪ふざけはあるだろうか。
本当に悲しい時、
人は映画みたく泣いたりしない。
原田芳雄の葬儀で石橋蓮司は怒った。
芳雄の業績なんか称えたくないし
人に伝えなくていい。
ただただ、オマエが今
ここにいてくれればいい。
ほらみろ、
破綻してしまったじゃないか。
おまえが悪い。
悲しみと悔しさで千々に乱れた心で
冷静に弔辞の準備なんかできやしない。
だから彼は言った。
これは映画の一場面として、
アドリブで何か喋ってみる。
最後に共演した映画のこと。
これから二人でやりたかったこと。
たった一人の観客に向かって、
彼は思いの丈をぶちまけた。
親友を超えた戦友を失って悲しむ
ひとりの男の素顔がそこにあった。