キングの道具箱⑥「ストーリー」
物語とは地中に埋もれた化石
のようなものだ
スティーブン・キングは言う。
作家は道具箱を使って
化石をできるだけ完全な形で
掘り出さなければならない。
すべての物語には固有の形がある。
しかしどんな形をしているかは、
掘り出してみるまでわからない。
大切なのは形に逆らわないこと。
作家の仕事はストーリーに成長の場を与え、
それを文字にすることだ。
私は主人公を窮地に立たせ、
どう脱出するか見守っているだけだ。
小説は単にその成り行きを、
書き留めたものに過ぎない。
書いている本人にも結末はわからない。
予め筋書きを立てることにも
キングは懐疑的だ。
そもそも人生に筋書きがあるかい?
仏師の円空は
木に棲む仏像を取り出した
と言い、彫刻家ミケランジェロは
石に囚われた天使を自由にした
と言った。
古今東西、創造とは即ち、
美の発見のことらしい。