佐藤理人

佐藤理人 13年6月9日放送


Il Fatto Quotidiano
ロックの日⑤「タウンゼント」

ギターをステージに叩きつけて破壊する。
ロックコンサートでよく見る
あのパフォーマンスはこの男の発明だ。

The Whoのピート・タウンゼント。

彼が最初にギターを壊したきっかけ。
それは思い通りの音が出せずにムカついて、
ステージの床に叩きつけたこと。

彼にとって破壊は、

 音楽と自分の間にある溝を埋める行為

だった。

しかし彼が壊すのはギターだけではなかった。
ドラム、アンプ、衣装、その他ステージ上のありとあらゆる物、
さらにホテルの部屋にまで及んだ。そのためツアーを終えると、
収支がマイナスになることも珍しくなかった。

彼曰く、

 何で酔っぱらうとホテルの部屋をぶっ壊しちまうのか
 自分でもわからないけど、正直言って、
 悪いことをしたとはこれっぽっちも思わない。

さすが「ギター破壊数」のギネス記録を持つ男は言うことが違う。

今日は6月9日、ロックの日。

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佐藤理人 13年6月9日放送



ロックの日⑥「ヘンドリックス」

60年代末、
アメリカで生きる黒人に神は不在だった。

ベトナム戦争や人種差別に、
宗教は何もしてくれなかった。

少なくとも、
ジミ・ヘンドリックスにはそう見えた。

 俺にとっては音楽が宗教なんだ。
 来世でも音楽が待っててくれるさ。

彼は自らの音楽を

 エレクトリックチャーチ

と呼び、内なる神を探した。

27歳の若さでこの世を去ったジミ。
彼はいまギターの神様として、
多くのギタリストに
ロックンロールを伝道し続けている。

今日は6月9日、ロックの日。

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佐藤理人 13年6月9日放送


nikoretro
ロックの日⑦「フレディ」

 僕が死んでも
 誰が気にする?

インタビューでそう語った10日後、
フレディ・マーキュリーはエイズを公表。
その翌日、この世を去った。

世界に先駆けて人気に火がついたここ日本で、
度々クイーンブームが起きていることを知ったら、
天国の彼は喜んでくれるだろうか。

今日は6月9日、ロックの日。

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佐藤理人 13年6月9日放送



ロックの日⑧「ライドン」

破れた服に安全ピンをつけ
髪の毛を逆立てても
パンクになれるわけじゃない。

パンクバンドの代名詞、
セックスピストルズのジョン・ライドン。

英国王室から大物ロックバンドまで、
あらゆる権威に彼は唾を吐き散らした。

 神(God)なんて逆から綴れば
 ただの犬(Dog)じゃねえか。

神でさえその攻撃の手を
逃れることはできなかった。

しかし空に向かって唾を吐けば、
その唾は自分に降り注ぐ。

ライドンはイギリス中の保守派を敵にまわした。
暴漢に左手を刺されギターが弾けなくなり、
やがてイギリスに住むことさえできなくなった。

人生を賭けた反骨精神。
それこそがパンクスピリット。

今日は6月9日、ロックの日。

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佐藤理人 13年5月11日放送



数学者のスイッチ①「ニュートンとハレー」

万有引力を発見したニュートンの元を、
ハレー彗星の発見者ハレーが訪れた。

彗星が引力で地球の周りを
回っていることは知っていたが、
その軌道がわからなかったのだ。

ニュートンに尋ねると即座に
「楕円だ」と答えた。
計算式を見せて欲しいと頼むと
「後で送る」と言われた。

返事が来たのはそれから約2年も後のこと。
届いたのは分厚い論文だった。これが、

「自然哲学の数学的論理」

通称「プリンキピア」と呼ばれるもの。

ガリレオやコペルニクスたち先人が成し遂げてきた
数学、天文学、物理学の発見の数々。

それらをひとつに体系づけたこの論文は、
自然の仕組みを数学的に解明した初めての書であり、
近代科学の夜明けであった。

熱心なキリスト教徒だった
ニュートンにとってこの宇宙は、

数字で記された聖書

だった。

彼は誰にも真似できない方法で、
神への愛を示してみせた。

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佐藤理人 13年5月11日放送



数学者のスイッチ②「ハミルトンと橋」

1843年のある日。
数学者ウィリアム・ハミルトンが
近所の橋を渡っていると突如天啓が訪れた。

四元数

という新しい代数の概念を思いついたのだ。

感動のあまり彼は、
数式をナイフで欄干に刻みつけた。

しかしこの理論は難解すぎて、
理解できる人は誰もいなかった。

10歳で10ヶ国語を話し、

ニュートンの再来

と呼ばれた彼は
残りの人生をその研究に費やしたが、
ついに理解されることなくこの世を去った。

彼の理論が役立ったのは、
それから150年も後のこと。

ロボットや宇宙船を制御する
コンピュータグラフィックスに欠かせない、
遥か未来のアイデアだったのである。

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佐藤理人 13年5月11日放送



数学者のスイッチ③「コワレフスカヤと文学」

ロシアが生んだ世界初の女性教授、
ソフィア・コワレフスカヤ。

彼女は、フランス最大の科学賞に輝く
優れた数学者である一方、
ヨーロッパ中で翻訳が出版されるほどの
ベストセラー作家でもあった。

数字に飽きると文字へ。
そしてまたその逆へ。

数学者は詩人でなければなりません

そう言ってコワレフスカヤは、
解釈がただ一つしか許されない世界と
無数に存在する世界を自由に行き来した。

彼女が得意としたもの。それは、

楕円関数

通常の円とは異なり、
楕円には焦点が2つある。

数学と文学。
両方に軸足をおいて活躍した、
実に彼女らしい選択だった。

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佐藤理人 13年5月11日放送


V. Ganesan
数学者のスイッチ④「ラマヌジャンと神様」

インドのマドラス大学には、
数学の公式で埋め尽くされた3冊のノートが
大切に保管されている。

今もなお世界に衝撃を与え続ける、
シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの
「ノートブック」だ。

15歳で数学を学び始めた彼は、
6000個の公式を独学で理解しただけでなく、
新しい公式を見つけると、
次々とノートに書いていった。

しかし26歳でケンブリッジ大学に招かれると、
ある問題が起きた。
それらの公式を証明できなかったのだ。

人間離れした直観力と計算力を持ち、

南インドの魔術師

と呼ばれた彼の頭脳には、
初めから「証明」という概念が欠けていた。

どうして思いついたのか聞かれると彼は、

神様が夢の中で教えてくれた

と答えた。

過度の菜食主義による栄養失調と
研究の無茶がたたり、
ラマヌジャンは32歳の若さでこの世を去る。

それから100年近くたった今もなお、
彼が遺した3254個の公式は
解き尽くされていない。

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佐藤理人 13年5月11日放送


Bob Lord
数学者のスイッチ⑤「チューリングとエニグマ 1」

かつてチャーチルは言った。

私が本当に恐れたのはUボートだけだ

第二次大戦でイギリスは、
ドイツが誇るこの世界最強の潜水艦に
何十万トンもの輸送船を沈められた。

島国のイギリスにとって、
食糧や燃料を絶たれることは死を意味する。

しかしどれだけ通信を傍受しても、
Uボートの位置がつかめなかった。

ドイツの通信はすべて

エニグマ

という機械で暗号化されていたからだ。

一兆の一万倍もの暗号を作成できる
この機械を破るため、
国中から数学者が集められた。

リーダーはケンブリッジ大学のエース、
アラン・チューリング。

計算の天才 対 解読不可能な暗号機

世界を賭けた対決の火蓋が切って落とされた。

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佐藤理人 13年5月11日放送


On Being
数学者のスイッチ⑥「チューリングとエニグマ 2」

かつて「コンピュータ」は
「計算を仕事にする人」を意味した。

第二次大戦中、
イギリスを苦しめたドイツの暗号機「エニグマ」。

その解読にあたった数学者
アラン・チューリング自身が、
正に人間コンピュータだった。

問題解決の手順を形式化する

という彼の研究は、
暗号解読にピッタリだっただけでなく、
現代のコンピュータプログラムの原型を作った。

彼は見事、暗号を解読。
ドイツのUボート作戦を中止に追いやる。

科学と違い、
数学なんて役に立たないと言われた時代。

チューリングは計算で祖国を救い、
世界とコンピュータの歴史を書き換えた。

今日(こんにち)彼は、

人工知能の父

と呼ばれ、世界中で愛されている。

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