佐藤理人

佐藤理人 12年11月18日放送



007シリーズ50周年⑤ ティモシー・ダルトン

最高の007は、最低の007でもあった。

4代目ジェームズ・ボンド、ティモシー・ダルトン。
彼はシェイクスピア俳優らしいシリアスさでこの役を演じた。

故ダイアナ妃に

 最もリアルなジェームズ・ボンド

と評された第15作「リビング・デイライツ」は
それまでで最高のヒット作となった。

ところが次作「消されたライセンス」では
暴力路線に走りすぎ、最低売上を記録。
ダルトンはたった二作で降板してしまう。

さすがのジェームズ・ボンドも、
売上には勝てなかったらしい。

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佐藤理人 12年11月18日放送


Rita Molnár
007シリーズ50周年⑥ ピアース・ブロスナン

ベルリンの壁が崩壊し、ソ連は解体。
かつての敵が味方になった90年代。

冷戦後の世界に、007の居場所を見つけること。
それが5代目ジェームズ・ボンド、
ピアース・ブロスナンの使命だった。

今までの4人をミックスしたキャラクターと
ソ連崩壊後の権力腐敗を描いたストーリーで、
第17作「ゴールデン・アイ」は
最高収益を大幅に更新。

その後も巨大メディア王や北朝鮮など、
時代とシンクロした敵を設定し、大ヒットを連発する。

007は見事、超娯楽大作として職場復帰を果たした。

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佐藤理人 12年11月18日放送


Caroline Bonarde
007シリーズ50周年⑦ ダニエル・クレイグ

かつてロジャー・ムーアは
ジェームズ・ボンド役を降りる理由を聞かれて

 これ以上やったら殺されてしまうから

と答えた。6代目ボンド、ダニエル・クレイグの意見は違う。

 ケガなんて楽しみの一つさ

と、全身傷だらけになりながら、
ほぼ全てのスタントを自らこなしている。

金髪碧眼という従来のボンドとはかけ離れた容姿に、
当初はバッシングが続出。
作品のボイコット運動にまで発展したにも関わらず、
21作目「カジノ・ロワイヤル」は
007シリーズ史上最高の収益を記録した。

クール一辺倒でなく、あえて感情を前面に押し出した演技も

 ショーン・コネリーを超えた!

と絶賛された上、コネリー本人からも
ベストなキャスティングと評された。

クレイグの目下最大の悩みは、有名になりすぎて、
バーで倒れるまで酔っぱらえないことだと言う。

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佐藤理人 12年11月18日放送



007シリーズ50周年⑧ ジェームズ・ボンド

恐らくそれは、
イギリスの意地だったのだと思う。

世界最長の映画シリーズ「007」。
主人公ジェームズ・ボンドは
祖国が病める時でも常に

 イギリス紳士かくあるべし

という理想であり続けた。

原作によれば彼は
様々な生活習慣病を抱えており、
医者から長生きできないと忠告されている。

それから50年。
今日もボンドは世界の平和を守り続けている。

ステアせず、シェイクした
ウォッカマティーニを傾けながら。

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佐藤理人 12年9月22日放送


なお
ニューヨーク・デパートストーリーズ①
「バーニーズ・ニューヨーク」

今も昔も、男がオシャレする理由は一つしかない。

1960年代のこと。
『バーニーズ・ニューヨーク』の創業者
バーニー・プレスマンは、
スーツの売上げを伸ばすある秘策を考えた。

当時のスーパーモデル的存在だった
スチュワーデスを集めて、
店でカプチーノを売らせたのだ。

バーニーの思惑は大当たり。
美しい女性を見ながらお茶を飲もうと、
男たちは続々とバーニーズにやってきた。

帰り際、彼らは必ずスーツを買っていったという。

創業時、仕入れ代が払えずに
妻の結婚指輪を質に入れた男は、
こうして世界で最も有名なデパートを作った。

 選べ。固執するな。

バーニーズの社訓の通り、
どんなに行き詰ったときでも選択肢はきっとある。

ただ、私たちの常識がそれを見えなくしているのだ。

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佐藤理人 12年9月22日放送


Mike Strand
ニューヨーク・デパートストーリーズ②
「メイシーズ」

あきらめたらおしまいか。
それともあきらめが肝心か。

R.H.メイシーがニューヨークのマンハッタンに
小さな雑貨店を開いたのは1858年、36歳のとき。
既に5つの職を転々とし、6つの店を潰していた。

自分に商売の才能があるなんて、
これっぽっちも思わなかったに違いない。

しかし彼の7つめの店「メイシーズ」は、
今では

 世界最大のデパート

としてギネスブックに載っている。

あきらめが悪いというのは、
立派な才能だと思う。

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佐藤理人 12年9月22日放送


juliana lop’s
ニューヨーク・デパートストーリーズ③
「サックス・フィフス・アヴェニュー」

女性にとって靴はアクセサリーではない。
生き方を表現する芸術品だ。

そう思うなら一度は訪れるべき場所がある。

ニューヨークの高級デパート
『サックス・フィフス・アヴェニュー』の8階。

マンハッタン一の広さを誇るシューズフロアは、
広すぎて独立した郵便番号を持つほどだ。

10万足の高級靴が宝石のように並べられた様は、
まるで靴の美術館のよう。

それは何より創業者ホーレイス・サックスの

 美術館のような店で買い物をしたい

という願いそのものだった。

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佐藤理人 12年9月22日放送


loop_oh
ニューヨーク・デパートストーリーズ④
「ノードストローム」

全米最大の高級デパート『ノードストローム』は、
決して「ノー」と言わないことで有名だ。

その噂を確かめようとある雑誌記者が、
開店以来一度も取扱いのないタイヤを返品しにやってきた。

断られて当然の話。しかし店員は返品に応じてくれた。
記者が理由を尋ねると、店員は答えた。

お客さまの勘違いにせよ、返品に来られたら、
受け入れるのがお客さまにとって最良の対応ですので。

 常に最良の判断をせよ。

ノードストロームの規則はこの一つだけ。
社長のブレーク・ノードストロームは言う。

 親切な人を雇って販売方法を教えることはできるが、
 販売のプロを雇って親切になることはできない。

お客さまは神様じゃない。ただの人間だ。
だからこそ、親切にされると弱いのである。

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佐藤理人 12年9月22日放送


Kevin H.’s
ニューヨーク・デパートストーリーズ⑤
「ヘンリ・ベンデル」

デザイナーの卵は、
どこでヒヨコに孵るのだろう。

 世界一オシャレな人が集う場所

の異名をもつニューヨークのデパート
『ヘンリ・ベンデル』。

そこでは年2回、無名デザイナーのための
売り込みイベントが開催される。
バイヤーが気にいれば、
その場で発注が決まることもしばしばだ。

そもそも創業者ヘンリ・ベンデルは、
シャネルを初めてアメリカに紹介した人物。

オープンから100年以上経った今も、
彼の「センス」という技術は、
確かに受け継がれている。

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佐藤理人 12年9月22日放送


vpickering
ニューヨーク・デパートストーリーズ⑥
「バーグドルフ・グッドマン」

ニューヨークの超高級デパート
『バーグドルフ・グッドマン』が有名なのは、
顧客リストの豪華さだけじゃない。

クリスマスシーズンのウィンドウディスプレイ。
ゴージャスで芸術的なだけでなく、
物語まで感じさせるその表現力に、
道行く人はみな足を止めずにいられない。

14年間デザインを担当するデビッド・ホイは言う。

 ショービジネスの華やかさと
 舞台芸術の美しさ、
 そして紙芝居の要素を込めるのさ。

彼の傑作が、
今年もニューヨークの冬を盛り上げる。

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