Jonas Hansel
おいしいはなし / 荒木水都弘(あらき みつひろ)
日本一予約のとれない鮨屋、「銀座 あら輝」。
店主・荒木水都弘は、
孤高な芸術家のように鮨と向き合う。
そして語る。
何かを成し遂げたいと思うならば、
完璧に孤独にならなければいけないんじゃないでしょうか。
やはり、ひとりで崖っぷちに立たなくては
見えてこない世界ってあるんだと思います。
Jonas Hansel
おいしいはなし / 荒木水都弘(あらき みつひろ)
日本一予約のとれない鮨屋、「銀座 あら輝」。
店主・荒木水都弘は、
孤高な芸術家のように鮨と向き合う。
そして語る。
何かを成し遂げたいと思うならば、
完璧に孤独にならなければいけないんじゃないでしょうか。
やはり、ひとりで崖っぷちに立たなくては
見えてこない世界ってあるんだと思います。
おいしいはなし / 狐野扶実子(この ふみこ)
その料理は「社交界のステータス」と呼ばれる
出張料理人、狐野扶実子。
彼女の最初の料理の先生は、
「じじ」と呼んでいた、祖父の弟にあたる人だった。
「じじ」はお酒のおつまみをよくつくった。
その過程が、幼い扶実子の目にはまるで魔法のように映っていたという。
たとえば、いかのおなかに手をつっこむと、
足と一緒にするすると内臓まで抜けて来る。
その足をざくざくと切り、塩をふりかけ、内臓とまぜ合わせると、
不思議な味わいの塩辛ができあがる。
彼女は語る。
そこには、どんな絵本にも描かれていない
一大スペクタクルがあったのだ、と。
おいしいはなし / 向田邦子
子どものころは外食がごちそうだった。
けれど、大人になってみると、
実家の母の味が恋しくなるもの。
作家・向田邦子もそうだった。
コマ切れ肉の入った、うどん粉で固めたような母のカレー。
「いままでで一番美味しかったもの」を思いだすときは
いつも、このカレーが浮かぶと言っていた。
けれど、向田は
大人になってから「あのときのカレー、つくって」と
母にねだるようなことはしなかった。
そこには、こんな思いがあった。
思い出はあまりムキになって確かめないほうがいい。
何十年もかかって、懐かしさと期待で大きくふくらませた風船を、
自分の手でパチンと割ってしまうのは勿体ないのではないか。
Cult Gigolo
おいしいはなし / ループレヒト・シュミット
人生最後の食事には、何を食べたいですか。
ドイツのハンブルグにある「ロイヒトフォイヤー」というホスピス。
入居者たちが人生の最後の時を過ごすこの場所で、
料理長ループレヒト・シュミットは毎日、
その人にとって最後になるかもしれない料理を作っている。
入居者たちからは、記憶の中にあるおいしかったものを頼まれる事が多い。
若い入居者からハンバーガーとフライドポテトを頼まれることもあれば、
「思い出のスープを。」というリクエストも。
本人や家族からその味について詳しく話を聞き、
「この味じゃない」と言われては、何度も試行錯誤を繰り返す。
その料理が複雑でも簡単でも、何度文句を言われようと、
うまく作れるまでとにかくやるんですよ。
後悔するのは全力を尽くせなかったときだけです。
「料理よりも人間としての修業になるといいかな。」そう言って、
ループレヒトは今日も厨房へと向かう。
slightly everything
おいしいはなし / 本道佳子(ほんどう よしこ)
愛のある食事は、人をやさしい気持ちにする。
愛のある食卓は、人と人、家と隣の家、
国と国の境界線さえ飛びこえて、
いのちといのちを結ぶことができる。
ほんとにそう信じている。
「国境なき料理団」代表、本道佳子。
細胞の一つ一つに
愛の灯火が届きますようにと
今日も笑いながら料理をつくっている。
おいしいはなし / 本谷口博之(たにぐち ひろゆき)
作家開高健。晩年、世界の秘境を釣り歩き、
すばらしいルポルタージュをいくつも残した。
その旅につきそい、開高健が釣りあげる珍魚・怪魚、
さらには野豚、野ネズミ、ヘビ、イグアナまで
あふれるアイディアでおいしい料理に変えつづけた男がいる。
谷口博之。
料理学校の教師でもあったため、開高からは教授と呼ばれた。
あるとき、一行はアラスカ、キーナイ半島の先端にある
サディコーブという入り江にやってきた。
開高が歴史が始まる前のようだと評した海。
アブラメ、イワナ、オヒョウ、カジカ、カレイ、イサキ、メバル、
カニ、エビ、ムール貝、トコブシ。
魚貝類がひしめいていた。
その海辺で、谷口はブイヤベースをつくる。
このアラスカの、この入り江でしかつくることができない
きっと世界一素朴で、世界一豪華なブイヤベース。
一口食べた瞬間、アラスカの海に開高の声がひびく。
「うまい!」
「こっちにきていっしょに食べよう」と言われた谷口は、
それができずに、ただ開高らの食べっぷりを眺めた。
自分がつくった料理にのめりこむ姿に、胸がつまって動けなくなってしまった。
料理人のよろこびは、おいしいと喜んでもらうこと。
開高健との旅は、そんな当たり前のことも強烈に教えてくれた。
suga*memo
おいしいはなし / 平松洋子(ひらまつ ようこ)
エッセイストの平松洋子は、
日常に発見をもたらす天才だ。
かまぼこは手でちぎる。
盛り付けにガラスのコップを使ってみる。
たくあんの切り方を変える。
豆腐にオリーブオイルをかける。
彼女の言葉を信じてみれば、食卓は今までと違う姿を見せる。
一手間、一工夫が、ふつうの毎日をちょっと新鮮にしてくれる。
彼女は言う。
ふつうがおいしければ、それでじゅうぶんだ。
なんの力みも入っていなくて「ここ一番!」の特別感なんか全然なくて、
でもおなかの底から「ああ、おいしかった楽しかった」。
そう思えればいうことなし。
おいしいはなし / 祥見知生(しょうけん ともお)
鎌倉にひっそりとたたずむ
器のギャラリー「うつわ祥見(しょうけん)」。
その店主の、祥見知生は、
数ある器の中でも、めし茶碗のことをこよなく愛している。
器とはせつないものである。
食べる道具として、生きることを支えている。
ごくありふれた人の生涯と同じように気高く、そして美しい。
suiryuukawase
自然と人 坂東元(ばんどうげん)
野生動物の行動様式に合わせた展示方法、
「行動展示」で有名な旭山動物園。
そこにはペットでも家畜でもない、
野生動物の誇り高い生き様に触れてほしいという理念がある。
副園長で獣医の坂東元さんは
野生動物を「すごいヤツら」だと言い、こう語る。
「すごいヤツら」の尊厳を守るために、ぼくはこの一生を捧げたい。
自然と人 石牟礼道子(いしむれ みちこ)
『苦海浄土(くがいじょうど)』という本がある。
作者は、石牟礼道子(いしむれ みちこ)。
水俣市で主婦をしながら書きためたこの作品は、
水俣病患者たちを描く澄んだ筆致とリアリティが高く評価され、
ノンフィクションの傑作として第一回大宅壮一賞を受賞した。
しかし、石牟礼はこの賞を辞退する。
水俣病は人間の原存在の意味への問いである。
そう語る石牟礼が台所の片隅で日々筆を執った切実さ。
沈黙に光を射し、患者たちの心を代弁すること。
それが彼女の求めるすべてであり、
それ以上は何も必要なかった。
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