中村直史

中村直史 12年6月24日放送


Ako
美空ひばりの使命

美空ひばりは、幼いころから全国各地をめぐり、人々の前で歌った。
10歳のときのこと。
四国巡業中に、乗っていたバスが崖下へ転落する。

頭と胸を強く打ち、左手首からはひどい出血。
バスの中ら助け出されたときは仮死状態だったが、
奇跡的に回復し、実家の横浜へと戻った。

事故に驚いたのが、ひばりの父。
もともとひばりの芸能活動に反対していたこともあり、
今後一切、歌手活動をさせない、と迫った。
おそろしい父を前に、わずか10歳の少女は決して首をたてにふらなかった。
泣きながら、ただただ、歌手をやめたくない、と言いつづけた。

 私の人生のテーマはそのとき決まりました。
 私は歌い手になるために生まれてきたんだ。
 だから、神様が生命を救ってくれたんだって。

その日から42年間。
美空ひばりは、自分の使命を一瞬たりとも疑わなかったように
命を燃やしながら歌いつづけた。

今日、6月24日。
亡くなってから23年がたつ今も、
美空ひばりはたくさんの人の心の中で歌いつづけている。

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三國菜恵 12年6月24日放送



美空ひばりの信念

歌手・美空ひばりは、
大人の歌を大人顔負けにうたいあげる
めずらしい少女だった。

けれども、中にはそれをこころよく思わない人もいた。

たとえば、
『買い物ブギ』などで一世を風靡していた歌手・笠置シズ子からは
「私の歌をカバーしてはなりません」とクレームがあった。

さらには、新聞のコラム欄で、
「こどものくせ大人の歌をうたうな」と叩かれたこともあった。

けれども、ひばりは、どんな言葉にもぐっとこらえた。
そこには、こんな思いがあったという。

喧嘩したってろくなことにはなりません。
とにかく仕事をしちゃった方が勝ちなのです。

「不言実行」の精神で、
彼女はひとつひとつ確実に自分の居場所を手に入れていった。

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中村直史 12年6月24日放送


MO
美空ひばりの感覚

なぜ美空ひばりの歌声に
日本中が心を動かされたのか。
その秘密は、美空ひばりが子どものころから持ちつづけた
独特の感覚にあったのかもしれない。

 歌を歌います。するとお客さまの心がピーンと伝わってくるんです。
 隅のほう、大むこう、上手、下手、劇場のあらゆる場所から、
 楽しい気分や悲しい気分が、はねかえってきます。
 その気分と一つになり、溶け込んでいくんです。

美空ひばりは、
ひとりで歌っているのではなった。
みんなとともに歌っていた

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三國菜恵 12年6月24日放送


KYR
美空ひばりと詩

歌手・美空ひばりは
歌うこと以外にもうひとつ好きなことがあった。
それは詩を書くこと。

詩というものは、
相手に自分の気持を、
わずか四行ぐらいでわかってもらえるので、
こんなにいいものはない

彼女にとって自分の思いを詩にすることは
歌手として過ごすときとは別の、
何か特別な解放感があったのかもしれない。

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これがよかった② : The New Directors’ Showcase

Saatchi & Saatchi主催の(超)人気セミナー。
世界各国の若手映像作家の中で
Saatchi & Saatchiが注目している人のフィルムを
つぎつぎと上映していくというもの。

わたしが行った去年は開場2時間ぐらい前からすでに列ができていて
みんないい席で観ようと必死なかんじでした。

フィルムにはその人らしい工夫が凝らしてあったり
新しいと感じられる視点が入っていたり
それをどんどんと見せられるので
まあ観てるほうはそんなに飽きないわけです。(しかも一本一本が短い)
多少英語わからなくても映像だからそれなりに意味もわかるしたのしめちゃう。
それがよいんでしょうね。

とはいえ、すっごくおもしろいかというと
うーん・・断言できる自信はないのですけど
カンヌにきたならこれは観ておけ!というもののひとつに
近年なっているようなので、
カンヌの空気にきちんと参加するという意味では
おさえておいて損はないと思います。

お得意さん(クライアントさんもいっしょにカンヌにくるケースがあるのです)と
いっしょにこれを観にきている人たちがいて、
それはとてもいいんじゃないかなあと思いました。
CMのディレクターさんのことなんて
そこまで考えたことないでしょうし、
「広告」だけじゃなくて「広告をとりまくもの」のはなしを
ふわーっとたのしく観られて、それをお互いに共有できるっていうのは
結構いいことなんじゃないかなあと思いました。

(You Tubeにこのとき流れたフィルムをまとめているチャンネルがあったので観たい方はぜひ

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これがよかった① : スクリーニング。フィルムの。

カンヌ広告祭の前半は
スクリーニングといって
出品作ぜんぶがばーっと並ぶ期間があります。
その中から審査が行われ、Bronze、Silver、Gold、Grand Prixと決まっていくわけですが
おもしろいものもつまらないものも全部並ぶのはこのときだけ。

一般的には、ある程度審査がすすんで審査を通過したものが並んだあたりから
見はじめるのがよいとされていて、
わたしも基本的にはそうしていたのですが、
フィルムだけはスクリーニングもちょっと見ておくとよいかも。
みんなだらーっと会場(映画館みたいなもんです)に座って、
つぎからつぎへと出品されたCMを観る。
おもしろいものにはみんながワッと笑い、
特に何とも、なものには何の反応もなく、
ひどくつまらないものにはブーッとブーイングが湧きおこる。
その反応を見ておくと、授賞式で答え合わせができるわけです。

「あ!あのときみんな笑ってたあれか。そりゃGoldだ」
「たしかにこのCM覚えてるなあ、Silverかあ、わかる」
「あれ?ちょっといいなと思ってたあのCMは圏外なんだ」

MTV のballoonsなんかは何回流れても拍手喝采でした

たとえばプリントやデザインやチタニウムなどの部門は
展覧会のように壁にボードがわーっと掛けられるのですが
これは全部読むのたいへん。しかも観てる間けっこう孤独。
でも、フィルムはみんなで観られて、その場その場で反応も返ってくるから
スクリーニング期間中もわりと退屈することなく観られるかなと思います。
おすすめさん。

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ごぶさたごめんなさい

今年もカンヌの季節がやってまいりました。

なんでも、今年カンヌに行く方の何人かが

この「カンヌの話」をのぞいていると聞き

なんだかとても申し訳なく思い、

ちゃんと去年の受賞作のこととか

これがおもしろかったと思う、ということも

ちゃんと書いておかなければと思ったので

書こうと思います。すみません。

顔も名前も知らないあなたのために書きます。

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三島邦彦 12年5月13日放送


miyappp
カクテル・ストーリーズ/今 日出海(こん ひでみ)

作家でフランス文学者の
今日出海(こん ひでみ)が
考案したカクテルがある。

その名は、「東京のたそがれ」。

音と光り、人と自動車、
甘さと辛さ、歓楽とほのかな哀愁
そういった東京の横顔を、
ジンの鋭さやベルモットのやわらかさで表現したかった。

カクテルは、想像力を刺激する。
カクテル・ストーリーズ#1
「東京のたそがれ」

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三國菜恵 12年5月13日放送



カクテル・ストーリーズ/フランシス・ニーガス大佐

1720年代、イギリス。
とフランシス・ニーガスいう陸軍大佐がいた。

ある寒い夜、
彼の邸宅に同僚たちが集まり、
いつになく白熱した政策論争をくりひろげた。

しかし、議論はなかなか結論に達せず、
ヒートアップしていくばかり。

そこで、ニーガス大佐は
彼らにこんなものをふるまった。
甘みの強いポートワインを
熱湯で割ってつくった、ホット・カクテル。

からだが温まれば、頭のホットさは収まるだろう

彼の作戦は、見事成功。
のちにこのカクテルは
クールな彼に同じ「ニーガス」と名付けられる。

カクテル・ストーリーズ#2
「ニーガス」

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三島邦彦 12年5月13日放送


Jeremy Brooks
カクテル・ストーリーズ/開高健のマティーニ

作家、開高健にとってカクテルは、
空想を楽しむ飲み物だった。

たとえば、マティーニのグラスの中のオリーブの実。

丸いオリーブの中に四角いパプリカトマトが入っている。

種を抜いたオリーブの丸い穴に、
どうやって四角いパプリカトマトをすき間なく詰めるのか。

一粒一粒手作業をしていたら大変。

大量生産をする方法があるのだろうか。

マティーニのグラスを傾けながら、ああでもないこうでもないと、
思いを広げ、妄想を楽しんだ。

そのことをエッセイにして発表すると、
正解を教えましょうと、とある会社から小豆島の工場へ招待された。

しかし、開高健はこれを断る。

 せっかくおれは、ああでもあろうか、こうでもあろうかと、突飛なことを考えて
 遊んでいるんだから、これは壊さないでくれ。

カクテルグラスの中には、愛すべき謎がある。
正解は、さほど重要なことではない。

カクテル・ストーリーズ#3
「開高健のマティーニ」

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