言葉のはじまり/ある映画の翻訳チーム
1953年公開のハリウッド映画『Terminal Station』は
恋愛映画の名作として知られている。
この作品が日本で公開になる際、
原題の雰囲気にふさわしい日本語が当時見あたらなかった。
そこで翻訳チームの面々が頭をひねって、
こんなことばをつくりだした。
Terminal Station.
“終着駅”。
映画らしい情感あふれるその言葉は、
のちに歌謡曲や小説のタイトルとしても
多く使われるようになる。
言葉のはじまり/吉田松陰
自分のことを“僕”と呼び、
相手のことを“君”と呼ぶ。
この“僕”と“君”ということばを最初に使ったのは、
松下村塾をつくった吉田松陰であると言われている。
「下僕」ということばがあるように、
“僕”は自分のことをへりくだって言う表現。
いっぽう“君”は、
「君主」ということばがあるように、相手を立てた表現。
松下村塾出身の高杉晋作は、
奇兵隊を結成した際、この考え方を導入した。
ひとりひとりがどんな身分であろうと、
自分のことを“僕”と呼び、相手を“君”と呼ぶことでお互いに敬意を表す。
武士と町人、農民が
身分にとらわれず共に戦う奇兵隊にとって
身分を超えた呼びかたはぜひとも必要なものだった。